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アジア20カ国でプレーした「アジアの渡り鳥」が、タイ・バンコクを拠点に描く新たな夢「チャレンジャス・アジア」とは?【伊藤壇インタビュー<1/2>】(無料記事)

43歳の伊藤もともにトレーニングに汗を流す

拡大する日本人選手のアジアの戦場

──実際、100パーセントに近い確率でチームが決まっているのですか?

伊藤 これまで関わった選手は100人くらいいますが、契約できなかったのは2人だけです。1人は怪我で帰国することになった選手だったので、純粋にチームが決まらなかったのは1人だけですね。

──それはすごい確率ですね。アジアのリーグでチームを決めるコツみたいなものがあるんでしょうか?

伊藤 僕自身、選手として代理人を付けずに自力でチームを決めてきましたが、アジアでは予想を超えるような出来事が起きるものです。練習参加していたチームが急に解散となったり、契約を結ぶことになってもいざ出された契約書を見たらサラリーが「ゼロ」となっていたり。どう見ても自分よりレベルの低い選手が契約を掴み取ったと思ったら裏で代理人がチーム関係者に金銭を渡していた、といったことなどもあるのが現実です。自力でチームを探すのもいい経験ですし、できればそれが一番いいとは思うんですが、実際にはアジアを知っている人間の後ろ盾があるのとないのとでは大きく違うと思います。

──「アジアの渡り鳥」の経験が生かされるわけですね。「チャレンジャス・アジア」の選手たちは、どういった国のチームと契約に至ることが多いのですか?

伊藤 やはりタイが中心になってはいますが、正直、タイリーグでの日本人選手の評価は以前に比べると相対的に下がっているのが実情です。韓国人、オーストラリア人、最近では中東の選手たちも入ってきて「アジア枠」のライバルが増えていますから。割合で言うとタイリーグが3割くらい、残りの7割は現状では香港、マレーシア、フィリピン、ラオス、カンボジア、モンゴルといった国が多いですね。バングラデシュなども「アジア枠」ができてこれから日本人選手が増える可能性があると思いますし、新しい国も考えていかなければいけない。そのためにこれまで種を蒔いてきたつもりなので、それを収穫する作業をしていければと思っています。

──アジアのリーグに挑戦する日本人選手にとっては、心強い存在ですね。

伊藤 これまで契約に至った100人ほどの選手たちも、半分くらいは日本ではアマチュアとしてプレーしていました。バイトをしながらサッカーを続けていた選手や、一度はプロを諦めて就職した選手などもいます。そういった、プロへの夢を持ってアジアにやってくる選手たちの力になれればと思っています。

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<伊藤壇(いとう・だん)プロフィール>
1975年生まれ、北海道出身。MF。登別大谷高、仙台大を経てブランメル仙台(現ベガルタ仙台)でプロ契約。その後、シンガポールを皮切りにオーストラリア、ベトナム、香港、タイ、マレーシア、ブルネイ、モルディブ、マカオ、インド、ミャンマー、ネパール、カンボジア、フィリピン、モンゴル、ラオス、ブータン、スリランカ、東ティモールと現在までに日本を含めてアジアの20の国と地域でプレーした。現在はプロサッカー選手を育成するプロジェクト「チャレンジャス」の活動なども行っている。著書『自分を開く技術』(本の雑誌社)は2017年サッカー本大賞(読者賞)を受賞。

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