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3連戦ラストマッチ。ホームで連敗阻止し、砂森和也にエールを【J3第14節・鹿児島戦/マッチプレビュー】※無料

公式戦4連敗。幸いにも首位とは勝ち点4差で、内容も右肩上がりではあるが、一刻も早くこの状況を打破しなければならない。

今節は3連戦のラストマッチとなるホームゲームだ。先週末のホーム・FC琉球戦(●1-2)では、本拠2度目となる逆転負け。ミッドウィークの天皇杯2回戦・ヴィッセル神戸戦(●1-3)で出場機会の少なかった選手たちが躍動し、好材料を持ち帰って鹿児島ユナイテッドFC戦を迎える。連敗を止めることはもちろんだが、やむを得ずチームを離れた仲間のためにも、ここで必ず勝利しなければならない。

エースが復帰。連敗中のチームを鼓舞する

チームはアウェイでの神戸戦を終えて一泊したのち、翌日に長野へと帰還。ハードスケジュールを鑑みて、束の間のオフとなった。その翌日にトレーニングを再開し、遠征組はジョギングやサッカーバレーでリフレッシュ。居残り組は大ゴールを用いた2対2、4対4の対人トレーニングをこなす。

シュタルフ監督が4連敗の一因として挙げたのは、細部のクオリティ。「一人ひとりの質だったり寄せ、球際、ゲームコントロール…。そういったところが勝敗を分けるので、もっと突き詰めてやっていかないといけない」と話す。オフ明けの対人トレーニングでは、一つ一つの球際の強度にこだわった。神戸戦での控え組の活躍に刺激を受けてか、主力組やメンバー入りが叶わなかった若手のパフォーマンスが熱を帯びる。その一方で連敗中ということもあってか、フラストレーションを溜める選手も少なくなかった。

「あまり4連敗に足を引っ張られすぎてはいけない。見ての通り、選手はストレスが溜まっているが、そんなところにストレスを溜めずにやっていくのが大事」。そう指揮官が言えば、神戸戦でフィールドプレーヤーとして唯一出番がなかった船橋勇真も「連敗が続くとどうしても自信がなくなってくるし、人それぞれいろいろな想いがあると思う。神戸戦に出た選手は多少なりとも自信になっただろうし、逆に出ていなかった選手は結果で示さないといけない」と逆境もエネルギーに変える構えを示した。

サポーターが最も気になるのは、メンバー選考だろう。それはコンディション次第としか言いようがないが、過密日程下における不幸中の幸いもある。先に述べた控え組の躍動と、エースの復帰だ。ここまでチーム最多タイの4ゴールを挙げている進昂平は、第10節・松本山雅FC戦で負傷交代。相手と接触した際に腰を強打し、腰椎横突起骨折で全治4〜6週間と診断された。チームは彼がいない間、リーグ戦で3連敗。復帰が待望視される中、神戸戦で公式戦5試合ぶりのメンバー入りを果たし、73分から途中出場した。

「正直な話、急ぎではないけど、予定よりは少し早かった。そこはチーム状況もあるし、僕がいないからどうとかではなくて、ORANGE大使という役職にもついている。何かチームにパワーを与えないといけない立場ではあるので、早い復帰というのはプラスにしていけるようにやっていかないといけない」。ここで誤解してほしくないのは、無理を効かせたわけではないということ。指揮官が「過密日程の中で僕らはスタッフも大勢いるわけではないので、長野に残すとトレーニングも積めない状態だった。僕らは移動先でトレーニングをしていたので、それも含めて神戸戦に連れていった」と明かしたように、あくまで本格復帰に至るまでの過程にすぎない。

今節のメンバー入りは定かではないが、本人は「痛みとかはもうない。復帰した以上、そこに言い訳はしたくないし、チームのために戦うだけ。ゴールという結果と自分という存在が、チームにとってプラスのエネルギーを与えられるようにやらないといけない」と意欲を燃やす。コンディションが100%ではなくとも、エースの復帰が連敗中のチームを勇気づけることは間違いない。

