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松本国際中が進める6年計画。1期生最終年、浸透するスタイル ※無料

いまや高校サッカーのトレンドとなっている『6年計画』。中高一貫で育成する例もあれば、街クラブと高校がタッグを組む例もある。

長野県内においても、前者の計画を進めているチームが存在する。松本国際だ。

少人数での創部3年。県制覇逃すも成長

創造学園時代からサッカーに力を入れ、昨季は全国高校サッカー選手権に5回目の出場。1回戦で米子北(鳥取)に1-2と敗れるも、優勝候補を相手に善戦した。一昨年の春には、新たに中学が開校。サッカー部は1期生13名を迎え、内部進学を見据えた6年計画が始まった。

1年生のみで臨んだ1年目は、県中学新人大会(新人戦)の中信大会で優勝。さらに全国区のチームと練習試合を組むなどして、鍛錬を積んできた。その後は中学総体(インターハイ)での県制覇を目指したが、2年目は中信大会の1回戦で敗退。3年目となる今季は、中信大会を制して初の県大会に進む。1回戦で南佐久合同チームに7-0と大勝したが、2回戦で優勝校の戸倉上山田中に敗れた。

前半から押し気味に進めるも、後半開始早々に失点。強風が吹き荒れる中、なんとか同点に追いついたが、勝ち越しとはならず。60分間を1-1で終え、PK戦の末に4-5と敗れた。1年時からキャプテンを務める飯ヶ浜咲介は「初戦に大差で勝って、良い流れはあった。ちょっとした油断だったり、決め切るところだったり…。ほんの少しの差があったと思う」と唇を噛む。

飯ヶ浜咲介

1期生としては最後のトーナメント。県制覇とはならなかったが、竹野入潔監督は全員で守ってくる相手に対して、魂でよく取り返してくれた」と選手たちをねぎらう。育成と結果の両立は、私立校の宿命でもある」。結果こそついてこなかったが、まだ6年計画の3年目。高校での勝負に向けて、一定の成果も表れているようだ。

「3年生は人間的にも成長してくれた。1年生の面倒をすごく見てくれるし、1年生が3年生と肩を組むこともある」と指揮官。3学年を合わせて21名と少人数だが、飯ヶ浜は「その分チーム力がある。最初は先輩がいない中で始まったけど、学校でもサッカーでもずっと一緒なので、意思疎通が取れていた。いまも先輩とか後輩は関係なく、みんな仲が良い」と利点を挙げる。

それだけではない。中信リーグ2部Aには、21名全員が参加。前後半で学年ごとに入れ替えたり、混合したりしながら、必ず全員に出場機会を与える。「公式戦は紅白戦とは違う。苦しいときとか負けるときもあるけど、1年生にも成長の場を与えたい。3年生にはそれを補ってもらっている」。そう指揮官は意図を示す。メンバーを大幅に入れ替えながらも、現在は5試合を残して首位。中信1部への昇格が見えてきた。

“松国スタイル”を優位性に、高校年代へ

ベースとなるのは、“松国スタイル”だ。「ボールをどう動かして、どう相手を動かすか。常に背後を狙いながら、奪われたらすぐに守備をする」と竹野入監督は話す。いわば、自分たち主導のサッカー。それに強度やスピードを備えるべく、週に1回、高校1年生との合同トレーニングを実施している。それによって「高校生のスピード感を味わっているので、プレーに少し余裕が生まれている」。

全国区のチームとの練習試合も、創部当初から継続している。「県外のチームは県内と比べてスピードが違う。それはただのスピードではなくて、プレーだったりプレッシャーの速さ。最初はボールも触らせてもらえないくらいだったけど、だんだん点差が縮まってきた」と飯ヶ浜。2年前に2ケタ得点差をつけられた相手に対しても、いまやシーソーゲームに持ち込めるようになった。

あくまで6年計画の道中であり、「高校に向けて何を学んでいくのか。体が小さい子が多いので、テクニック、人との関わり、ポジショニング、走るタイミング、オフ・ザ・ボールの動き…。そういうことを口酸っぱく言い続けている」と指揮官。それを3年間積み重ねてきた結果、「全国区の選手と同じくらいのアクションが取れるようになってきた」。

竹野入潔監督

高校には県内外の他チームからも選手が集い、100人を超える大所帯となる。その中で中学から上がってきた選手たちは、“松国スタイル”を3年間培ってきた優位性がある。あとはいかにアクションの基準を持ちながら、テクニックとフィジカルの水準を高めるか。3年目の残り半年で、引き続き鍛え上げていく構えだ。

そのための環境も整いつつある。8月上旬には学校専用の人工芝グラウンドが完成。従来は学校併設のソサイチ(7人制)サイズのコートで練習していたが、新たに11人制のコートが出来上がった。8月12日にはオープニングゲームとして、静岡学園中との練習試合を実施。高校生が優先的に使いながら、空いた時間に中学生も活用していく。

まだまだ環境が発展する余地はある。竹野入監督は高校のコーチに加え、中学年代の街クラブ・CLUB MKの代表も兼任。部活動の地域移行が進む中で、相互に連携する可能性も広がっている。

最初は誰も見向きもしてくれなかったが、気づいたら(1期生の)12人中10人が地域トレセンに入っている。そのうち3人は、県トレセンの練習会にも顔を出している。ほとんどの子がそのまま高校に上がってくれるようなので、6年間の成長を見届けられたら

1期生は来季、6年計画の4年目に突入する。カテゴリーこそ上がるものの、中学で培った優位性を踏まえれば、Aチームでの活躍も夢ではないだろう。

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