ボラセパマレーシアJP

12月31日のニュース
2023年のマレーシアサッカーを振り返る重大ニュース

2023年も残り数時間となりましたが、今年最後の投稿としてボラセパマレーシアJP的視点で2023年の重大ニュースを選んでみました。なお、各項目に振った数字は順位などではありません。

1. 代表のFIFAランキングが145位から130位に

2021年の東南アジア選手権で準決勝進出を逃して辞任したマレーシア人のタン・チェンホー前監督(現スランゴールFC監督)に代わり、2022年1月に就任したのが韓国出身のキム・パンゴン監督です。昨年はマレーシア代表を43年ぶりに予選突破に導いてAFCアジアカップ出場を決めるなどの実績を積み上げたキム監督は、今年は1月の段階で145位だったマレーシアのFIFAランキングを直近の12月には130位まで引き上げています。特に今年はインドやキルギスといった格上に勝利しただけでなく、中国やシリアとは引き分けるなど、終わってみればFIFAランキングを20位上げたパナマ、19位上げたモルドバに続き、世界では今季3位となる15位のランクアップを成し遂げています。

2. 3名の新たな帰化代表選手が誕生

躍進したマレーシア代表の原動力の一つに帰化選手の増加があります。今年だけでもパウロ・ジョズエ(KLシティFC)とエンドリック・ドス・サントス(ジョホール・ダルル・タジムFC)の両ブラジル出身MFが2月にマレーシア国籍を取得すると早速、代表選手としてプレーしています。昨年はアルゼンチン出身のMFエゼキエル・アグエロ(スリ・パハンFC)と英国出身のMFリー・タック(クダ・ダルル・アマンFCを退団)が同様に国籍を取得しており、今月にはコロンビア出身のFWロメル・モラレス(KLシティFC)もマレーシア国籍を取得すると、今月の代表候補合宿には早速、招集されています。彼らはいずれも国内リーグで5年以上プレーを続けた結果、マレーシア人選手としてプレーする資格を得、所属するクラブなどの支援を受けながら国籍を取得しています。マレーシア代表にはこの他、国外生まれながら親がマレーシア人であることからマレーシア国籍を得るハイブリッド帰化選手も多くおり、現在行われている代表合宿の参加者25名中、マレーシア国内で生まれ育った選手は半数以下の12名となっています。

3. ジョホールがリーグ10連覇と2季連続の国内三冠達成

2位のスランゴールに勝点差15をつけ、第21節で優勝を決めた今季のジョホール・ダルル・タジムFC。リーグはこれで10連覇となり、マレーシアカップ、FAカップと合わせた国内三冠も2年連続で達成しています。今季の成績は25勝1分0敗、得点100失点7と国内では今季負けなし。国内では既に敵なしのチームの今季の目標は、昨季に続きACLでノックアウトステージへ進むことでした。昨季と同じ、川崎フロンターレ、蔚山現代と同組となったグループステージでは、川崎に2敗、蔚山には1勝1敗という結果で3位となり敗退しています。しかし、今季が終了して間もなく、27歳のMFジャリル・エリアスをアルゼンチン1部サン・ロレンソを獲得、さらにマレーシア国籍を取得したコロンビア出身のFWロメル・モラレス(KLシティ)やクダでプレーする元シェフィールド・ウエンズデーU21のMFマヌエル・イダルゴの獲得に動いているという噂もあり、来季からは参戦するAFCチャンピオンズリーグ・エリートへの準備も怠りありません。

と、書きましたが年末にかけて、クラブは年間の運営費用を30-40%カットすることを発表すると同時に、今季国内三冠に導いたエステバン・ソラリ監督とそのコーチングスタッフの退任を発表しています。新監督には2022年シーズン途中から指揮を取り、今季はテクニカル・ディレクターを務めていたエクトル・ビドリオ氏が復帰する他、チームでは主力から外れている複数の高額年棒選手を期限付きで移籍させる方針も合わせて発表されています。この中には2024年1月のアジアカップに出場するマレーシア代表でもプレーするサファウィ・ラシドや、代表戦では今季3ゴールを挙げているアキヤ・ラシドといった選手も含まれています。