相手の鹿児島は現在2位だが、直近2試合は未勝利。今季初の2戦連続無得点と、やや足踏みしている。それでも攻撃力はリーグ屈指。昨季リーグ3位タイの15ゴールを挙げた有田光希ですらベンチに居座るほど、アタッカーの層は厚い。昨季と同じく4-2-1-3の“マリノス式”で、ウイングが目一杯の幅を使い、サイドバックがインサイドを取ってくる。攻撃面のスタッツはいずれもリーグ上位だが、前線に枚数を割く分だけ後方は手薄。昨季のアウェイでの対戦(●1-4)を振り返ると、宮阪政樹のフィードから藤森亮志が右サイドの高い位置を突き、同点弾を決めている。長野としては直近2試合で成果が見られたビルドアップを継続しつつ、常にカウンターも狙っていきたいところだ。

ONE TEAMで砂森和也にエールを

公式戦4連敗とただでさえ苦しい状況の中、今節の2日前に悲痛なニュースが舞い込んだ。砂森和也が愛娘の急性白血病を受け、看病に専念するためチーム活動を休止。復帰時期については未定とされた。

今季鹿児島から加入した左サイドのスペシャリスト。2018年には沼津でJ3アシスト王に輝くなど、高精度の左足を誇る。昨季の鹿児島ではケガもありながら、左サイドバックを主戦場としつつ、チーム事情によってセンターバックも務めた。ピッチ内外でチームを牽引できる存在で、その姿勢は長野に来ても変わらない。

「(32歳と)年齢は重ねたけど、そこはもう関係ないというか、結果で示すしかない。若手に負けないようにやるし、吸収できる部分は吸収する。新しいチームで、新しい監督のもとで、まだまだ成長できると思っている。年齢とかベテランというくくりを外しながら、常に成長したい。そういう決意を持って長野に来た」。

直近5シーズンは24番を着用していたが、今季は「2倍頑張る」という意味を込めて48番を選んだ。キャンプから左ウイングバックを主戦場とし、攻撃時はボランチに入る可変システムにも挑戦。セットプレーのキッカーも担うなど万能さを発揮していた。開幕節のテゲバジャーロ宮崎戦では、「キャンプでは一回もやっていなかった」という左センターバックに抜擢。ビルドアップに安定感をもたらし、積極果敢なオーバーラップも見せるなど存在感を示したが、41分に無念の負傷交代となった。

その後は第4節・カターレ富山戦で復帰し、2試合連続で先発を飾るも、再びコンディション不良でリハビリへ。苦悩の期間が続く中、そこに追い打ちをかけるような出来事が起こった。第9節・いわてグルージャ盛岡戦への出場を最後に、家庭の事情でチームを離脱。今週半ばの6月15日、愛娘の急性白血病が理由であると発表された。

筆者が最後にインタビューをしたのは、ケガから復帰した富山戦の翌週。ホームデビューとなる第5節・Y.S.C.C.横浜戦を控えたタイミングだった。「開幕戦ではああいう形(負傷交代)になってしまったけど…。長野のサポーターはすごく熱いし、あのスタジアムでやりたいから来たというのもある。鹿児島もたくさん入るけど、長野はまた少し違った雰囲気がある。個人的にはすごく楽しみだし、期待してくれているサポーターに結果で恩返ししたい」。その言葉通り、YS横浜戦は1-0と辛くも勝利。砂森も84分まで出場し、ホーム初勝利に貢献した。

そんな彼の離脱は言うまでもなく、チームとしても痛手だ。シュタルフ悠紀監督は連敗が続く現状について、「進、佐藤、砂森と主力3人が欠けたのが、思った以上にチームの歯車を崩している」と吐露する。攻守両面でチームを落ち着かせられる砂森がいれば、この状況も変わっていたかもしれない。

活動休止までの間、ピッチに立ったのは4試合。そのうち3試合はアウェイで、ホームではまだ1回しかプレーしていない。今節は古巣・鹿児島とのホームゲームで、彼自身が一番楽しみにしていたはずだ。やむを得ずチームを離れた背番号48のためにも、残されたメンバーは真の『ONE TEAM』として戦わなければならない。ケガから復帰した進は「たくさんの人の想いを背負って戦わないといけない」と話したが、それには砂森の想いも含まれていることだろう。

筆者はFC東京が拠点を構える東京都小平市で生まれ育った。最後に、同クラブのアンセムとして知られるこの言葉を彼に贈りたい。

『You’ll Never Walk Alone』――君は一人じゃない。

 

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