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松本国際は神村学園に善戦。ハイライン・ハイプレスを貫き通す

「予想していたより相手が上手かった」。キャプテンの鈴木侑斗とディフェンスリーダーの城元諒星は、口を合わせるかのように振り返る。第102回全国高校サッカー選手権大会は2回戦。長野県代表の松本国際が初戦を迎え、鹿児島県代表の神村学園に0-2と敗れた。2年連続6度目の挑戦は、前回大会に続いて初戦敗退に終わった。

臆せずハイプレスも、完全に崩され2失点

相手は年代別代表やJリーグ内定者を擁する優勝候補。「格上なのはもちろん分かっていた」と鈴木は話すも、開始から臆することなく挑む。12秒、鈴木と米澤天良が2人掛かりで激しくチャージ。攻撃では長身FW橋崎泰雅を起点とし、良い入りができていた。

しかし8分、ハイライン・ハイプレスの裏を突かれる。ビルドアップでいなされ、FWに縦パスが入る。城元が果敢にチャレンジするも、潰しきれず。手薄となったディフェンスラインの背後を抜かれ、西丸道人のラストパスを名和田我空が押し込んだ。

相手のファーストシュートで失点。その後も裏への抜け出しについていけず、球際でも寄せきれない。16分には西丸にGKとの1対1を決められるも、オフサイドの判定に救われる。それでも直後、右サイドで小気味よいパスワークからクロス。こぼれ球を久保田剛海が拾い、落としから宮下湊太がミドルシュートを放つ。「ブレずに繋いで、うまく組み立てられたところもあった」。そう城元が言うように、ゴールキックからビルドアップを徹底し、右サイドを軸に前進する場面も見られた。

だが、そう甘くはなかった。巻き返しの匂いが漂う矢先、追加点を献上。24分、再びプレッシングをいなされ、右サイドの深い位置からクロスを許す。中で処理しきれず、有馬康汰に押し込まれた。前半での2失点に、勝沢勝監督は「明らかに完璧に崩された」。少なくとも1点差で折り返したいところだったが、そのプランも崩れてしまった。

攻守ともに奮闘も、痛感した全国との差

0-2で迎えた後半は、守備のバランスを整理。闇雲に前から行くのではなく、掛けどころを見極める。1トップは橋崎に代えて元木夏樹を投入し、ファーストディフェンダーの強度を上げる。そして前半と同様、立ち上がりから勢いを示した。

52分には佐々木晄汰をピッチに送り出す。県大会に出場できなかったエースが、もう一段ギアを上げる。70分、佐々木のスルーパスから元木が抜け出し、GKとの1対1。元木いわく「いつもの形」で最大の決定機を迎えたが、ループシュートはわずか右に外れた。

その4分後にも、佐々木が右サイドでの鋭いカットインからミドルシュート。これも枠を捉えられなかった。「自分の武器はドリブルとかスルーパス。それを少しは生かせたと思う」とエースは好感触を得る。途中出場の選手たちが流れを変えられるだけあって、勝沢監督の言葉を借りれば「前半の失点が痛かった」。

80分を通して無得点に終わった一方、後半は無失点。センターバックの城元が「ハーフタイムに竹野入(潔)コーチから『お前がやらないとダメだぞ』と言葉をもらった。最後まで体を張って守れた」と言えば、左サイドバックの鈴木も「前半の失点は自分のサイドから走られた。後半はゼロに抑えられて、自分たちの成長が見られた」と話す。相手のミスに救われる場面も少なくなかったが、トドメを刺されなかったことはポジティブだ。

攻撃陣も奮闘。前半は長身の橋崎が潰れ役となり、後半は走力のある元木が掻き回す。元木は前回大会に出場した兄・竜矢の想いも背負ってピッチへ。「『後半からでも決めたらヒーローだぞ』と背中を押してもらった。自分が出て勝たせたかった」。チーム最多となる3本のシュートは報われなかったが、スタンドで見守る兄の心に響いたはずだ。

攻守ともに歯が立たなかったわけではない。ただ、全国との差は小さくなかった。神村学園は初戦かつ優勝候補のプレッシャーもあってか、ミスが散見された。それでも2-0と勝ち切れるのは、強豪たるゆえんと言える。「『個で剥がされるからグループで』という形でやってきたけど、相手は上手い選手たちがもっとグループでやってきた。そこを学んで次に生かしていきたい」と指揮官。詰まるところ、より強力な個とグループを構築していくしかない。2大会連続の初戦敗退を糧に、来季こそは“3度目の正直”を誓う。

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