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2023マレーシアスーパーリーグ
第7節結果とハイライト映像-クランタンの元Jリーガー・チェ監督が今季休養第1号、KLが今季初勝利

FIFAの最新ランクが発表され、マレーシアは7つ順位を上げて138位となりました。この順位は2011年以来12年ぶりで、昨年2月のキム・パンゴン監督就任時には154位だったことを考えると、確実に順位を上げてきています。
閑話休題。4月4日と5日にマレーシアスーパーリーグ7節の7試合が開催されています。前節はペナンが今季初勝利を挙げましたが、今節はKLシティが待望の初勝利を挙げ、今季未勝利はいずれもマレー半島東海岸のクランタン州を本拠地とする、クランタンFCとクランタン・ユナイテッドFCの2チームとなり、クランタンは開幕から7試合未勝利ということで、早くもチームのテコ入れが行われています。(試合のハイライト映像はいずれもMFLの公式YouTubeチャンネルより)

2023年4月4日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
観衆:5,025人
トレンガヌ 5-0 クランタン
⚽️トレンガヌ:ジョーダン・ミンター(16分)、アディサク・クライソーン(21分)、イヴァン・マムート2(67分、90+3分)、ハキミ・アブドラ(90+1分)
🟨トレンガヌ:なし
🟨クランタン:アリプ・アミルディン
MOM:イヴァン・マムート(トレンガヌ)

 トレンガヌが2連勝で6位に浮上
トレンガヌは連敗ストップとなった前節には、開幕から不振のFWイヴァン・マムートに代わって先発したジョーダン・ミンターとアディサク・クライソーンのFWコンビが起用され、これが機能しました。この試合では、このコンビにさらにマムート選手が加わりFW3人という超攻撃的な布陣で臨みましたが、そのマムートが移籍後初ゴールを67分に決めると、さらにロスタイムにもゴールを挙げる活躍で、トレンガヌが圧勝し、順位を8位から6位に上げています。
一方のクランタンは、この試合開始30分前にチェ・ムンシク監督の「休養」と、昨季まで監督を務めたリザル・ザムベリ コーチが代行監督となることを発表するドタバタぶりでした。Jリーグ大分でのプレー経験もあるチェ監督の元、クランタンはこの試合の前まで1勝1分4敗の11位となっていました。なおチェ監督の代理人はチームが過去2ヶ月分の給料が未払いとなっているとSNSで明らかにしており、この問題をFIFAに持ち込むことも辞さないとしています。また、このブログでも取り上げましたが、クランタンは先日、元マレーシアU23代表監督のフランク・ベルンハルト氏をテクニカルディレクターに採用しており、チェ監督の後任の最有力候補と目されています。

2023年4月4日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
観衆:5,754人
スランゴール 2-1 ヌグリスンビラン
⚽️スランゴール:ファイサル・ハリム(56分)、シャルル・ナジーム(90+2分)
⚽️ヌグリスンビラン:エラルド・グロン(45+8分)
🟨スランゴール:なし
🟨ヌグリスンビラン:トミー・マワト、ザイナル・アビディン、チェ・ラシド
MOM:ファイサル・ハリム(スランゴール)

 スランゴールがロスタイムの劇的ゴールで3位浮上
首位JDTを勝点差5で追うスランゴールは、前半終了間際にエラルド・グロンのゴールでヌグリスンビランに先制を許します。後半に入っても好機は作るもののゴールに至らなかったスランゴールは、56分にファイサル・ハリムの2試合連続ゴールで同点に追いつきますが、そこからは決め手を欠き、このまま引き分けかと思われたロスタイムに、フリーキックに合わせたシャルル・ナジームのヘディングシュートが決まり、劇的な逆転勝利を挙げています。
なおスランゴールはラマダン(イスラム教の断食月、今年は3月22日から4月21日)中に開催されるスーパーリーグ5試合の内、4試合がホームのMPBJスタジアムで組まれており、リーグ首位を快走するジョホール・ダルル・タジムのオーナーで、ジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が、この日程をスランゴールが有利になるように仕組まれていると発言し、物議を醸し出しています。 ラマダン中は日の出から日没まで食事はおろか、水も飲めず。敬虔なイスラム教徒は唾液すら吐き出します。そのような環境の中、遠征がほとんどない日程は確かに楽ではありますが、イスマイル殿下が指摘するような「陰謀」なのかどうか。スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLの反応が待たれます。

