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11月15日のニュース
「民営化」の流れに逆行?-スランゴール州政府がスランゴールFCに3億円超の資金供与
KLシティのモラレスはマレーシア国籍取得間近か
MFLカップの初代王者はトレンガヌU23に決定

「民営化」の流れに逆行?-スランゴール州政府がスランゴールFCに3億円の資金供与

英字紙ニューストレイトタイムズは、スランゴール州のアミルディン・シャリ州首相が、スランゴール州を本拠地とするスランゴールFCへ1000万マレーシアリンギ(およそ3億2000万円)を供与することを発表したと報じています。

スランゴールFCのジョハン・カマル・ハミドンCEOはこの援助に感謝の意を表すると共に、この援助をスランゴールFCが運営する女子チームやU23、U20、U18など年代別チーム、さらにはその下の年代の育成プログラムにも使いたいと話していると、この記事は結んでいます。

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そのチームカラーから「赤い巨人」の愛称を持つスランゴールFCは、マレーシアカップ優勝33回を誇るかつての強豪ですが、近年は今季リーグ10連覇を果たしたジョホール・ダルル・タジムFCの影に隠れ、2010年を最後にリーグ優勝しておらず、国内タイトル獲得も2015年のマレーシアカップ優勝が最後となっています。また今季はリーグ2位ながら王者ジョホールとは勝点差15で早々と優勝を許しただけでなく、直接対決でもリーグ戦ではホームで0-4、アウェイでは2-0と敗れている他、FAカップ準決勝で0-4と全て完封で敗れるなど、過去の栄光の面影すらありません。

今回の3億円は、宿敵とも言えるこのジョホールに対抗するための強化費用も含まれる州政府からの巨額の支援ですが、この「公的資金投入」は、がFIFAの指導のもとでマレーシア国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLが各チームクラブの「民営化」に取り組んでいる最中であることを考えると、その流れに逆行するように見えます。もともと各州の対抗戦のカップ戦として始まったマレーシアサッカーは1994年のプロ化後も、各州政府からこのプロクラブを運営する州サッカー協会へ公的資金が注ぎ込まれる形で運営されてきました。日本で言えば知事にあたる州首相が州サッカー協会会長も兼ねることも多く、マレー系に人気のあるサッカーに公的資金を投入してチームを強くすれば、それが州首相自身や所属政党の集票につながるといった図式もありました。「民営化」はその状況を改善すると考えられていましたが、州政府以外のスポンサー獲得に苦しむチームでは、国内有力選手や外国籍選手の獲得など身の丈に合わない経営が行われた結果、このブログでも取り上げることが多い、選手や関係者への給料未払いという形で現れています。

3400万人近い人口のマレーシアで、720万人と国内最大の人口を抱えるスランゴール州は、2位で人口410万人のジョホール州を人口で大きく上回るだけでなく、経済規模も国内No. 1であり、そういった背景があるスランゴール州政府には、他の州政府では考えられない3億円という巨額支援が可能になっているかと思います。なおこのニューストレイトタイムズの記事でも見出しは「スランゴールFCがタイトル獲得のための資金獲得」と能天気なものになっており、公的資金投入への批判めいたものはなく、結局誰も民営化を望んでいないのか、或いはそんな話があったことを忘れてしまっているのかも知れません。

KLシティのモラレスはマレーシア国籍取得間近か

コロンビア出身のストライカー、ロメル・モラレスは、2018年にスーパーリーグのPKNS FC(既にリーグ撤退)に加入以来、2020年のマラッカ・ユナイテッドFC(既にリーグ撤退)でのプレーを経て2021年からKLシティFCでプレーし、KLシティではこれまでに58試合で18ゴールを挙げています。このモラレス選手について、英字紙ニュースとレイトタイムズが、国籍取得が近いのではないかと報じています。

マレーシア国内リーグで5年間以上継続してプレーしているモラレス選手は、FIFAが設ける規定によりマレーシア国籍を取得すればマレーシア代表でのプレーが可能となっていることから、国籍取得を行っていることはこのブログでも何度か取り上げています

先月にはマレーシア内務省が国籍取得のためのセキュリティ審査にかかる日数をこれまでの73日から14日に短縮することも発表しており、モラレス選手が順調にマレーシア国籍を取得することができれば、マレーシア初の帰化代表選手となったガンビア出身のモハマドゥ・スマレ(ジョホール・ダルル・タジムFC)の24歳に次ぐ、史上2位の26歳で国籍取得となります。

