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ボラセパマレーシアJPが選ぶマレーシアサッカー2022年重大ニュース-国内リーグとクラブ編

本来なら昨年末までにアップしておくべき記事でしたが、2023年につながる話題もあるのであえて新年早々の記事として掲載します。まずは国内リーグとクラブ編からスタートです。

ジョホールの一強時代はいつまで続くのか-ジョホールが国内リーグ9連覇と国内三冠達成に加えセカンドチームも2部で優勝

2022年シーズンも圧倒的な力を見せたジョホール・ダルル・タジム(JDT)が国内リーグ9連覇を達成、さらにFAカップではトレンガヌを、マレーシアカップではスランゴールを下して優勝し、クラブ史上初の国内三冠にも輝いています。

先月発表された2022年マレーシアリーグアウォードでも最優秀DF、最優秀MF、最優秀FW、そして年間MVPがいずれもJDTから選出されていることからもわかるように、JDTの主力選手は各ポジションで国内トップクラスの選手が集まっています。しかも、そのほぼ全員が代表チームでも主力であることから、JDTはいわばマレーシア代表に外国籍選手が加わったチーム編成。そりゃぁ強いに決まっています。しかも外国籍選手もリーグ新記録となる29ゴール、カップ戦なども合わせれば41ゴールと驚異的な数字を記録したベルグソン・ダ・シルヴァを筆頭にこれまた強力な布陣を揃えており、9連覇は順当な結果でもあります。オーナーでジョホール州の皇太子でもあるトゥンク・イスマイル殿下は、国内の有力選手を今後も獲得していくことを明言しており、2022年シーズンの最優秀GKを受賞した代表GKのシーハン・ハズミは今季所属したヌグリスンビランとの契約を更新していないことから、JDT入りが噂されています。
また2部プレミアリーグではJDTのセカンドチーム、JDT IIが2位に勝点差5をつけて優勝しています。トップチームで出場機会のないマレーシア代表の選手がプレーし、外国籍選手も自国に戻れば代表チームでプレーする、他のクラブならトップチーム入りも可能なレベルの選手が在籍する陣容は、プレミアリーグでも頭ひとつ抜けています。ここから来季はトップチーム入りする若手もおり、JDTの時代はまだまだ続きそうです。

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代表チームのクラブ化(JDTの場合はクラブの代表チーム化ですが)は代表チーム強化の近道ですが、それが諸刃の剣でもあることが露呈したのが、現在開催中の東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022です。この大会はFIFA国際マッチカレンダー期間外であることから、この大会に出場する代表チームに招集された選手のリリースは各クラブには義務付けられていませんが、これを理由にJDTから代表候補合宿に招集された13名(この数字もすごいですが)中、招集に応じたのはわずか2名で、残る11名が辞退する事態が起こっています。リーグ戦に加えて優勝したFAカップとマレーシアカップ、そして後述しますがACLと国内の他のどのクラブよりも試合をしているJDTの選手にとって、国内日程が全て終了した11月末から、来年2月に開幕する2023年シーズンに向けてトレーニングが始まるまでの期間は、休養やケガの治療などに充てる貴重なオフシーズンです。また、選手は機械ではない、というイスマイル殿下の意見は正論中の正論ですが、その結果、マレーシア代表はベストな布陣を組めずに三菱電機カップに臨まざるを得なくなっています。

Mリーグ1部と2部を統合する大改編発表-しかし当初の18チーム編成が結局15チームに

昨年7月に発表されたリーグ改編ではFIFAの指導のもと、国内リーグ戦の試合数増を目的として、現行の1部スーパーリーグ12チームと2部プレミアリーグの6チームを合わせた「新スーパーリーグ」を2023年に18チームで開催し、その一方でプレミアリーグは一時休止となることが発表されました。
今年2月24日に開幕が予定されている新スーパーリーグでは、各クラブの登録選手は従来の30名から32名に拡大し、外国籍選手枠もトップチーム5名、セカンドチーム4名だったものが、アジア(AFC)枠1名、東南アジア(AFF)枠1名を含めた9名に改定され、試合当日はアジア枠1名、東南アジア枠1名を含めた6名がのベンチ入りが可能になっています。(ただしピッチ上ではこれまで通りアジア枠、東南アジア枠を含めた最大5名)
また新たにU23リーグに当たる「リザーブリーグ」を新設し、現行のプレミアリーグでプレーしていたJDT、トレンガヌ、JDTのセカンドチームに加え、各クラブはこのリザーブリーグにもチームを出場させることを義務付けることが決まっています。また今季プレミアリーグでプレーしたFAM-MSNプロジェクトはこのリザーブリーグ参加が決まっています。こちらは登録選手の上限は30名ですが、その内、23歳以上の選手は外国籍選手を含めた最大で5名が登録可能、また23歳以上の選手はピッチ上では外国籍選手2名を含めた最大で3名がプレー可能となっています。