2023年4月4日@ペラスタジアム(ペラ州イポー)
観衆:6,799人
ペラ 0-5 ジョホール・ダルル・タジム
⚽️ジョホール:ハスヌル・ザイム(5分OG)、レアンドロ・ヴァレスケス2(25分、95+2分)、ジオゴ(45分)、ベルグソン・ダ・シルヴァ(66分)
🟨ジョホール:ナサニエル・シオ、
🟨ペラ:ハディ・ファイヤッド、クリスティアン・オビオゾール
MOM:レアンドロ・ヴァレスケス(ジョホール)

 昨季は29ゴール(19試合出場)のリーグ新記録を作ったベルグソン・ダ・シルヴァはこの試合が今季2試合目の先発でしたが、このベルグソン選手の今季初ゴールを含む4ゴールなどで、ジョホールは開幕から7連勝しています。この試合で2ゴールを挙げたレアンドロ・ヴァレスケスや昨季終盤のケガから復帰したシェーン・ローリーらもこの試合が2試合目の出場と、昨季の主力もローテーションで出場機会が減るほど充実したジョホールの外国籍選手枠ですが、代表クラスのマレーシア人選手もチーム内での激しい競争に晒されており、昨季まで代表の正GKだったファリザル・マーリアスは今季出場がなく、先月の代表戦で2ゴールを挙げたアキヤ・ラシドは相変わらずスーパーサブ的な起用となっています。その選手層の暑さは、ここまでの7試合で得点が30失点が1で得失差29という、他の追随を許さない成績にも表れています。
一方のペラは元J2岡山のハディ・ファイヤッドを含めて先発11名中、6名が23歳以下と若いチーム。長期的育成プランのもと、バイエルン・ミュンヘンのユースコーチでもあった元U17代表監督のリム・ティオンキム氏が今季から監督に就任していますが、この試合で敗れて1勝2分4敗となっています。リム監督は、開幕前から今季は若い選手を積極的に起用することを明言してリーグに臨みましたが、直近の試合では得点1失点11の3連敗となったこともあり、試合後に中継された記者会見の場で、チームの状況を尋ねられるとそのインタビュアーに対し、自分で分析して自分で質問に答えることを求めるなど、プロチームの監督しては失格と言われてもしょうがないような対応をし、記者協会から講義を受けています。今季は2部プレミアリーグが休止されており、入れ替え戦も降格の心配もない中で、非難を受けようと信念を持って育成を続けていけば良いと思うのですが、バイエルン・ミュンヘンで指導経験があるとは言え、そこは所詮ユースチームということで、メディアやファンの矢面に立つトップチームの監督の器ではなかったのかも…。

2023年4月5日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
観衆:188人
クチンシティ 1-1 クランタン・ユナイテッド
⚽️クチンシティ:シロジディン・クズイエフ(52分PK)
⚽️クランタン:アスラフ・アリフディン・ヤシン(90+4分)
🟨クチンシティ:アミルル・シャフィク・チェ・ソー
🟨クランタン:ファンディ・オスマン
MOM:ジュリアン・シュワルツァー(クチンシティ)

 ロスタイムのゴールで両者痛み分け
開幕戦勝利の後、5連敗中のクチンシティがホームに今季未勝利のクランタン・ユナイテッドを迎えた対戦は、13位のクチンシティと14位のクランタン・ユナイテッドの最下位攻防戦でした。
いずれも前節第6節まで得点4と点が取れない両チームということもあり、クチンシティはシロジディン・クズイエフのフリーキックや谷川由来選手のミドルシュートでゴールを狙うも得点に至らず、またクランタン・ユナイテッドは41歳のインドラ・プトラが攻撃をリードするもやはりゴールを決めることができず、前半は0-0で折り返しました。
後半の51分にはPKを得たクチンシティがシロジディン・クズイエフの今季初ゴールで先制し、試合はそのまま1-0で進み、残りあと1分を切ったロスタイムに、クランタン・ユナイテッドのアスラフ・アリフディン・ヤシンが土壇場でヘディングシュートで同点ゴールを決め、引き分けに持ち込んでいます。
クチンシティの谷川由来選手は先発して、フル出場しています。

