長野県フットボールマガジン『Nマガ』

パルセイロサポーターの皆さまへ。今季を終えて御礼とお詫び【お知らせ】

ホームでの信州ダービー直前に開設した長野県フットボールマガジン『Nマガ』は、11月11日付でオープンから半年が経ちました。これもひとえに読者の皆さまのおかげです。日頃よりご愛読いただきまして、熱く御礼申し上げます。

サポーターの偉大さを知った一年

開設当初から予想を超える多くの方にご購読いただき、無事に2023シーズンを駆け抜けることができました。オープン前の第2節・愛媛戦を除けば、アウェイも含めて全試合を取材。はっきり言って採算度外視どころか、赤字運用となっています。それでもアウェイへの遠征を辞さなかったのは、主に2つの理由があります。

1つ目は、単純にAC長野パルセイロのことが好きだからです。このクラブの番記者に赴任して、今季で3年目を迎えました。2021年初頭、エルゴラッソ編集部の方から「長野はJ2昇格候補の筆頭だ」と言われ、希望を抱いて離京したことをいまでも覚えています。しかし1年目から9位、8位、14位と、昇格戦線に絡めず。年々レベルが高まるJ3において、経済規模を踏まえても、長野はもうトップクラスではないのかもしれません。

それでも時間や労力を割いて追い続けた理由は、そういった苦悩を内側と外側の狭間で感じてきたからです。選手や監督はもちろんですが、小さなクラブだけあってフロントスタッフの顔もよく見えます。幸いにもイヤーブックやマッチデープログラムなどのオフィシャル媒体も委託いただき、「このクラブのためにできることはないか」という想いは年々増しています。

では、メディアという立場で何ができるのか。一番はサポーターの皆さまを楽しませることです。そのために全試合を取材し、コンテンツをお届けしてきました。J3の中でアウェイも含めて全試合に番記者が来るのは、おそらく長野と松本だけです。それもあって、隣に負けじと意地になっていた側面もありました(笑)。

2つ目は、サポーターの苦悩や努力を知りたかったからです。長野のサポーターは内弁慶とも言われますが、少なくともアウェイに足を運ぶ方々はいます。皆さまがどれほどの時間と労力を割いて、遠方に駆けつけているのか。自家用車、高速バス、新幹線、飛行機…。基本的には手配から移動まですべて一人で行いましたが、アウェイ岐阜戦はFrente de Nagano(応援団体)の皆さまに同乗させていただきました。

J3は東北から沖縄まで、ロングアウェイが多くあります。移動距離はもちろん、その旅費にも驚かされました。私は行程を組むのが不慣れだったため、飛行機を取るのが遅れてしまい、チケット代が高騰していることも多々ありました。うまくセールなどを活用すれば抑えられたのかもしれませんが、それでも相当な金額になるかと思います。

これほどの時間と労力を割いて応援しても、スポーツは勝敗が付くものなので、負けて奥歯を噛み締めながら帰路に着くこともあります。それは番記者である私も同じです。終盤に決勝点を喫して敗れたアウェイFC大阪戦の後は、悔恨の念にかられながら、往復7時間を日帰りで自走して家路につきました。その足取りの重さを忘れることはできません。

ほぼ全試合を取材して感じたのは、サポーターの偉大さです。平日に汗水垂らして働き、それによって得た対価を遠征に注ぎ込む。私も交通費こそ自己負担ですが、チケット代が掛からない上、原稿料によって多少賄えることもあり、サポーターの苦悩や努力には敵わないと思います。そんな方々と苦楽をともに味わってきたことで、サポーターを楽しませることが使命であるとすら感じました。

コメント、プレビュー、レビューといった定常的なコンテンツに加え、試合に出場していない選手にフォーカスしたコラムや、クラブスタッフへのインタビューも行いました。また、公募はしていませんが、パルセイロサポーターを中心とした個人参加型フットサルも定期開催しました。まだまだ未熟ではありますが、シーズンを通して少しでも楽しんでいただけたのであれば本望です。

メディアとは何かを考えさせられた一年

皆さまにお詫びしなければいけないこともあります。8月の監督交代後、シュタルフ悠紀前監督のInstagramのストーリーにて、私の活動に対する厳しいご指摘を受けました。X上でも騒動になってしまったことを深くお詫びいたします。

当該の投稿に対して、私なりの考えをその場で述べようとも考えていました。ただ、サポーターの皆さまも不安に駆られている中で、これ以上騒動を大きくしたくなかったので発言を控えておりました。シーズンが終わったこのタイミングで、内容をいくつか引用しながら、私見を述べさせていただきます。