4. クランタンがシーズン新記録の121失点

リーグ覇者ジョホールとは好対照だったの最下位のクランタンFC。2勝2分22敗、得点29失点121の成績は、リーグのシーズン最多失点記録を30点近く更新する不明な新記録を打ち立てています。さらに給料未払いからシーズン途中に外国籍選手が次々に退団し、マレーシア人選手も大半はU23の経験が少ない選手たちと、トップチームにで1シーズンを送るには心許ない布陣だったことが今季の悲惨な記録に繋がっています。ただし、これだけの成績ながら、下部リーグに当たるM3リーグのクラブにはいずれも来季の国内クラブライセンスが発給されておらず、入れ替え戦が行われる心配はありません。しかし2012年には国内三冠制覇の経験もあるクランタンFCですが、未払い給料問題は未だに解決しておらず、最悪の場合、来季は成績理由ではなく未払い給料に対する罰則処分としてセミプロリーグの3部M3リーグへ降格となる可能性もあります。

5. 複数のクラブで給料未払いが発覚

マレーシアリーグでは、未払い給料問題は今に始まったことではありませんが、今季も半数近い6クラブで給料未払いが封じられています。このブログでも何度も取り上げているように、マレーシアサッカー協会(FAM)とリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)によりクラブの「民営化」が押し進められたことにより、従来の資金源だった州政府からの支援という公金に頼っていた各クラブの中には、十分なスポンサーを見つけることができず、その結果、シーズン途中に資金繰りが苦しくなり、選手への給料の遅配や未払いが発生するという慣例が続いています。今季はクランタンFC、クダ・ダルル・アマンFC、ペナンFC、KLシティFC、ヌグリスンビランFCといったチームの他、2023/24シーズンのAFCカップで東南アジア地区準決勝に進出しているサバFCなどでも給料未払いが封じられています。

6. AFC大会に3クラブが出場

昨季のリーグ覇者としてACLに出場したジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、昨季に続き今季のACLグループステージでも川崎フロンターレ、蔚山現代と同組になりました。コロナ禍の影響により、昨季はJDTの本拠地、ジョホール州が集中開催地となったこともあり、地の利を生かしたJDTが川崎や蔚山現代を抑えてまさかのグループ1位突破を果たし、クラブ史上初となるノックアウトステージに進出しました。その再現をと臨んだ今季のACLでしたが、川崎には2敗、蔚山現代には1勝1敗、また同じグループのBGパトゥムには2勝したものの今季はグループ3位となり、ノックアウトステージ進出を逃しています。

またAFCカップには昨季2位のトレンガヌFCと同3位のサバFCが出場し、トレンガヌFCは3勝3分とグループステージ無敗ながら、グループ1位のセントラル・コースト・マリナーズFC(オーストラリア)に勝点差1で及ばずにグループステージで敗退しています。一方のサバは既に順位が確定してた最終戦で敗れたものの、来年2月に行われるグループ首位で東南アジア地区準決勝進出を決めています。しかしサバFCは、前述した通り給料未払い問題を抱えており、この記事を書いている12月31日の時点も未払いの精算が完了していないことが報じられています。1995年のAFCカップウィナーズカップ(当時)以来28年ぶりにアジアの舞台に戻ったサバFCですが、ノックアウトステージを勝ち上がった際のメンバーとは大きく顔ぶれが変わってしまう可能性や、給料未払いが解決せずモチベーションが上がらないまま準決勝を迎える可能性などもあります。

なお来季2024/25シーズンから大きく変更されるACLですが、現行のACLに該当し、アジア東地区は12チームで争われるACLエリート(ACLE)へのジョホール・ダルル・タジムFCの出場が決まっています。またAFCカップが発展解消する形のAFC 2へは、今季リーグ2位のスランゴールFCが出場します。