2023年4月5日@ダルル・アマンスタジアム(クダ州アロー・スター)
観衆:3,230人
クダ・ダルル・アマン 1-0 ペナン
⚽️クダ:ウィリアン・リラ(65分)
🟨クダ:アリフ・ファルハン、アミルル・アフィク
🟨ペナン:ラファエル・ヴィトール、ファリス・シャー
🟥クダ:アミルル・アフィク(🟨x2)
MOM:マヌエル・オット(クダ・ダルル・アマン)

 首位のジョホールを勝点差5で追うクダは、次節第8節には直接対決を控えています。それまではこれ以上勝点で離されるわけにはいきません。しかし先月3月のFAカップではこのペナンにPK戦の末に敗れており、このマレー半島北部ダービーでは同じ轍を踏むわけにはいきません。
前半を0-0で折り返したこの試合は、後半の立ち上がり54分にアミルル・アフィクがこの試合2枚目のイエローで退場となり、クダは10人になってしまいます。それでも65分にコーナーキックからのこぼれ球を昨季はJ2甲府でプレーしたウィリアン・リラが押し込んでゴール!これが決勝点となって勝利したクダはこれで引き分けを挟んで3連勝とし、今週末のジョホール戦に弾みをつけました。
前節には今季初勝利を記録したペナンは、連勝とならず、順位を一つ下げて10位となっています。

2023年4月5日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
観衆:1,194人
KLシティ 2-0 サバ
⚽️KLシティ:T・サラヴァナン(15分)、ショーン・ジャネッリ(90+4分)
🟨KLシティ:モハマド・ファウジ、デクラン・ランバート、ショーン・ジャネッリ
🟨サバ:カブリエル・ペレス、スチュアート・ウィルキン、ドミニク・タン
MOM:セバスチャン・アヴァンジーニ(KLシティ)

 KLシティが今季初勝利。
開幕からの5試合で3分2敗と勝ち星がなかった昨季のAFCカップ準優勝チーム、KLシティがホームで今季初勝利を挙げています。
試合はサバがダレン・ロックとインドネシア代表のサディル・ラムダニが率いる攻撃陣でKLシティを圧倒しますが、先制したのKLシティでした。今季初先発となったU23代表のT・サラヴァナンがパスを受けると、飛び出してきたサバGKダミエン・チェンの上を超える絶妙なロビングシュートを放ち、これがゴールとなり、KLシティが1-0とリードします。その後はセンターバックのジャンカルロ・ガリフオコの活躍や、正GKのケヴィン・メンドーザに代わりこの日も先発したU23代表GKアズリ・ガニが、サバの反撃を好セーブで防ぎ、ロスタイムにはダメ押しの2点目を挙げたKLシティが今季初勝利を挙げています。
前節ジョホールに0-4と大敗したサバは、今季未勝利のKLシティ相手に痛い星を落として2試合連続の完封負けで2連敗となり、3位から5位に順位を下げています。

2023年4月5日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
観衆:471人
PDRM 1-2 スリ・パハン
⚽️PDRM :ジェイムズ・オクゥオサ(76分)
⚽️パハン:バキウディン・シャムスディン(16分)、クパー・シャーマン(22分)
🟨PDRM:アミル・サイフル
🟨パハン:アザム・アジー、クパー・シャーマン
MOM:鈴木ブルーノ(PDRM)

