フットボール タイランド

神戸がタイ代表DFティーラトンの退団を発表。チャナティップ大活躍でもJリーグにタイ人が増えない理由とは?【日泰移籍情報】

神戸退団が発表されたタイ代表DFティーラトン

「Jリーグでプレーする事が僕の夢でした」

J1のヴィッセル神戸は28日、DFティーラトンの期限付き移籍満了による退団を発表した。タイリーグのムアントン・ユナイテッドから2018年シーズン開幕前に加入したタイのトップ選手であるティーラトンは、J1リーグで28試合に出場。持ち前の精度の高い左足のクロスはJリーグの舞台でも威力を見せた。

同選手は、神戸の公式サイトにて以下のようにコメントしている。

Jリーグでプレーする事が僕の夢でした。この夢を叶えてくれたのはヴィッセル神戸。夢を、チャンスを与えてくれた事は心から感謝してます。少しでも恩返ししたいと思い、日々のトレーニング、試合に出るたびに自分のベスト尽くそう思いました。 この一年間はチームとして良い時も悪い時もありましたが、僕にとって全てが意味のある一年間でした。

この一年間は自分を知る事が出来て、新しい事も学べました。神戸でサッカーだけじゃなく、人生経験を積むことが出来たのは僕の宝物です。最後に監督、コーチ、スタッフ、チームメイト、ヴィッセル神戸のサポーターの皆さまへ、いつも僕をサポートして頂き、ありがとうございました。心から感謝しています。

もうヴィッセル神戸でプレー出来ないですが、ヴィッセル神戸のサポーターの一人として、これからも応援し続けます。いつの日か、ヴィッセル神戸に帰って来られたら…その時はまたよろしくお願いします。ヴィッセル神戸は僕の原点です。ありがとうございました。

なぜJリーグにタイのトップ選手は増えないのか?

タイ人選手のJリーグ参戦が本格化した2018年シーズン。MFチャナティップがJ1北海道コンサドーレ札幌を4位に導く活躍でJリーグベストイレブンに選ばれて強烈なインパクトを残したのをはじめ、FWティーラシン、DFティーラトンもそれぞれサンフレッチェ広島と神戸で貴重な戦力となった。これら3選手はいずれもタイ代表の中心選手だが、タイのトップ選手であればJ1の舞台でも輝けることをはっきりと証明した。

とりわけチャナティップがJリーグに与えた衝撃の大きさを考えれば、「提携国枠」で外国人扱いされないタイ人選手は来季に向けて増加してもよさそうなもの。だが、今のところそういった気配は感じられない。ティーラトンと同様にティーラシンもJリーグに残る可能性が高い状況とは言えず、FC東京U-23のジャキット、セレッソ大阪U-23のチャオワットもそれぞれレンタル元のバンコク・ユナイテッドとBGパトゥム・ユナイテッドへの復帰が発表された。現状、来季のJリーグでプレーすることが決まっているタイ人選手は、札幌のチャナティップとJ2徳島ヴォルティス入りが発表されたMFチャキットの2選手のみだ。

FC東京のジャキット、セレッソ大阪のチャオワットに関してはそれぞれタイリーグクラブとのクラブ間提携が背景にあるため例外と言えるが、タイのトップ選手がJリーグに増えない、あるいは定着しない理由として漏れ伝わってくるのはいずれも「金銭面で折り合いがつかない」というもの。タイ人選手のサラリーやタイのクラブが要求する金額が高額であるため、交渉が難航するケースが目立っている。このオフも早くからタイ代表の中盤を支えるMFティティパン・プアンチャンのセレッソ大阪移籍が噂されながら、現在のところ契約には至っていない。

Jリーグの「アジア戦略」によって東南アジア出身のJリーガーが生まれるようになったが、タイ人よりも先に日本へやってきたのはベトナムやインドネシア出身の選手たちだった。東南アジア最強国で才能の宝庫であるタイの選手が真っ先にやってこなかったのも、同様に金銭面の理由が大きかった。他の東南アジア諸国に先駆けて経済と国内リーグの発展を遂げていたタイではトップ選手のサラリーがすでに高額になっており、ムアントン・ユナイテッドから札幌に期限付き移籍で加入したチャナティップにしても年俸はダウンしての挑戦だった。

タイ代表クラスの選手たちはいずれもJ1で戦力となれることを十分に証明しながらも、タイのクラブ側が提示する買取条件をクリアして完全移籍が成立したのは現在のところチャナティップのみ。チャナティップほどの突き抜けたパフォーマンスを見せない限り、タイのトップ選手がJリーグに定着するのは難しい状況が続いている。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