記事の中でKLシティのスタンリー・バーナードCEOは、(セキュリティ審査には)相当な配慮が必要であり時間がかかることは承知していると話す一方で、この審査が終われば国籍取得までのタイムラインが明確になるだろうと話しています。

現在マレーシアにはブラジル出身のギリエルメ・デ・パウラ(37歳、現所属3部マラッカFC)、パウロ・ジョズエ(34歳、KLシティ)、エンドリック・ドス・サントス(28歳、ジョホール)、コソボ出身のリリドン・クラスニキ(31歳、トレンガヌFC)、アルゼンチン出身のエゼキエル・アグエロ(29歳、スリ・パハンFC)、そして今季途中にクダ・ダルル・アマンFCを退団して出身の英国へ帰国したリー・タック(35歳)と新旧合わせて7名の帰化代表選手がいますが、今週11月16日に開幕するFIFAワールドカップ2026年大会予選に出場する代表チームに招集されているのは、エンドリック・ドス・サントス、パウロ・ジョズエ、モハマドゥ・スマレの3名だけです。

MFLカップの初代王者はトレンガヌU23に決定

今季から新設されたマレーシアスーパーリーグのU23チームのリーグ戦MFLカップの決勝が行われ、トレンガヌFCのU23チーム、トレンガヌFC IIがジョホール・ダルル・タジムFCのU23チーム、ジョホール・ダルル・タジムFC IIを1-0の僅差で破って初代王者に輝いています。

昨季までの2部プレミアリーグは、ジョホール・ダルル・タジムFCやスランゴールFC、トレンガヌFCなどのセカンドチームと他のクラブのトップチームが混在する編成になっていましたが、今季開幕前の大規模なリーグ再編成により、1部スーパーリーグと2部プレミアリーグのトップチームを集めて新たなスーパーリーグを編成する一方で、プレミアリーグは一時的に休止となっています。そして新たに導入されたのがこのMFLカップです。

日本で言えばJエリートリーグに当たるこのリーグは、スーパーリーグ全14クラブのU23チームと、マレーシアサッカー協会(FAM)とマレーシア政府青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会(MSN)が共同で運営するFAM-MSNプロジェクトチームの15チームが出場するリーグです。このリーグでは各チームに外国籍選手3名を含むオーバーエージ選手5名が出場可能です。

MFLカップのフォーマットは、全15チームが2つのグループに分けれた2回戦総当たりで試合を行い、それぞれのグループの上位4チームずつが今度は1回戦総当たりのチャンピオンズリーグに進み、その上位2チームが決勝に進んでチャンピオンを決定します。

今年3月に開幕した初年度のMFLカップは、A組からはトレンガヌ、ジョホール、PDRM、クダの4チームが、B組からはスランゴール、KLシティ、スリ・パハン、ペラがそれぞれチャンピオンズリーグに進出し、この中から5勝2敗で首位となったトレンガヌと4勝3敗で2位となったジョホールが決勝に進出していました。

11月11日にクアラ・ルンプールのKLフットボールスタジアムで行われた決勝では、U23代表で主力として活躍するナジムディン・アクマル、ファーガス・ティエニーの両MFを有するジョホールが、A代表でも主力のMFエンドリック・ドス・サントスやトップチームのACLの試合にも先発しているDFシェーン・ローリー、さらにフィリピン代表DFオスカル・アリバスを起用してなりふり構わず勝ちにきました。しかし試合は88分にジョホールGKズルヒルミ・シャラニからのゴールキックをDFアイサル・ハディが受け損ねたところを、トレンガヌのFWイサ・ラマンが蹴り込み、これが決勝点となり、ジョホールはたった一度のミスでトップチームとのアベック優勝を逃しています。なおこの試合のMVPはU23代表でもプレーし、トップチームのトレンガヌFCでもプレーするMFウバイドラー・シャムスルが選ばれています。

MFLカップ2023決勝
2023年11月11日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
観衆:3,055名
トレンガヌFC II 1-0 ジョホール・ダルル・タジムFC II
⚽️トレンガヌ:イサ・ラマン(88分)
🟨トレンガヌ(2) :ヌル・アズファル・フィクリ、シャフィク・ダニアル
🟨ジョホール(2):ナザルディン・ジャジ、アイサル・ハディ
MVP:ウバイドラー・シャムスル(トレンガヌFC)

試合のハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグMFLの公式
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