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徳永就大コールリーダー「一番大切なのは、共に闘うこと」【インタビュー】

父の影響でAC長野パルセイロのボランティアスタッフなどを経験し、2012年から本格的に応援を始めた徳永就大氏。2018年に5代目コールリーダーへ就任すると、リズム隊を兼任しながらゴール裏の中核で声を枯らしている。シュタルフ長野が掲げる『ONE TEAM』の一員として、コールリーダーは重要なピースだ。そんな彼は日々何を思い、何を感じ、何を伝えているのか。

コロナが明けて。試合前後に高まる一体感

――今年はバス待ちが復活しましたね。

以前もあの場所(ビクトリーロード)でやっていたときはありましたけど、コロナ前は下の受付を通ったところに入らせてもらっていました。あそこは屋根があって声が反響するし、選手と同じ目線で応援できるんです。それが今年はコロナだったり、サポーターの入場とバスの入る時間が被ることもあって。どこでやればいいかとクラブスタッフに相談して、またビクトリーロードに戻すことになりました。いままではバスが奥のエントランスまで入っていたところを、手前で止まってもらえるようになって、選手たちに声が届きやすくなっています。

――上から選手を囲い込むような光景は、下から見ていても迫力があります。

最初は上から声をかけるよりも、同じ目線でやりたいと思っていましたけど、選手に降り注ぐように声が届くらしくて。それはすごく面白いし、クラブ公式で撮影している写真の見栄えもいいですよね。

――ビクトリーロードを通っているサポーターも、立ち寄りやすいところはあると思います。

後ろのほうになると全然バスが見えないので、ギュッと前に詰めてもらうような形にはなりますけどね。

――5月13日の信州ダービーから大型ラッピングバスがお披露目となりましたが、どう感じましたか?

すごく嬉しいです。他のクラブがそういうバスを持っているのがうらやましかったし、あのバスが街中を走るだけでも宣伝効果になると思います。あのバスで入ってくるのはサポーターも燃えるし、選手も燃えるはずなので、シンボルとなるようなバスができて本当に嬉しいです。

――バス待ちは試合前のイベントですが、今年は試合後にも勝ったら写真撮影という恒例行事ができましたね。

去年もサポーターから試合後に写真を撮りたいという話があって、前半戦最後の(第17節)鳥取戦で勝った後には、喜岡(佳太)選手も移籍前ラストだったので写真を撮りました。試合後も時間がタイトなのでなかなかできないところはありましたけど、今年は選手とか監督もやりたいと言っている中で、クラブが調整してくれました。

――写真撮影前のシャナナ(ラインダンス)では、杉井颯選手や佐古真礼選手が存分に盛り上げてくれています。ああいうキャラクターが多いのは、サポーターとしても嬉しいのでは?

コロナ禍では声も出せないし、練習も見られなかったので、選手たちのキャラが見えにくい部分がありました。今年はコロナが落ち着いてきて、声も出せるようになって、選手たちのキャラが見えるようになったので嬉しいです。ああやって我を出して楽しんでくれると、サポーターとしても親近感が湧きます。

――特に面白いと感じる選手はいますか?

杉井選手と言うしかないんじゃないですかね…(笑)。

――杉井選手以外で(笑)。

みんな本当に個性がありますけど、その中でも熱さを感じるのは佐藤祐太選手です。試合中もゴール裏に向けてアピールしてくれますし、そういうのを見ると燃えますね。

――試合中にあれだけ走って、試合後にも盛り上げてくれるのは本当にすごいですよね。

あれは体力お化けですよね(笑)。

――杉井選手はトラメガを持って、率先して盛り上げてくれています。

試合後は杉井選手に任せさえすれば、あとは他の選手にも振ってくれます。ああやって選手とサポーターを繋いでくれる選手がいるのはありがたいです。

――試合後の共超も、もはやテーマソング化しています。あれはいつ頃からでしょうか?

