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矢田貝壮貴、若きGK最年長。陰ながらチームを支えた苦労人

GKは一つしか椅子がないポジションだ。今季はその座を4人で争い、金珉浩の居座る時間が長かった。次いで出番が多かったのは濵田太郎。最も出番の少なかったリュウ・ヌグラハはシーズン終盤、北海道リーグ・BTOP北海道に短期レンタルで加わって研鑽を積んだ。

しかし振り返れば、開幕スタメンを飾ったのは矢田貝壮貴だった。大卒3年目を迎えた25歳。若きGK最年長は、出場機会に恵まれずとも決して腐ることはない。むしろチームを支えた“陰の功労者”と言える。

3年連続開幕スタメンも、定着には至らず

あれは2年前の2021年、横山雄次監督体制3年目のことだ。開幕前最後のテストマッチとして、関東リーグ1部の栃木シティと対戦。0-1と完封負けを喫し、開幕に向けて暗雲が立ち込めた。その試合で守護神を担ったのが、大卒1年目の矢田貝だ。オフにGK陣が総入れ替えとなった中でスタメンをつかんだものの、自身のパスミスから決勝点を与えてしまった。

それでも開幕スタメンを飾り、続くホーム開幕戦・宮崎戦でPKを止めるなど存在感を示す。上々の滑り出しではあったが、チームとして波に乗り切れない。8試合勝ちなしと光が見えず、何かしらの変化が求められていた。矢田貝はベテランGK田中謙吾に先発を譲る形となり、ルーキーイヤーは不完全燃焼に終わった。

その田中がいわきに移籍し、迎えた2年目。2年連続で開幕スタメンを射止めるも、第2節・藤枝戦の前半に負傷交代を余儀なくされる。復帰後も最終節まで出番が訪れなかった。3年目の今季も、レギュラー奪取に向けてキャンプからアピールを続ける。GK陣の相次ぐ負傷もあり、3年連続で開幕スタメンを遂げたが、定着には至らず。ここまでリーグ戦3試合の出場に留まっている。

大阪体育大学の4年時も、レギュラーではなかった。コロナの影響が重なり、Jクラブへの練習参加もままならず。当初はJFLクラブへの加入を予定していたが、GKの退団が相次いだ長野からオファーを受け、年末に加入が決まった。「ホッとした部分もあったけど、下から来たというイメージだった。開幕から出られたけど、そこに甘えてはいけないし、満足もしてはいけなかった」と当時を振り返る。

1年目はベテランの田中がGK陣を牽引。その田中の移籍を受けて、2年目からいきなりGK最年長となった。「若いと言っても24、5歳。世界だったりJ1を見ても、僕の年代でキャプテンをやっている選手は多い。キャプテンを任されたらやるくらいの気持ちはあった」と心境を明かす。田中はいわきで昇格を経験し、J2にステップアップ。その背中を見てきた矢田貝は「オフ・ザ・ピッチでの声の掛け方とかGK同士のコミュニケーションは、すごく助かった部分もあった」と話し、先輩からの学びをいまに生かしている。

今季のGK陣は金珉浩と濵田が1学年下で、リュウ・ヌグラハが2学年下に当たる。年齢が近しい中で「競争する部分と盗み合う部分が多かった。シュナさん(シュナイダー潤之介GKコーチ)も含めて話し合う機会が多くて、みんなでリスペクトし合えた」。1、2年目に教わった吉本哲朗GKコーチは“理論派”と言えるが、今季のシュナイダーGKコーチは“感情派”とも捉えられる。その2人のもとで育ち、「それぞれの良さがあって、すごく学ぶものがあった」と思い返す。

負の感情を押し殺し、チームを陰で支える

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