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スーパーリーグが拡大することで、2023年シーズンは年間34試合と昨季の22試合から試合数が50%以上増える予定でしたが、この拡大案が発表された後にどんでん返しが待っていました。スーパーリーグ10位のマラッカ・ユナイテッドと11位のサラワク・ユナイテッドの両クラブに対して、国内クラブライセンス交付を司る第一審機関FIBがクラブ経営資金に関する情報が不十分だとして申請を却下、さらに両クラブによる再審査の要請も同様の理由で却下されたことから、両クラブは今季のスーパーリーグ参加資格を失っています。これにより今季のスーパーリーグは当初、予定されていた18チームから16チームへと減少しました。サラワク、マラッカの両チームは昨季中も給料未払いが起こるなど、運営に問題があるクラブだったことから、この両チームへの国内クラブライセンス不交付は、時として身内に甘いマレーシアサッカー界を考えると大英断であり、評価されるべき決定です。
しかしこれだけではありませんでした。今度は昨季9位のPJシティがリーグ撤退を表明しました。PJシティは成績は9位であったものの、外国籍選手が1人もおらず、他のクラブに比べるとマレーシア人選手が出場機会を多く得られることから、チームからはFWダレン・ロック、MF V・ルヴェンティラン、GKアラムラー・アル=ハフィズといった代表選手が育つなど、マレーシアサッカーへの貢献度は高いクラブでした。しかし、外国籍枠9名となる今季は、マレーシア人選手のみというクラブの運営方針とリーグ改編の内容が合致しないとして、リーグ撤退を発表しています。これによりさらにチーム数が減ったスーパーリーグは全15チーム、試合数は28試合となり、試合数は3割にも満たないわずか6試合増と、当初の目的が十分果たせない改編となっています。

東マレーシアに本拠地を持つクラブに明暗-サバとクチンシティは大躍進もサラワク・ユナイテッドは3部から出直しへ

2021年シーズンの終盤にマレーシアサッカー協会FAMのテクニカルディレクターからサバの監督へと転身したオン・キムスイ監督の実質1年目となった昨季、1部スーパーリーグのサバは2021年の9位から3位へと大躍進し、今季のAFCカップ出場権を獲得しています。残念だったのはリーグ終盤に失速し、最終節の第22節でも敗れて最後の最後にリーグ2位から3位となってしまったこと。それでも今季加入の加賀山泰毅の貢献もあり、来季はアジアの舞台に挑みます。
また2部プレミアリーグでは、谷川由来選手が所属するクチンシティがクラブ史上最高位となる3位となりました。前述したように今季からスーパーリーグとプレミアリーグが統合されるため、昨季は1部と2部の入れ替えがありませんでしたが、もし実施されていても、クチンシティは堂々の1部昇格を果たしていたところでした。昨季開幕前には2022年シーズンを最後に退任するとしていた名将イルファン・バクティ監督の今季続投も決定、またMリーグ4年目を迎える谷川由来選手の残留も濃厚のようなので、2019年の入れ替え戦で3部から昇格して以来、わずか3年で1部昇格を果たしたクラブがスーパーリーグで果たしてどのようなプレーを見せてくれるのかに注目です。
サバ州のコタキナバルを本拠地とするサバ、そしてサラワク州のクチンを本拠地とするクチンシティが東マレーシア(サバ州とサラワク州はクアラルンプールがあるマレー半島とは離れたボルネオ島にあるため、こう呼ばれています。)の明の部分だとすれば、暗に当たるのが、国内クラブライセンスが交付されずスーパーリーグへの参観資格を失ったサラワク・ユナイテッドです。昨季中もE・エラヴァラサン前監督が代表チームのコーチに就任したことで、後任となったB・サティアナタン氏への給料未払いが明らかになっていますが、国内クラブライセンス不交付の直接的な原因は2021年シーズンに在籍した際の給料が未払いとなっていた外国籍選手がFIFAの紛争解決室へこの問題を持ち込み、FIFAによる支払い裁定が下されたにもかかわらず、これを支払わなかったことにあります。
なおこのサラワク・ユナイテッドは来季は2部プレミアリーグが開催されないため、3部のセミプロリーグ、M3リーグに出場することが決まっています。ちなみにこのサラワク・ユナイテッドはサラワク州サッカー協会も運営に関わる州のトップチームである一方で、同じサラワク州のクチン市を本拠地とするクチンシティは位置的にはその下位となるチームです。言い換えれば東京都サッカー協会が運営するクラブが3部に降格し、世田谷区サッカー協会が運営するクラブが1部に昇格するといった状況です。実はこのサラワク・ユナイテッドは、前身のサラワクFAが2019年の2部と3部の入れ替え戦でこのクチンシティに敗れて3部降格となったところを、当時資金難に苦しんでいた2部でスランゴール州に本拠地があったスランゴール・ユナイテッドを買収して、本拠地をサラワク州に移してサラワク・ユナイテッドと改変するという「寝技」を使って2部に生き残った前歴もありクラブなので、今季の3部スタートは順当と言えば、順当かもしれません。

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