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オール佐久長聖で全国ベスト4へ。その自信は過信にあらず

全日本高校女子サッカー選手権大会が12月30日(土)に開幕する。北信越第1代表として臨む佐久長聖は、2大会連続2度目の出場にして、ベスト4という目標を掲げる。まずは前回大会で成し得なかった初戦突破を目指すが、「1回戦と2回戦は一つの試合と見ている。絶対に勝たないといけない」とキャプテンの鈴木こなつ。その自信が過信でないことは、これまでのプロセスが物語っている。

北信越制覇から2カ月。プロセスを重視

激動の一年だった。北信越高校総体では決勝に進むも、福井工大福井に延長戦の末、惜しくも敗れた。その悔しさを糧に、全日本高校女子サッカー選手権では初の北信越制覇。準決勝で開志学園JSC(新潟)に初勝利を収めると、決勝で福井工大福井にリベンジを遂げた。

佐久長聖を北信越制覇に導いた”解決力”。全国でも発揮なるか

2大目標の一つであった北信越制覇は、長野県勢にとっても初の快挙だ。もう一つの全国ベスト4を達成すれば、2017年度に松商学園が果たしたベスト8を上回り、再び県勢初の記録となる。7年前の創部から指揮を執る大島駿監督は「みんなでもう一回『初』を取りたい。新しい景色を一緒に見たい」と力を込める。

北信越大会を終え、全国に向けた準備期間は約2カ月。大島監督は「もう一回サッカーが上手くなること」を強調してきたが、それと同時に「プロセスを本当に大事にしてきた」と思い返す。「時に厳しく接してきたけど、人として、選手として目標に向かっていくためには必要だった」。

大島駿監督

その過程で成長した選手もいる。センターバックの加藤真実が代表格だ。今季はキャプテンの鈴木とコンビを組み、ともに2年生ながら「自分たちが引っ張らないといけない」と責任感を強めてきた。昨季は安定感を欠く部分もあったが、「技術も判断も成長している」と相棒の鈴木。指揮官も「この大会でディフェンスリーダーになってくれたら」と期待を込める。

鈴木こなつ

北信越大会は全3試合で無失点。「ゼロで抑えたからこそ優勝できた」と鈴木は振り返ったが、全国に向けた対外試合では失点も少なくない。鈴木が「ゼロだったら負けることはない」と言えば、加藤も「もっと失点しないところを突き詰めたい」と話す。まずは堅守を図ることが先決だ。

加藤真実

その上で「いつも通りにプレーできれば、絶対に点を取れる」と伊藤百花は口にする。ディフェンスラインも中盤もこなせるポリバレントな選手だ。「相手の位置、ボールの位置、自分の位置を常に把握しながらプレーするようにしている」。ピッチ上では言葉通りのクレバーさが光る。

伊藤百花

自信を胸に。オール佐久長聖で全国4強へ

伊藤に限らず、選手たちは常日頃から“頭”を鍛えている。取材日には本番と同様、40分ハーフの紅白戦をノンストップでこなす。各相手への対策も盛り込んだが、サブメンバーも含めて頭をフル回転し、集中が途切れる時間は少なかった。チームの心臓である山﨑莉歩は「正直大変だけど、自分はやらないといけない立場。自分が崩れたらチームも崩れると思って、背中で見せ続けることを意識している」。

山﨑莉歩

初戦の相手は暁星国際(千葉)。勝ち進めば、旭川実業(北海道)対鳴門渦潮(徳島)の勝者との2回戦が待つ。順当にいけば、準々決勝では2016年度王者・十文字(東京)と相まみえるだろう。「十文字に勝ってベスト4に行くことを考えたら、最初の2試合は勝たないといけない」。そう大島監督は語気を強める。

指揮官の言葉を借りれば「油断大敵」ではあるものの、自信を得られるほどのプロセスは辿ってきた。伊藤は入学から2年間で、「本当に自信がついた」と笑みをこぼす。大島監督に限らず、加藤が「厳しいけど優しさもある」と慕う月守麻美コーチ、そして白鳥慎也GKコーチの指導があってこそ。「月守コーチは選手と一緒に寮に住んでいて、心のケアもやってくれる。白鳥コーチは(流通経済)大学の先輩で、お互いにいろんな話をしている。我々のスタッフは本当に信頼し合える」。

指揮官の信頼はスタッフだけに留まらない。北信越総体の決勝で敗れた際には、保護者から叱咤ではなく「もっと鍛えて、上手くさせてください」と激励を受けたという。「それが指導の真髄でもあるので、すごく嬉しかった。保護者の言葉が大きなエネルギーになった。だからこそ、北信越王者として全国ベスト4まで駆け上がりたい」。

今大会はそんなスタッフや保護者らとともに、“オール佐久長聖”で挑む舞台だ。去る12月24日には駅伝部が全国制覇。女子サッカー部もそれに続き、全国席巻なるか。

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