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マレーシアカップ1回戦
ファーストレグ結果とハイライト映像(1)

8月3日から1回戦が始まったマレーシアカップ。第1回大会(当時の名称はマラヤカップ)が開催されたのはこの国がマラヤと呼ばれ、まだ英国の植民地だった1921年、年号で言えば大正10年でした。同じ1921年に第1回大会が開かれたサッカー天皇杯とともにアジア最古のカップ戦として知られるマレーシアカップは、開催当初は各州代表チームによる対抗戦として始まった経緯もあり、郷土のチームをサポーターが熱狂的に応援する様子はさながら高校野球の甲子園大会を思わせます。1942年から1947年までは日本による英領マラヤ占領により休止に追い込まれたこともあり、今年2023年の大会は第97回大会となっています。

このマレーシアカップは、これまではリーグ戦終了後に行われ、1部スーパーリーグの上位11チームと2部プレミアリーグの上位5チームの合計16チームによって争われてきましたが、今季はスーパーリーグとプレミアリーグの統合によりスーパーリーグが14チーム編成となったことに加え、プレミアリーグが休止となったことから、今大会はスーパーリーグの全14チームと、3部リーグにあたるM3リーグで現在首位のKLローヴァーズFCと2位ハリニ・スランゴールFCの2チームの合計16チームが参加します。なお大会のフォーマットは1回戦から準決勝まではホームアンドアウェイ形式で行われ、決勝のみが一発勝負となっています。

マレーシアカップ20231回戦ファーストレグ
2023年8月3日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
観衆:2,100人
PDRM 1-4 スランゴール
⚽️PDRM:ハディ・ファイヤッド(25分)
⚽️スランゴール:エイロン・デル・ヴァイエ2(57分、64分)、ハリス・ハイカル(74分)、ヨハンドリ・オロスコ(90+1分)
🟨PDRM:ファディ・アワド、アミル・サイフル・バデリ
🟨スランゴール:ファズリ・マズラン、アリフ・ハイカル
MOM:エイロン・デル・ヴァイエ(スランゴール)

 いずれもMBPJスタジアムをホームとする両チームの対戦は、立ち上がりからスランゴールが押し気味で進む中、先制したのはPDRMでした。25分に鈴木ブルーノ選手が放ったシュートがゴールポストに当たると、そこに詰めていたハディ・ファイヤッドがこのボールを押し込んでゴール。Jリーグ岡山からマレーシアへ復帰し、期限付き移籍でPDRMへ移ってきたハディ選手とMリーグのベテラン鈴木選手のツートップが絡んだ日本人にとっては胸熱のゴールでPDRMが先制し、そのリードを保ったまま前半が終了します。
後半に入ると57分にブレンダン・ガンの右サイドからのクロスにエイロン・デル・ヴァイエがPDRMのDFに競り勝って同点ゴールを決めると、さらにその7分後には見事なバイシクルキックから逆転ゴールを決め、その後はマークが甘くなったPDRM守備陣を嘲笑うかのようにハリス・ハイカル、ヨハンドリ・オロスコがそれぞれゴールを決め、終わってみれば、出場停止処分のファイサル・ハリム不在を感じさせないスランゴールが4-1と圧勝しています。なお7月29日のスーパーリーグ第18節ジョホール・ダルル・タジム(JDT)戦では18分に自陣ゴール前の接触プレーにより負傷し途中退場したスランゴールFCのFWリッチモンド・ボアキエは、その後の診断で脳震盪を起こしていたことが判明しましたが、この日は先発に名を連ねてフル出場するなど、大会最多の33回優勝を誇るスランゴールが、2015年以来の優勝に向けて好スタートを切っています。
PDRMの鈴木ブルーノ選手は先発して66分に交代しています。

マレーシアカップ20231回戦ファーストレグ
2023年8月3日@ペラスタジアム(ペラ州イポー)
観衆:4,088人
ペラ 3-1 クダ・ダルル・アマン
⚽️ペラ:ルシアノ・ゴイコチェア(48分PK)、ルカ・ミルノヴィッチ(55分)、ハキミ・マット・イサ(86分)
⚽️クダ:マヌエル・オット(1分)
🟨ペラ:サンディ・アフォラビ
🟨クダ:マヌエル・イダルゴ
🟥クダ:ロドニー・ケルヴィン
MOM:ルカ・ミルノヴィッチ(ペラ)

 これがまさにカップ戦の醍醐味。リーグ戦では3勝4分11敗の11位のペラが4位のクダに快勝しています。
開始1分もしないうちに得たコーナーキックからマヌエル・オットのヘディングシュートで先制したクダは、その後は追加点を奪えず1点リードのまま前半を終了します。
後半に入ってもクダが攻め込む展開ながら、ペラはそこからのカウンターが徐々に機能し始めた48分、自陣ゴール前でクダのDFボヤン・シーゲルがハンドの反則でペラにPKを与えてしまいます。このPKをキャプテンのルシアノ・ゴイゴチェアが決めてペラが同点に追いつくと、55分には新加入のFWルカ・ミルノヴィッチが加入後初ゴールを決めて逆転します。反撃したいクダでしたが、61分にはペラFWソ・ソンウンとのボール争いに苛立ったクダDFロドニー・ケルヴィンがソ選手を倒し、さらにその頭を蹴って1発レッドで退場となると、数的不利になったクダは逆にペラに追加点を許してしまい敗れています。

