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10月16日のニュース
ムルデカ大会-インドに4発快勝でマレーシアが決勝に進出
敗れたインド代表監督は試合後の会見で不満爆発
サッカー協会-劣悪ピッチも明日のムルデカ大会決勝は予定通りブキ・ジャリルで開催

10年ぶりの開催となった第42回ムルデカ大会が10月13日に新装ブキ・ジャリル国立競技場で行われ、FIFAランキング134位のマレーシア代表は同102位のインド代表を4-2で破り、10月17日のタジキスタン代表との決勝進出を決めています。

この試合のチケットの売上枚数43, 645枚とマレーシアサッカー協会FAMが試合前に発表して言いますが、ブキ・ジャリル国立競技場での代表戦は今年1月7日の東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップのタイ代表戦以来。このタイ代表戦以降、ブキ・ジャリル国立競技場は大規模な改修工事とピッチの張り替えなどで使用できず、代表戦はジョホール州やトレンガヌ州で行われており、特に首都圏のサポーターにとっては待ちに待った試合でした。

来年1月のアジアカップに向けて代表チームの選手選考が激化する中、この試合の先発XIは以下のようになっています。先月9月に行われた中国代表戦からは、MFブレンダン・ガン(スランゴールFC)とMFパウロ・ジョズエ(KLシティFC)が外れ、代わりにMFアリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジムFC)とU23代表から昇格したMFノーア・レイン(フィンランド1部セイナヨエン・ヤルカパッロケルホ)が先発、リーグ10連覇を果たしたジョホールからは6名が先発XIに名を連ねています。なおジョズエ選手は試合前にデング熱に感染していることが発表されています。(以下は両チームの先発XI)

9月のFIFA国際マッチカレンダーでのシリア、中国両代表との試合も含め、直近の6試合では無敗のマレーシア代表は、大観衆の声援を背に試合開始から積極的にインド陣内に攻め込みます。そして早くも7分には先制点が生まれます。エンドリック・ドス・サントス(ジョホール・ダルル・タジムFC)のコーナーキックは低く速いボールがインドゴール前へ。ラヴェル・コービン=オング(ジョホール・ダルル・タジムFC)のヘディングはうまく合わなかったものの、アリフ・アイマンが繋いだボールをディオン・コールズ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッドFC)がボレーで押し込んでマレーシアが先制します。

しかしインドもすぐさま反撃に転じ、13分にはコーナーキックから繋いだボールをナオレム・マヘーシュ・シンがボレーシュート。これをGKシーク・イズハン(ジョホール・ダルル・タジムC)が止められず、インドが同点に追いつきます。

同点に追いつかれたマレーシアは20分、ダレン・ロック(サバFC)がインドDFニヒル・プージャリにペナルティエリア内で倒されてPKを得ると、これをアリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジムFC)が決めて逆転に成功します。さらに42分にはファイサル・ハリム(スランゴールFC)が相手DFからボールを奪うとそのままドリブルで持ち込みゴールを決め3-1とし、前半で2点をリードして前半を終えます。

後半に入るとペースを挙げたインド代表は51分には39歳のベテランFWスニル・チェトリが自身が持つ代表最多得点記録を83に更新するゴールを決めて、インドが同点に追いつきます。さらに56分にはマレーシアペナルティエリア内での混戦からインドのFWラリアンズアラ・チャンテのシュートが決まったようにも見えましたが、主審の判定はノーゴール。インドの選手たちが激しく抗議するも得点は認められません。

1点差のまま試合が進む中、マレーシアは61分にファイサル・ハリムがインドペナルティエリア内で切り返すと、ゴール前でフリーとなっていたコービン=オング選手へパス。これを難なく決めたコービン=オング選手の代表4ゴール目でリードを2点に広げたマレーシアが最後まで続いたインドの猛攻に耐えて、4万を超える大観衆の応援もあり無敗記録を7に伸ばすとともに、明日10月17日のタジキスタンとのムルデカ大会決勝に駒を進めています。

2023年10月13日@ブキ・ジャリル国立競技場
マレーシア代表 4-2 インド代表
⚽️マレーシア:ディオン・クールズ(7分)、アリフ・アイマン(20分)、ファイサル・ハリム(42分)、ラヴェル・コービン=オング(61分)
⚽️インド:ナオレム・マヘーシュ・シン(13分)、スニル・チェトリ(51分)
🟨マレーシア(1):アリフ・アイマン
🟨インド(0)

この試合のハイライト映像。インドサッカー協会の公式YouTubeチャンネルより

敗れたインド代表監督は試合後の会見で不満爆発

FIFAランキング134位のマレーシア代表に敗れた同102位インド代表のイゴール・シュティマツ監督は、敗れた悔しさもあるでしょうがホストのマレーシアサッカー協会FAMに対して、様々な苦言を呈しています。「マレーシア入り後、2度練習したが、まずその練習場までへの移動では毎日1時間30分以上もホテルでバスを待たされた。練習場としてあてがわれたグラウンドは泥だらけで、その状態の悪さから4名の選手が負傷した。招待チームに対して適切な練習設備とそこへの手配を用意するのはホストの務めであり、招待チームを不快にするような対応は、ムルデカ大会のような大きな大会で行われるべきではない。」