7. 審判への低い評価は変わらず-来季はいよいよVAR導入

基準が不明瞭な判定により、今季も複数の審判が無期限審判停止処分を受けたマレーシアリーグ。国際大会に派遣される審判もおり、全員の評価が低いわけではないですが、一般的にマレーシアサッカーファンは審判への信頼は非常に低くなっています。この状況を改善するためにサポーターだけでなく選手や監督らもVAR導入を求めてきましたが、来季のマレーシアスーパーリーグにはついにVARが導入されることが決まりました。VARを運営する審判のトレーニングは今年半ばから始まっており、スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は、試合ごとに会場へ機材を持ち込むトラックでの移動式VAR設備も複数台購入済みであることも明らかにしている他、サバFCの本拠地があるボルネオ島には機材を飛行機で持ち込む案なども発表しています。

8. 国立競技場改修もコンサートでピッチは台無しに

マレーシア代表はクアラ・ルンプールにあるブキ・ジャリル国立競技場を本拠地として使っていますが、建設から25年が経った施設は今年1月から大規模な改修工事とピッチの張り替えが行われました。この間、代表戦はマレー半島東北部のトレンガヌ州や南部のジョホール州などで行われ、改修工事終了後の柿落としとして開催されたのが10月半ばのムルデカ大会でした。しかし、この大会では張り替えた高麗芝系のゼオン・ゾイシア芝が十分に根付いておらず、試合中にピッチの表面がごっそり剥がれるなど散々で、対戦したインドやタジキスタンだけでなく、マレーシアの選手からも不評を買いました。スタジアムを管理するマレーシア・スタジアム社(PSM社)も、およそ1ヶ月後に控えていたW杯2026年大会アジア2次予選に向けて補修を行うことを約束しました。

が、11月22日に英国のロックバンド、コールドプレイがブキ・ジャリル国立競技場で7万5000人を集めるコンサートを行った翌日、ピッチは複数箇所で土がむき出しになるなど無残な状態となり、PSM社は12月8日に予定されていた今季国内日程の最終戦となるマレーシアカップ決勝までには、ピッチを90%回復させると約束したものの、試合当日は土が剥き出しの部分も残り、相変わらず表面の芝が剥がれ、マレーシアU23代表選手でもあるトレンガヌのウバイドラー・サムスルがそれに足を取られてケガをし(、退場を余儀なくされるなど事故も起こりPSM社への非難が集まりました。

9. 来季の開幕が5月となることが発表される

今季の重大ニュースと言えるかどうかはわかりませんが、これも今月発表されるとすぐに話題となりました。Jリーグ同様、秋春制への移行を行うマレーシアリーグは、2024/25と2025/26の2シーズンをかけて秋春制への移行を完了する予定を発表しています。1月あるいは2月に開幕するのが通例だったマレーシアリーグですが、2024年は1月にはマレーシア代表が予選を突破して43年ぶりに出場するAFCアジアカップがあり、代表選手がいるチームはプレシーズンに十分な時間が取れないことから、今季の開幕は当初は4月とされていました。しかしU23代表が出場するAFC U23アジアカップが4月にあるなどの理由から、結局開幕は5月3日、そして終了は2025年4月20日と12ヶ月という長さのシーズンとなることが発表されました。また2024年1度目のトランスファーウィンドウは2月3日から4月26日までの12週間となることも明らかになっています。

これまでは2月開幕11月閉幕で、各クラブは1月からの11ヶ月分あるいは2月からの10ヶ月分の給料を支払うのが一般的でしたが、開幕が5月となったことで、リーグが開幕していない期間、つまり入場料収入が期待できない時期が長くなったことで、給料未払い問題がシーズンの早い時期に起こる可能性なども取り沙汰されている他、資金が潤沢にあるクラブとそうでないクラブの格差がさらに広がる懸念もあります。

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以上が今季のマレーシアサッカー重大ニュースとなります。2023年はこの投稿がボラセパマレーシアJPの最後の投稿となります。本年も拙いブログを読んでいただきありがとうございます。皆様も良いお年をお迎えください。

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