マレーシアカップ20231回戦ファーストレグ
2023年8月3日@シティスタジアム(ペナン州ジョージ・タウン)
観衆:1.201人
ペナン 0-4 KLシティ
⚽️KLシティ:チェチェ・キプレ2(4分、26分)、ザフリ・ヤハヤ(31分)、ロメル・モラレス(84分)
🟨ペナン:ウスマン・ファネ、ラファエル・ヴィトール、A・ナマテヴァン
🟨KLシティ:セバスチャン・アヴァンジーニ、ライアン・ランバート、ケヴィン・メンドーザ、ハキミ・アジム
MOM:パウロ・ジョズエ(KLシティ)

 2021年のマレーシアカップチャンピオンのKLシティが敵地で圧勝しています。
ボヤン・ホダック監督がインドネシア1部のプルシブ・バンドン監督就任のため退団し、後任のネナド・バチナ監督がまだマレーシア入りしていないKLシティは、この日もミロスロフ・クルヤナッチ コーチが指揮を取っていますが、スタメン復帰したパウロ・ジョズエが監督不在を感じさせないプレーでチームを鼓舞し、チームも試合開始からペナンを圧倒し前半だけで3ゴールを挙げて圧勝しています。
ペナンは新戦力のFWアブドル・アブディーン・テミトープも不発で良いところなく敗れています。

マレーシアカップ20231回戦ファーストレグ
2023年8月4日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
観衆:495人
KLローヴァーズ 0-4 トレンガヌ
⚽️トレンガヌ:イヴァン・マムート3(18分、45+1分、67分)、エンカウ・シャキル(51分)
🟨KLローヴァーズ:ラフィ・マット・ヤアコブ、イクマル・イドリス
🟨トレンガヌ:なし
MOM:イヴァン・マムート(トレンガヌ)

 M3リーグ首位のKLローヴァーズは開幕から14連勝中。今季のスーパーリーグで7位のトレンガヌに対してどのようなプレーを見せるのかに注目が集まりました。元代表MF R・ゴピナタン、元U23代表らが所属しているものの、外国籍選手はおらず、選手の大半は大学生やフードデリバリー配達員などアマチュア選手で構成されているKLローヴァーズのワン・ムスタファ監督は、試合前記者会見ではいわゆる「バスを停める」戦術で臨むことを明言していました。
かつてのKLシティFCのような白赤の斜めストライプのユニフォームを着用したKLローヴァーズですが、バスを停めても、トレンガヌの猛攻に持ち堪えられたのは17分まででした。それまでスーパーセーブを繰り返してチームの窮地を救っていたKLローヴァーズのGKアメルル・イクワンでしたが、18分にソニー・ノルデのパスを受けたイヴァン・マムートのシュートが決まり、トレンガヌが先制すると、前半終了間際にも相手ミスからマムート選手がゴールを決めて、トレンガヌが2-0としリードして前半を折り返します。
後半に入ってもトレンガヌがマムート選手がハットトリックを達成するなど、シュート数はトレンガヌの28本(枠内8本)に対してKLローヴァーズは4本(同0本)と、むしろKLローヴァーズの失点が4点で済んで良かったと思えるような試合でした。

マレーシアカップ20231回戦ファーストレグ
2023年8月4日@スルタン・ムハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
観衆:1,700人
クランタン 1-5 ジョホール・ダルル・タジム
⚽️クランタン:カライフ・ナスカム(85分)
⚽️ジョホール:ベルグソン・ダ・シルヴァ(6分)、ヘベルチ・フェルナンデス2(15分、24分)、シャールル・サアド(50分)、ナズミ・ファイズ(67分)
🟨クランタン:レオナルド・ロロン、ハフィザン・ガザリ、ユスリ・ユハスマディ
🟨ジョホール:オスカル・アリバス
MOM:フェロズ・バハルディン(ジョホール)

 給料未払いにより新規選手獲得禁止処分を受けていたクランタンは、数日前にこの処分を解除され、すぐさま新外国籍選手獲得を発表したものの、この試合には間に合わず、外国籍選手はナサニエル・シリンゴ・リンゴ(インドネシア)とレオナルド・ロロン(アルゼンチン)のFW2名だけ、さらにマレーシア人選手も多くと契約を解除し、先発XIの半数以上がU23チームからの昇格、ベンチの選手も合わせると20名中14名がU23やU18チームからの昇格組で占められており、ジョホール相手には明らかに役不足でしたが、試合結果もその通りの散々なものになっています。
ジョホールでは新加入のヘベルチ・フェルナンデスがリーグ戦デビューとなった7月29日のスランゴール戦に続いてゴールを挙げ、ケガで離脱中のフェルナンド・フォレスティエリやジオゴの穴を埋めて余りある活躍を見せています。ケガで今季絶望と言われるレアンドロ・ヴェラスケスに代わっては邦本宜裕選手の獲得も噂されており、マレーシアカップ連覇へ向けて死角なしです。