 昨季は2部プレミアリーグでプレーし、今季1部スーパーリーグに昇格した5チームの内、唯一3勝を挙げているPDRMと、ジョホールと並んで今季未だ無敗のパハンの対戦となったこのカードは、いずれも両チームの好調さが見てわかる試合でした。
ホームのPDRMはパハンを相手に引くどころか、ファディ・アワドを起点に積極的にゴールを目指し、前半8分にはあわやゴールという場面もありましたが、この試合は前節のクランタン・ユナイテッド戦で肩をケガしたウチェ・アグバがベンチ外となった上、リーグ3位の6失点(6試合)のパハンDF陣が相手ということもあり、今季2ゴールを挙げている鈴木ブルーノ選手までなかなかボールが繋が利ませんでした。またMFサフィー・アフマド、DFノルフィクリ・アブドル・タリブの主力両選手が警告累積でこの試合出場停止と、ベストのメンバーでなかったことも選手層が厚いわけではないPDRMには厳しいところでした。
一方のパハンも帰化選手のエセキエル・アグエロが足の筋肉断裂で最低でも4週間の離脱が明らかになった他、FIFAカレンダーではフィリピン代表でプレーしたケヴィン・イングレッソも足の張りを訴えてベンチ外となるほど、こちらも決してメンバーが揃っていたわけではありませんが、18分にPDRMのオウンゴール(記録はパハンのバキウディン・シャムスディンのゴール)で先制すると、その4分後にはPDRMのミスをついて追加点を挙げ、前半は2-0で終了しました。
後半にはジェイムズ・オクゥオサが191cmの高さを生かしたヘディングシュートが決まり、PDRMは1点を返しますが、反撃もここまでとなり連勝はなりませんでした。
PDRMの鈴木ブルーノ選手は先発して、81分に交代していますが、この試合のMOMに選ばれてます。

2023マレーシアスーパーリーグ順位表(第7節終了時)

順位 チーム 勝点
1 JDT 7 7 0 0 30 1 29 21
2 KDA 7 5 1 1 13 5 8 16
3 SEL 7 5 1 1 14 8 6 16
4 SRP 7 3 4 0 13 6 7 13
5 SAB 7 4 1 2 15 11 4 13
6 TRE 7 3 1 3 9 6 3 10
7 PDRM 7 3 1 3 5 7 -2 10
8 NSE 6 2 2 2 8 13 -5 8
9 KLC 6 1 3 2 7 10 -3 6
10 PEN 7 1 2 4 8 13 -5 5
11 PRK 7 1 2 4 4 15 -11 5
12 KCH 7 1 1 4 4 14 10 4
13 KEL 7 1 1 4 9 22 -13 4
14 KLU 7 0 2 5 5 12 -7 2
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジム、TRE-トレンガヌFC、SAB-サバFC、NSE-ヌグリスンビランFC、SEL-スランゴールFC、KLC-KLシティFC、SRP-スリ・パハンFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC、KEL-クランタンFC、KCH-クチンシティFC、KLU-クランタン・ユナイテッドFC、PDRM-PDRM FC、PRK-ペラFC

2023マレーシアスーパーリーグ 得点ランキング(第7節終了時-記録はMFL公式サイトを参照)

順位 選手名(所属チーム) シュート 枠内S アシスト
1 フェルナンド・フォレスティエリ(JDT) 6 25 13 5 7
2 パク・テス(SAB) 4 10 6 0 6
アリフ・アイマン(JDT) 4 11 6 4 7
ステファン・ブルーノ(SRP) 4 14 5 0 7
エイロン・デル・ヴァイエ(SEL) 4 12 9 0 7
フアン・ムニス(JDT) 4 16 10 0 6
ジオゴ(JDT) 4 11 6 2 5
クパー・シャーマン(SRP) 4 10 5 2 7
9 エンドリック・ドス・サントス(JDT) 3 6 5 0 5
サディル・ラムダニ(SAB) 3 7 6 2 6
ノー・アル=ラワブデ(SEL) 3 3 3 0 6
ソ・ソンウン(PRK) 3 16 6 0 7
カサグランデ(NSE) 3 16 6 1 5
イスマヒル・アキネード(KEL) 3 7 3 0 5
ウィリアン・リラ(KDA) 3 19 4 1 7
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジム、TRE-トレンガヌFC、SAB-サバFC、NSE-ヌグリスンビランFC、SEL-スランゴールFC、KLC-KLシティFC、SRP-スリ・パハンFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC、KEL-クランタンFC、KCH-クチンシティFC、KLU-クランタン・ユナイテッドFC、PDRM-PDRM FC、PRK-ペラFC
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