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2月21日のニュース
ジョホールが帰化選手ロメル・モラレスの加入を発表
モラレス前所属のKLシティは昨季の給料3ヶ月分が未払い
4ヶ月分の給料未払い問題を抱えるクダFCをクダ州政府は支援せず
スランゴールFCがACL2に出場できるのはジョホールのおかげ-ジョホールオーナー

ニュースというには古いですが、2月18日にマレーシア代表DFディオン・コールズがタイ1部ブリーラム・ユナイテッド移籍以来初となるゴールを決めています。27歳のコールズ選手はサラワク州クチン生まれながら、父親が出身のベルギーで育ち、ベルギーU19、U21といった年代別代表でもプレー経験がありますが、母親の母国マレーシアで代表入りすることを選びました。マレーシア代表チーム内でその数が増えている、両親や祖父母がマレーシアにルーツを持つレガシー帰化選手としては、マレーシア国内リーグでのプレー経験がない唯一の選手でクラブ・ブルッヘ(ベルギー1部)やミッティランFC(デンマーク1部)などを経て、昨年からブリーラム・ユナイテッドでプレーしており、個人的には日本や韓国など東アジアのクラブでのプレーを見てみたい選手です。

ジョホールが帰化選手ロメル・モラレスの加入を発表

噂が出た時点でこうなることはわかってたけど…。マレーシアスーパーリーグ10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFCは、クラブ公式SNSでコロンビア出身でマレーシア代表でもプレーするFWロメル・モラレスの加入を発表しています。

26歳のモラレス選手は、PKNS FC、マラッカ・ユナイテッドFC(いずれも既に解散)を経て、2021年からKLシティFCでプレーし、先年12月に5年間のマレーシアリーグ在籍を経てマレーシア国籍を取得すると、先月行われたアジアカップ2023では即代表入りしています。そしてグループステージ3試合全てに出場し、特に最終戦の韓国戦ではロスタイムに劇的な同点弾となる代表初ゴールを決める活躍を見せています。なお、ジョホールでの背番号は、トレンガヌFCに期限付き移籍したアキヤ・ラシドが昨年までつけていた19をつけるようです。

モラレス前所属のKLシティは昨季の給料3ヶ月分が未払い

一方モラレス選手が昨季所属したKLシティは、昨季の給料が未払いの状態が続いています。マレーシア語紙ハリアンメトロは、「言わばクラブが我々選手から借金をしている立場にもかかわらず、毎月毎月選手側から尋ねない限り、クラブからは給料未払いについて説明がない。自らの権利を行使しているにもかかわらず、まるでこちらが物乞いをしているかのように思えてしまい、不満しかない。」という匿名の選手の談話を紹介しています。

今季の開幕が5月とはいえ、昨年12月に終了した昨季の給料が未払いというのは異常な事態ですが、先月、メディアで給料未払いが4ヶ月に及ぶことが報じられた直後には、昨年9月分の給料が支払われたが、残りの3ヶ月分に関しては未払いのままで、その後はクラブ側からは何の連絡もないということです。また、この選手によると、U23チームの選手もトップチーム同様、給料未払いが続いているということです。

「果たせない約束はせず(KLシティFCの)スタンリー・バーナードCEOにはこの状況に目を向けて欲しい」と述べたこの選手によると、この給料未払い問題についてはマレーシアプロサッカー選手会(PFAM)にも報告済みだということですが、それによって何かがクラブが動いたということはないようです。

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KLシティFCは、昨季終盤に給料未払い問題未解決を理由にフィリピン代表GKケヴィン・メンドーザが前KLシティFC監督が指揮するインドネシア1部のプルシブ・バンドンへ移籍、またコートジボアール出身のFWチェチェ・キプレはクラブが就労ビザを取らず、観光ビザでプレーしていたことを暴露して退団しています。このような状況下で、ジョホールから誘われたモラレス選手を引き止める方法はなかったでしょう。

給料未払い問題を抱えるクダFCをクダ州政府は支援せず

マレーシアスーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)からは、KLシティFCとともに未払い給料問題の解決を求められているクダ・ダルル・アマンFC(クダFC)ですが、本拠地を持つクダ州政府のムハマド・サヌシ州首相は、この給料未払い問題について州政府は支援を行わないことを言明したと、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。これまでにクダFCは昨季の給料4ヶ月分が未払いになっていることが報じられています。