またシュティマツ監督は、試合当日のブキ・ジャリル国立競技場のピッチに対しても不満をぶつけています。「試合は両チームが良いサッカーを見せ、スタジアムは素晴らしいが、ピッチの状態だけはあまりにも酷い。我々はさらに良いプレーを見せたかったが、ピッチの状態は酷すぎた。走ることも、止まることも難しい上、選手もケガを恐れていた。」述べています。改修工事に伴い、それまでのカウグラス(ムラサキツメクサ)から高麗芝のゼオンゾイシアに張り替えられたばかりのピッチは、実際に試合中もピッチの一部があちこちでめくり上がったり、剥がれてしまうなど決して良いピッチとは言えない状況でした。

また56分の「幻のゴール」についてシュティマツ監督は、「ゴール付近にいた選手が嘘をついているとは思えない。ボールがゴールラインを完全に越えたのは明らかだ。」と述べたものの、集まったマレーシアメディアに対してマレーシアが決勝へ進出の喜びを台無しにしたくないので、これ以上は離さない。」とそれ以上のコメントを拒否しています。

勝ったマレーシア代表監督は試合結果に満足

インド代表のシュティマツ監督の指摘を受けるまでもなく、この日のブキ・ジャリル国立競技場のピッチは劣悪でした。勝利したマレーシア代表のキム・パンゴン監督は、前日10月12日に行われた前日練習で同様の状況を目撃していたと話しています。今年1月の代表戦を最後に改修工事に入っていたブキ・ジャリル国立競技場は前日10月12日にお披露目なっていましたが、張り替えられた高麗芝のゼオン・ゾイシアが根付くには時間が明らかに足りていませんでした。

「新しい芝が根付くには時間がかかるのは当然で、我々はこうなることを予想していた。」と試合後の記者会見で話したキム監督は、ピッチについてはそれ以上触れず、試合を総括しています。「守備に関してはもう少し厳しく行けたはずだった。特に攻撃に注力している際には、守備が手薄になったが、そこが現在のチームの課題だと考えている。しかし、守備に重きを置けば試合はおそらく0-0で終わっていただろう。失点したくなければ、守備を固めれば良いが、このチームはそういった試合をすることを身座していないので、リスクを覚悟で攻撃に注力したが、その結果が4得点、2失点という形になった。私個人としては多くのことが学べ、何が課題かも分かったので満足している。」と述べています。

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勝利で口も滑らかなキム監督ですが、事前にピッチの状況がわかっていた、という部分が気になります。根付いていない芝が剥がれれば、止まれるはずのところで止まれなかったり、踏ん張りが効かなかったりして筋肉を伸ばしてしまう可能性があります。また芝が離れた後の穴に足を取られるという危険性もあったはずです。選手たちも状況は共有していたと思いますが、一歩間違えればケガの恐れもあるこのピッチの状況を知っていながらこの日の試合を行うことの判断が正しかったのかどうかは、個人的には理解できない点です。

サッカー協会-明日のムルデカ大会決勝は予定通りブキ・ジャリルで開催

マレーシア代表がインド代表を破った試合結果以上に、ブキ・ジャリル国立競技場の劣悪なピッチが注目を集めてしまった今年のムルデカ大会ですが、マレーシアサッカー協会FAMは、明日10月17日に予定されている決勝について、予定通りブキ・ジャリル国立競技場で行うことを正式に発表しています。

FAMはノー・アズマン・ラーマン事務局長名で公式声明を発表し、ブキ・ジャリル国立競技場のピッチの再評価を行った結果に基づき、現状は試合を行うのに適しているとの判断から、マレーシア代表対タジキスタン代表との決勝戦は予定通りブキ・ジャリル国立競技場で行われるとしています。さらに10月13日のインド代表との試合ではピッチの状況は好ましいものでは無かったとしながらも、ブキ・ジャリル国立競技場を運営するマレーシア・スタジアム社が17日の決勝戦までに状況を改善するだろうともしています。

関係者全員が決勝戦のブキ・ジャリル国立競技場開催で合意しており、キム・パンゴン監督もピッチを視察し、ピッチはプレー可能な上、チームの勢いという点からも試合会場変更は望まないとして、ブキ・ジャリル国立競技場での開催に同意しているということです。

声明でノー・アズマン事務局長は、決勝戦のブキ・ジャリル開催の決定は様々な要因によるものでもあると説明しています。既に1万枚以上のチケットが売れており、それだけの観衆を収容できるスタジアムで使用できるところがクアラルンプールを中心とした首都圏では空いていないことを挙げ、ブキ・ジャリル国立競技場が改修工事中に代表戦を行ったスルタン・イブラヒムスタジアム(ジョホール州)やスルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州)へ試合会場を移した場合には、首都圏に住み、チケットを購入した多くのサポーターにとって観戦が困難になると説明しています。

インド代表戦後には、その劣悪なピッチ状況を心配したジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が、JDTのホームであるスルタン・イブラヒムスタジアムをブキ・ジャリル国立競技場に代わるムルデカ大会決勝の試合会場として提供する用意があると発言していました。

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現在の代表チームの目標は40年ぶりに出場する来年1月のAFCアジアカップで、それまでの代表チームの活動は全てこのアジアカップから逆算されるべきです。今回の件に関して、代表選手たちからの声は全く報じられていませんが、ピッチの状態が憂慮されるブキ・ジャリル国立競技場で試合を強行した結果、それ原因で選手にケガ人でも出れば、感傷的価値しかないムルデカ大会優勝を目指した大きなツケ

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