マレーシアカップ20231回戦ファーストレグ
2023年8月4日@トゥンク・アブドル・ラーマンスタジアム(ヌグリスンビラン州パロイ)
観衆:161人
ハリニ・スランゴール 2-3 スリ・パハン
⚽️ハリニ:フィクリ・シャー(59分)、ノーシャルル・イドラン・タラハ(74分)
⚽️スリ・パハン:デヴィッド・ローリー(20分)、シャズワン・アンディク(54分)、バキウディン・シャムスディン(90+2分)
🟨ハリニ:フィクリ・シャー、ノーシャルル・イドラン・タラハ
🟨スリ・パハン:アズリフ・ナスルルハク、マイケル・グラソック
MOM:K・ルーベン(ハリニ・スランゴール)

 こちらはカップ戦の怖さが出た試合と言えるかも知れません。リーグ4位のスリ・パハンが3部M3リーグ2位のハリニ・スランゴールにロスタイムのゴールで辛勝。
前半を1−0、後半にも1点を追加して2-0とリードしたスリ・パハンに対し、ハリニはマレーシア代表で80試合以上出場し14ゴールを挙げているノーシャルル・イドラン・タラハのゴールなどで追いつき、あわや引き分けかと思われたロスタイムにスリ・パハンがバキウディン・シャムスディンのゴールで勝ち越しています。

マレーシアカップ20231回戦ファーストレグ
2023年8月5日@スルタン・ムハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
観衆:194人
クランタン・ユナイテッド 0-1 ヌグリスンビラン
⚽️ヌグリスンビラン:ショーン・セルヴァラジ(29分)
🟨クランタン:アリフ・アル=ラシド
🟨ヌグリスンビラン:エラルド・グロン
MOM:シーク・イズハン(ヌグリスンビラン)

 リーグ9位のヌグリスンビランが1、リーグ2位で今季未だ1勝のクランタン・ユナイテッドにこちらも辛勝しています。29分にショーン・セルヴァラジのヘディングシュートが決まり先制したヌグリスンビランですが、むしろ試合の主導権はクランタン・ユナイテッドが握りながら進みました。リーグ戦ではアイルトン・シルヴァ監督就任以降2分2敗の成績ですが、この試合ではトランスファーウィンドウで獲得したDFアズルル・ナズリスと共にトレンガヌから期限付き移籍したMFファイズ・ナシルが良い動きを見せるなど、僅差で敗れたもののクランタン・ユナイテッドにとっては、セカンドレグに期待が持てる試合展開でした。
リーグ戦から得点力不足が課題のヌグリスンビランは、スランゴールから期限付き移籍で獲得したミャンマー代表FWハイン・テット・ウアン、同時に2チームで加入が発表されて話題になったユセフ・エゼジャリの両FWを後半から投入したものの追加点が奪えず、この試合のMOMとなったシーク・イズハンが好セーブを連発したおかげで最小得点での逃げ切りに成功しましたが、ホームでのセカンドレグも厳しい戦いになりそうです。

マレーシアカップ20231回戦ファーストレグ
2023年8月5日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
観衆:763人
クチンシティ 0-3 サバ
⚽️サバ:ラモン・マシャド2(4分、7分)、ダニエル・ティン(15分)
🟨クチンシティ:アブ・カマラ、ペドロ・エンリケ、アミル・アムリ、ラメシュ・ライ
🟨サバ:リザル・ガザリ
MOM:ラモン・マシャド(サバ)

 いずれも東マレーシア(ボルネオ島)に本拠地を持つ両チームによる「ボルネオダービー」は、現在のスーパーリーグでのチーム状態を反映するかのようにリーグ5位のサバが開幕戦以来勝ち星がない11位のクチンシティに快勝しています。
先週、クチンシティの監督に就任が発表されたばかりのアイディル・シャリン新監督にとっては就任後初の試合でしたが、先手を取ったのはサバでした
リーグ戦4試合で4ゴールを挙げている新加入のラモン・マシャドがこの試合でも開始4分に強烈な右足のシュートで先制ゴールを決めると、さらに7分には左サイドを上ったコ・グァンミンのクロスを頭で合わせて追加点となる2ゴール目を挙げ、立ち上がりからクチンシティに落ち着く時間を与えません、さらに15分にはクチンシティDFの中途半端なクリアボールを拾ったダニエル・ティンのゴールが決まり、試合開始から15分で3−0とリードし、前半はこのまま終了します。
後半に入るとペースダウンしたサバに対し、この試合がクチンシティで初采配となるアイディル・シャリン監督もヌルシャミル・アブドル・ガニやペドロ・エンリケなど次々とFWを投入しますが、ゴールには至らず、サバがクチンシティを完封しています。
クチンシティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

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