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ベトナムはなぜ、U-23アジア選手権で準優勝できたのか? 「英雄」パク・ハンソが導いた大躍進【「ベトナムフットボールダイジェスト」宇佐美淳氏インタビュー<1/3>】(無料記事)

短期間で劇的な変化をもたらした韓国人指揮官

──ベトナムは今大会のベストチームだったと思います。大会2連覇中だったタイがチャナティップ(北海道コンサドーレ札幌)、ティーラシン(サンフレッチェ広島)、ティーラトン(ヴィッセル神戸)のJリーグ組、そしてベルギーでプレーしている守護神のカウィン・タマサッチャナン(OHルーヴェン)も含めた海外組の主力の招集を見送っていたという事情があったとはいえ、ベトナムは優勝すべくして優勝した、という感じで貫禄すらありました。大会前から優勝を予想していましたか?

宇佐美 予想していました。今回は優勝しなければダメだろう、という感じでしたね。

──昨年までのベトナムは、東南アジア内でもそれほど目立った成績を収めていませんでした。それが今年に入って急に、と言いますか、1月のU-23アジア選手権での準優勝を皮切りにして一気にアジアレベルでの大躍進を遂げたという印象です。ベトナム代表に何が起きたんでしょう?

宇佐美 たしかに昨年までは、こんな状況を想像することはできませんでした。昨年8月のシーゲームス(東南アジア競技大会。「東南アジアの五輪」とも呼ばれる)では、優勝を期待されながらまさかのグループリーグ敗退。グエン・コン・フォン(水戸ホーリーホックでもプレーした「ベトナムのメッシ」)を中心に才能のある選手たちが揃っていたU-22ベトナム代表への期待は大きかったですから、ベトナムサッカー史上最悪と言ってもいいような悲惨な結果でした。それによってA代表とU-22代表を兼任していたベトナム人のグエン・フー・タン監督が責任をとる形で辞任。そして、今のパク・ハンソ監督(A代表とU-23代表兼任)を韓国から招聘したことが転機となりました。

──今回のスズキカップ取材を通して、ベトナムにおけるパク・ハンソ監督の「英雄度」がすごいことになっていることを体感しました。スタンドのいたるところに韓国の国旗やパク監督のイラスト、肖像画が掲げられていますし、「パク・ハンソTシャツ」などのグッズも売られている。パク監督の手腕がすべてを変えた、ということになるんでしょうか?

宇佐美 実際、彼が監督となってこういった状況が生まれたわけなので、そういうことになるんでしょう。前任者は中途半端なパスサッカーで点は取れず、今ひとつ「何がしたいのかわからない」という印象がありましたから…。パスサッカーにこだわったのは、世論とメディアがそれに固執していたせいでもありますが、パク監督はそうした考えをばっさり切り捨てて、現実的に勝つためのチーム作りをしてくれたのが現在の結果につながっています。

パク監督の肖像画を掲げるベトナムサポーター

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