去年の佐久陸(天皇杯県予選準決勝・アルティスタ浅間戦)で勝った後に、選手たちがロッカールームで歌っているのが聴こえました。実際にはそれ以前から歌っていたみたいですけど、それがいつからかテーマソングみたいな感じになりました。

――いまでは選手たちが冒頭を歌って、そこからサポーターが声を合わせるようになりました。

あれは今年から始まって感動しました。せっかく声を出せるようになったので、選手たちにトラメガを渡し始めたら、ああやって歌ってくれています。本当に良い雰囲気だし、そこまで特別なチャントではなかったですけど、いまでは特別なチャントと言えます。

屈辱の逆転負け後、千尋の谷を歌った理由

――今年は声出し応援が全面解禁となりましたが、何か変えたことはありますか?

去年まではゴールした後にもシャナナをやっていましたけど、今年はそれをやめました。ぶっちぎり長野という大量得点をしたら歌い出すチャントがあって、それがお蔵入りになっていたので、ゴールした後に歌うようにしました。

――ゴールした後のシャナナをやめたのはなぜでしょうか?

ゴールした後に肩を組んでシャナナをやると、そこで一回サポーターの気持ちが落ち着いてしまう気がしたんです。シャナナをやっている間に失点したことはないですけど、試合中は落ち着かないようにシャナナを封印して、試合に勝ったら全員で歌って踊ることにしました。

――サポーターの応援には、シーズンを通しての変化もたくさんあると思います。第4節・カターレ富山戦は2点差を追いつかれてのドローでした。シュタルフ悠紀監督がInstagramで「ネガティブなエネルギーはピッチ内に伝染する」と記していましたが、どう受け止めましたか?

たしかにバタバタした感じはありました。3点目を取った後に「ガンガン行っちゃえ」という雰囲気があって、PKを外した後にざわざわしてしまって、少しうわついていたと思います。その後のYS横浜戦では、先制してから「まだ終わっていないぞ」という雰囲気が、僕が言うまでもなく全員が感じていました。それによって富山戦よりは引き締まった空気ができていたと思います。(第2節)愛媛戦でも最後の最後に追いつかれていたので、リードした後の持っていき方というのは課題としてあったのかもしれないです。

――第8節・福島ユナイテッドFCでは、今度は2点差をひっくり返されました。試合後に千尋の谷を歌っていましたが、どんなメッセージを込めましたか?

2点差をひっくり返された試合ではありましたけど、内容的に負けていたとは感じなかったです。先に2点を取っているし、あの3失点はバタついた10分強のところで食らって、その後にもがいている選手たちの姿勢も見ていました。0-3で負けた(第3節)奈良戦とは違う雰囲気を感じたし、その後の信州ダービー(天皇杯県予選決勝)も含めた連戦がタイトなスケジュールで負けられない試合だったので、サポーターとしても共に闘う姿勢を見せたかったです。「俺たちもついていくぞ」という思いを届けたかったので、千尋の谷を選びました。

――現場に居合わせたクラブスタッフが、「試合後に千尋の谷を歌うのは初めてじゃないか」と話していました。

初めてかもしれないですね。あれは仲間が「試合後に千尋の谷を歌うタイミングがあってもいいんじゃないか」と話してくれたのがきっかけでもあります。あの試合の後に選手の背中を押すなら、千尋の谷しかなかったです。タイトな日程は全員で乗り切らないといけないし、ここで折れるわけにはいかないと思っていました。

――結果として福島戦後の連戦は2連勝しましたね。

次の岩手戦は遠いアウェイでしたけど、選手たちがファイトする姿勢を見せてくれたのはすごく嬉しかったです。

――岩手戦も3点先取した後に1点を返されましたが、そこでも雰囲気を引き締めようとはしていましたか?

「油断するな」というのはみんなで話していましたけど、僕としてはチームを信じていたので、やられる気はしなかったです。サポーターの雰囲気も良くて、なんとかみんなで押し返せたと思います。

――記者席から見ていても良い雰囲気が伝わってきました。そういえばホーム開幕戦・奈良戦では完敗した後にブーイングがありましたが、長野のサポーターはあまりブーイングをしない印象があります。信州ダービーのときにも、松本サポーターに対するブーイングがほとんど聞こえませんでした。

ブーイングについては賛否両論ありますけど、すること自体は悪くないと思っていて、使いどころの問題だと思います。ダービーでブーイングしなかったのも意図的ではないですけど、たしかに僕も含めて周りのサポーターもほとんどしていなかったです。お互いにライバル関係ではあるので、ブーイングする人がいても全然いいとは思いますけどね。

ダービーチャントより「俺たちが長野」を

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