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佐久長聖を北信越制覇に導いた”解決力”。全国でも発揮なるか

11月27日、第32回全日本高等学校女子サッカー選手権大会の組み合わせ抽選会が行われた。北信越第1代表の佐久長聖は、1回戦で関東第3代表の暁星国際高校(千葉)との対戦が決定。シーズン当初に掲げた全国ベスト4という目標に向けて、まずは初戦突破を目指す。

全国初戦敗退を経て。解決力を養った1年

北信越王者の肩書きを背負って挑む、2年連続2度目の全国舞台だ。前回大会は北信越第2代表として初出場したが、1回戦で九州第4代表の鎮西学院(長崎)に敗れた。0-0のままPK戦に突入するも、サドンデスの末に敗退。ボールを保持し、主導権も握ったが、あと一刺しが足りなかった。

「硬かった」。試合後、大島駿監督は開口一番にそう嘆いた。選手たちの言葉に耳を傾けても、緊張は少なからずあったようだ。とはいえ、大舞台でのプレッシャーは常連校ですら感じるもの。指揮官が本質的な課題として挙げたのは、ピッチ上での解決力である。

中で変えていくところが、我々には圧倒的に足りなかった。今年はそういうところを求めて、自分たちで解決していくことを大事にしてきた

大島駿監督

筆者が練習を取材する中でも、その片鱗は見られた。数的同数でボールを回しながら、前方で待ち構えるサーバーにパスを通す。いわゆる“サーバーゲーム”において、さまざまな条件を設定。タッチ数を1、2、3、1…と順に制限し、サーバーにパスを出した選手がサーバーと入れ替わるなど、同時進行で条件を消化していく。最初は選手たちに戸惑いが見られたものの、順応まで多くの時間はかからなかった。

結局やるのは選手。自分たちで解決することは、去年よりも求められている感覚がある」。2年生ながらキャプテンを務める鈴木こなつがそう言えば、3年生の道繁煌も「グラウンドでみんなで喋ることは多くなった」と話した。

鈴木こなつ

北信越で見せた成果。全国に向けて磨きを

その成果が顕著に見られたのは、北信越大会準決勝の開志学園JSC(新潟)戦だ。全国出場を懸けた大一番。昨季の決勝で敗れたライバルに対し、トレーニングから十分な対策を練って臨んだ。前半は互いに硬さが目立ったものの、後半に山下琴遥のゴールで先制。相手のシュートを1本のみに抑え、1-0で勝ち切った。

選手たちがどう解決していくのかを考えながら、ゲームを動かしていた。相手が真ん中を固めていることと、外へのボールに対して強くハントしてくること。サイドが空きやすい状況で、そこにつけていいものなのか。それだけが消化できていなかったので提示したら、スローインからうまくサイドを突破して点が取れた

大島監督はポイントを伝えることだけに注力。「特にこの試合は選手たちに任せられるゲームで、指導者が介入しすぎないほうがよかった」と肌感覚を示す。キャプテンの鈴木も「グラウンドに出ている11人で解決することは、試合前から意識していた」。

昨季の全国初戦敗退を踏まえ、選手間での解決が求められるメニューや、パターンの落とし込みを意図的に増やしてきた。体よりも頭が疲れるようなトレーニング。1年生の西尾碧海は「結構難しい」と吐露する。それでも意図を汲み取って出番を勝ち取り、北信越大会決勝で優勝に導くゴールを沈めた。

西尾碧海

全国舞台まで残り1カ月と迫っている。ベスト4という目標が大前提にあるものの、まずは初戦突破が肝心要だ。「30日に合わせるのも必須だけど、もう一回うまくならないといけない」と大島監督。3年生として最後の舞台に挑む道繁も「もっとクオリティを上げたい」と力を込める。

道繁煌

技術や判断が向上すれば、解決できる幅も広がる。プレッシャーがのしかかる中でも考えを巡らせ、行動に移せるか。その先に快進撃が待っている。

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