まずはじめに、「誘導尋問」とのご指摘がありました。これに関しては例えば、「どういった狙いがありましたか?」という質問をする場合に、私は「⚪︎⚪︎のように見えましたが、どういった狙いがありましたか?」と私見を伝えた上で質問するよう心がけています。ただ一方通行に質問するのではなく、1対1の対話をしたいからです。そこでもし「違う」と回答があったとしても、それは監督の考え方や方向性を知る発見に繋がります。

ただ試合を振り返っていただいたり、狙いを聞いたりすることは誰にでもできます。極端な話、練習や試合を全く見ていなくても、質問できてしまいます。とはいえ探究心が先行するあまり、配慮に欠けていた側面もあるかもしれません。決して「⚪︎⚪︎のように見えましたが…」の「⚪︎⚪︎」に誘導したかったわけではないですが、誘導尋問と捉えられてしまったのであれば、私の質問力不足でした。

また、「メディアの方々を含めOne Team」、それに付随して「同志」「チームメイト」「当事者」であるとのお声もいただきました。これに関しては印象的なエピソードがあります。シュタルフ監督就任1年目のキャンプ序盤。番記者陣全員が揃って囲み取材を行うタイミングで、「メディアもOne Teamとなって戦いましょう」と熱い言葉がありました。メディアを受け入れていただき、心を打たれたことを鮮明に覚えています。

先述したように、私はAC長野パルセイロというクラブが好きです。だからこそ採算度外視でアウェイにも足を運び、動向を追い続けてきました。もちろんチームの勝利を心から願っていますし、なるべくポジティブな発信を心がけたいと考えています。しかしそれと同時に、報道機関であることも忘れてはいけません。公正かつ客観的に報道することが求められており、時には厳しく言及することも必要です。

不幸にもホームでのダービー勝利を機に、9試合勝ちなしを含めて厳しい戦いが続きました。その間もなるべくポジティブな要素を見出そうと心がけていましたが、結果に伴ってどうしてもネガティブな要素が増えてしまいます。必死にもがく選手たちの声もお届けしてきましたが、状況は大きく好転することなく、8月末に監督交代となりました。

サッカーは勝因も敗因も複合的で、複雑なスポーツだと感じます。同じ試合を見ていたとしても、見る人によって捉え方は異なります。「公正かつ客観的に報道することが求められている」と記しましたが、主観が交わることは避けられません。その主観が、監督の趣旨と交わらないことも大いにあり得ます。それは知識や経験、価値観の違いによるもの。立場によっても発信できる内容は異なると思います。

日々の取材活動において、番記者は監督の考えを知ろうと心がけています。完璧に理解するのは困難ですが、なるべく理解した上で発信したいと考えています。ただ、そこで“寄り添い”すぎてしまえば、今度は公平性に欠けます。いくら監督の考え、チームの狙いを理解できたとしても、それに疑問を持ち続けることも重要です。時にはその疑問を主張しなければいけません。

そのバランスについては監督交代後、さまざまなライターの方にもご相談させていただきました。公平性を保ちつつ、よりポジティブな発信を心がけられるよう善処します。

長野のポテンシャルを花開かせるために

何が正しいのか。それはいくら議論しても答えが出ないかもしれませんが、ただ一つ言えることがあります。『長野にはポテンシャルがある』。この言葉は過去に私が発信した記憶もあれば、10月のインタビューにおいて村山哲也強化ダイレクターも仰っていました。日本と海外のトップリーグを経験してきた方がそう話すのであれば、長野にポテンシャルがあるのは間違いないと感じます。

村山哲也強化ダイレクター「長野はポテンシャルのあるクラブ」【独占インタビュー】

ポテンシャルをポテンシャルのまま終わらせないために、メディアという立場で何ができるか。微力ではありながらも、クラブの発展の一助になれればと、日々頭を巡らせています。メディアとはクラブの内側と外側の狭間に立ち、双方を繋ぐハブでもあります。クラブにより関心を持っていただけるよう、さまざまなコンテンツをお届けした結果、想像を超える多くの方にご購読いただくことができました。それも一つの成果です。

そのお返しの一環として、先週末には毎年恒例のサポーターアウォーズに協賛しました。徳永就大コールリーダーをはじめ、多くの方のご尽力があって盛況に終えました。最終節のセレモニーで今村俊明社長が仰ったように、このクラブには熱いサポーターがいます。「この方たちと一緒に頑張りたい」「日本一のチームになるよう頑張りたい」。私にも同じ想いがあります。

サポーターがよりクラブを誇りに思えるよう、地域を誇りに思えるよう、これからも発信を続けていきます。改めて一年間ご愛読いただき、誠にありがとうございました。オフシーズンも何卒よろしくお願いいたします。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