クダ州サッカー協会の会長も兼任するサヌシ州首相は、州政府は選手の給料を補填する予選を割り当てておらず、運営が民営化されたクダFCの給料は、クラブオーナーが責任を持って支払うべきだと述べています。

「クダFCの給料を私が支払っていないという非難があるが、クダFCはクダ州政府ともクダ州サッカー協会とも無関係の民営化されたクラブであり、運営に関する問題はクラブの経営陣がその責任を負うものである。」と述べたサヌシ州首相は、経営陣にはこの問題にを迅速に解決して欲しいとは思うが、実際は困難なのでクダFCは今季のスーパーリーグ参加資格を失うだろうとも述べています。

さらにサヌシ州首相はこの給料未払い問題が解決しない理由として、クダ州サッカー協会内での汚職にマレーシア不正防止委員会(MACC)の捜査が入ったことが原因と述べ、この捜査によりクダ州サッカー協会と無関係のクダFCを投資家やスポンサーが敬遠した結果だとする一方で、選手の給料などを含めた国内クラブの運営費用が高騰しているとも述べています。「一部のクラブによって運営費用が高騰しているが、その他のクラブはそれに対応できず、その結果としてこのような(給料未払い)問題が複数のクラブで発生している。」

クダFCのオーナー、ダウド・バカル氏は昨年10月からクラブのキャッシュフローに問題があったことを認めており、今月1日には過去4年間CEOを務めたカマル・イドリス・アリ氏がまるで泥舟から逃げ出すように辞任しています。

スランゴールFCがACL2に出場できるのはジョホールのおかげ-ジョホールオーナー

「赤い巨人」の愛称を持つスランゴールFCは、前身のスランゴールFAが1936年に創設されたマレーシアリーグの古豪です。1921年に第1回大会が開催されたマレーシアカップ(第1回同時はマラヤカップ)では、優勝回数33回と2位シンガポール(かつてシンガポールはマレーシアリーグでプレーしていました)の24回、3位ペラの8回に大きく差をつけています。国内では最大の人口を抱えるスランゴール州を本拠地とするスランゴールFCですが、近年はタイトル争いに絡むことも少なく、最後にマレーシアカップを獲得したのは2015年、そしてリーグ優勝は2010年が最後です。

この凋落した「赤い巨人」に代わった台頭したのがジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)です。昨季までリーグ10連覇、しかも2季連続となるリーグ、マレーシアカップ、FAカップの国内三冠達成、さらに国外でも東南アジアのクラブ初となる2015年のAFCカップ優勝、2022年のマレーシアのクラブ初となるAFCノックアウトステージ進出と、近年の活躍は目を見張ります。

近年のJDTの台頭はそのオーナーで、ジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下の強烈なリーダーシップと豊富な資金によるものであることは明らかですが、これだけの結果を残しても、イスマイル殿下は国内サッカーは未だにスランゴールFCを中心に回っている、という不満をお持ちのようで、ことあるごとにスランゴールFCというクラブを「口撃」することも少なくありません。そんなイスマイル殿下が今度は「近年全くJDTに歯が立たないにもかかわらずスランゴールFCが今季から発足するACL2に出場できるのは『DTのおかげである』」とSNSに投稿されています。

「ホームで4連勝、アウェイでも4連勝、ホームで2連勝で通算成績は10勝0敗。JDTがスランゴールに最後に敗れたのは、(2018年に退陣した元スランゴール州サッカー協会会長の)スバハン・カマル氏の時代である。その後、良からぬ連中にスランゴール州サッカー協会が乗っ取られて以来、スランゴール州政府から毎年4600万リンギ(およそ14億4000万円)の資金提供を受けているにもかかわらず、JDTは過去8年間にわたってスランゴールには一度も敗れたことはない。」と挑発的なコメントを投稿されています。

さらにイスマイル殿下は「JDTがこれまでAFCカップやACLに出場して稼いだAFCクラブコンペティションランキングのポイントのおかげで、今季のACL 2に出場できるにもかかわらず、それをクラブの実力で勝ち取ったものだと妄想し、現実を受け入れていない。」と糾弾した上で、最後に「(スバハン氏以降の)全てのスランゴール州サッカー協会の会長に、つまらない歴史を作ったことを『おめでとう』と伝えたい。」と皮肉混じりの投稿で締めくくっています。

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