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「新生」代表がカンボジアに4-0で勝利
-代表初招集の帰化選手が2ゴールと躍動

今月12月20日に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに向けて、出場各チームとも練習試合を精力的に行なっています。昨日12月11日には、三菱電機カップのグループステージでマレーシアと同じB組のミャンマーがタイに0-6で敗れ、ラオスがタイU23代表に1-0で勝利、また西ヶ谷隆之監督率いるシンガポールは12月1日から日本で合宿を行なっており、昨日は流通経大と、その前にはJ3のYSCC横浜とも練習試合を行っています。そしてB組で最も強いベトナムも11月30日には東南アジア遠征中のボルシア・ドルトムントに2-1で勝利するなど、「東南アジアのワールドカップ」に向けて着々と準備を進めています。

そんな中、マレーシアは12月9日にカンボジアと練習試合で対戦しました。AFF選手権はFIFAの酷愛マッチカレンダー期間外ということもあり、今季国内リーグ9連覇を果たし、さらに2つのカップ戦でも優勝して国内三冠を達成したジョホール・ダルル・タジムJDTからはケガや家庭の事情などを理由に代表主力選手9名が招集を辞退しており、今季ここまで9試合を戦ってきた代表とは選手の顔ぶれも大きく変わっています。

この日の先発XIはGKカラムラー・アル=ハフィズ(クダ)、クザイミ・ピー(ヌグリスンビラン)、シャルル・ナジーム(スランゴール)、アザム・アズミ(トレンガヌ)が3バックを構成し、中盤はF V・ルヴェンティラン(PJシティ)、スチュアート・ウィルキン(サバ)、デヴィッド・ローリー(スリ・パハン)、シャミー・イスズアン(サラワク・ユナイテッド)の4選手、そして前線がファイサル・ハリム(トレンガヌ)、ダレン・ロック(サバ)、リー・タック(スリ・パハン)という布陣でした。

この日は試合前からの雨でピッチの一部にも水が浮くコンディションながら、それにうまく対応したマレーシアが、キャプテンマークをつけて先発したファイサル・ハリムが11分に先制ゴールを決めて先制します。38分には英国生まれながら今年、マレーシア国籍を取得し、今回初めて代表に選出されたリー・タックがデビュー戦で代表初ゴールを決めて2-0、さらに前半終了間際にはファイサル・ハリムがこの試合2得点目となるゴールを決めて、前半を3-0で折り返します。後半には、やはり代表初招集となったMFスチュアート・ウィルキン(サバ)が86分に4点目を決めて、FIFAランキング146位のマレーシア代表が廣瀬龍監督率いる同177位のカンボジアに勝利しています。

マレーシアは12月14日にモルジブ代表との練習試合を行った後、12月21日にはAFF選手権グループステージ初戦となるアウェイのミャンマー戦に臨みます。

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前述の通り、JDTの主力が招集を辞退した今回の代表チームでは、本来なら出場機会を得られない多くの選手にチャンスが巡ってきています。これまで代表に召集されながらも、ポジション的な問題もあり出場機会に恵まれなかったカラムラー・アル=ハフィズは初先発を果たした他、スチュアート・ウィルキン、デヴィッド・ローリー、シャミー・イスズアン、リー・タックが代表初招集初先発を果たし、途中出場の18歳MFアリフ・イズワン(トレンガヌ)、アルゼンチン出身でやはり今年マレーシア国籍を取得したエセキエル・アグエロ(スリ・パハン)と、この試合では7名の選手が代表デビューを果たしています。

そんな中、注目を集めているのは34歳のリー・タックと26歳のエセキエル・アグエロの両選手です。いずれもMリーグで5年間プレーし、FIFAの帰化選手登録要件を満たしたことから、今年9月にマレーシア国籍を取得しています。この国籍取得までの期間は、所属するスリ・パハンが既にMリーグで規定される上限となる5名の外国籍選手を登録していたため、2月から11月まで行われたリーグ戦は出場できなかった両選手ですが、マレーシア国籍を取得したことで、マレーシアカップからは国内選手として登録されると、キム・パンゴン監督が早速、代表に招集しています。

現在、マレーシアにはタック、アグエロ選手を含めて5名の帰化選手がいます。ガンビア出身のモハマドゥ・スマレ、ブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラ、コソボ出身のリリドン・クラスニキの3選手は、いずれも所属するJDTでは先発ポジションを獲得できておらず、特にマレーシアフットボール協会FAMが代表チーム強化を目的として帰化支援プログラムを経てマレーシア国籍を取得したデ・パウラ、クラスニキ両選手は代表どころか、所属するJDTのトップチームでも出場機会が得られていません。このことから、代表チームに貢献できない選手の帰化支援には非難の声が上がり、FAMは昨年8月に帰化支援プログラムを一時中断することを発表しています。

しかし、その一方でFAMはMリーグ各クラブが独自に帰化支援を行うことは禁止せず、その結果が今回のタック、アグエロ両代表選手の誕生につながっています。この他、KLシティはコロンビア出身のFWロメル・モラレスとブラジル出身のMFパウロ・ジョズエを、またJDTはブラジル出身で今季はペナンでプレーしたMFエンドリックの帰化支援を行うとしています。この他、マレーシア人の父母あるいは祖父母を持つことで帰化している「ハイブリッド帰化選手」も増えており、この日のカンボジア戦では、オーストラリア出身のデヴィッド・ローリー、いずれも英国出身のスチュアート・ウィルキンとダレン・ロックが先発、ベンチにもブレンダン・ガン、クェンティン・チェン(いずれもセランゴール)、ドミニク・タン(サバ)らがこのハイブリッド帰化選手です。Mリーグまで目を広げれば、このハイブリッド帰化選手はまだまだいるので、将来はマレーシア出身ではないマレーシア人選手によるマレーシア代表チームができるかも知れません。

2022年12月9日
国際親善試合@ブキ・ジャリル国立競技場
マレーシア 4-0 カンボジア
⚽️マレーシア:ファイサル・ハリム2(11分、45分)、リー・タック(38分)、スチュアート・ウィルキン(86分)

下はこの試合のハイライト映像(マレーシアサッカー協会FAM公式YouTubeチャンネルより)

 

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