フットボールフィリピン

編集長コラム|スヴェン・ゴラン・エリクソン監督が率いたフィリピン代表を振り返る

photo by the afc.com

この10年近く、フィリピン代表を牽引してきた主将のフィル・ヤングハズバンドを、エリクソン監督は3戦連続で先発メンバーから外しました。東南アジアの中でも弱小国のひとつに過ぎなかった時代から、フィリピン代表を背負ってきた選手、年齢的にも30歳、ようやく辿り着いたアジアのひのき舞台で、彼(と兄貴のジェームズ)は輝けなかったわけですよ。

そしてエリクソン監督は、この1月末をもって任期満了となり退任するそうです。昨年の10月末の就任時から短期の契約だとは聞いていましたけど、やっぱりスズキカップ2018とアジアカップ2019のふたつの大会だけの招聘だったわけです。

大きな大会の前に監督が変わって、その大会だけに新しい監督を招聘することはよくあることではありますが、この事態は健全な状態とは言えませんよね。私個人的な意見は、エリクソン監督を招聘する前に暫定監督を務めていたスコット・クーパーがやれば良いのではと。

エリクソン監督が率いたふたつの大会でのフィリピン代表は9試合を戦って2勝2分5敗。就任直後のスズキカップ2018では、代表23名の選出も基本的な戦い方も、代表マネージャーのダン・パラミと、代表ダイレクターとして帯同していたスコット・クーパーが実質的な部分を担っていました。

タイやインドネシア相手に苦しみ、ベトナムとの準決勝で連敗を喫して大会を終えるまで、エリクソン監督は特に手腕を発揮することはなかった。これは代表選手たちの様子を見ていたんだと思います。そしてクリスマス休暇が終わって、アジアカップ2019の代表23名の選考からエリクソン監督が全権を握って大会に挑んだ。というシナリオに間違いはないと思います。

私は2017年の9月まで香港と広東省を拠点に活動していた手前、エリクソン監督の中国スーパーリーグの広州富力と上海上港などでの手腕を見ていたのですが、彼は現代的なフットボールを描く人物でもなく、至極オーソドックスな布陣を採用した上で、メンバーを固定したらほぼ変えない監督だと認識していました。

だから、攻撃陣にタレントを擁するフィリピン代表の布陣にメスを入れた時点で、私は察していなければならなかったのかもしれません。きっと大会から去るまでバスを並べ続けるだろうことを。

フィリピンサッカー連盟にはほとんどお金がありません。ゆえにお金の掛かる名将を招聘するのは今後はないかもしれない。フル代表の活動費用はすべて代表マネージャーを務めるダン・パラミ個人が賄っています。フィリピン政府からの援助もまったくありません。協会や代表にスポンサーが付いている日本の状況とは大きく異なります。

お金がないので、国際Aマッチウィークに必ず2試合の親善試合を組む日本代表とは違い、フィリピン代表には年間の予定などなく、周辺国とのマッチメイクがされるかされないか。おそらく次のワールドカップのアジア予選の直前まで目立った動きはないでしょう。

何か動きがあるとするとそれは代表メンバーの若返り。大ベテランのポール・マルダースと、32歳になったシュテファン・シュロックやジェームズ・ヤングハズバンドらの穴を埋める新たな海外出身のフィリピンハーフ選手を、ダン・パラミが探し求めると思われます。

その中に日本のJリーグで活躍している日系フィリピンハーフの選手が含まれていると、このフットボールフィリピンもより充実するでしょう。もちろん、トーマス・ドゥーリーが監督を務めていた時代に招集されていた、日系フィリピン人の嶺岸光の代表復帰にも期待しつつ、このコラムを締めさせていただきます。

フットボールフィリピン編集長 池田宣雄

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