ベトナムフットボールダイジェスト+

【FIFA女子W杯】夢舞台で誇りを胸に「ベトナム進軍歌」高らかに

熱戦が繰り広げられるFIFA女子ワールドカップ2023。ベトナム女子代表(通称ゴールデンガールズ)は先日、女王アメリカとの初戦に臨み、健闘むなしく0-3で敗れた。しかし、試合前の国歌斉唱では、ベトナム女子代表チームの選手とスタッフ陣、そして、スタジアムに駆け付けたサポーターたちが高らかに国歌「Tiến Quân Ca=進軍歌」を歌い、ワールドカップ初出場の喜びと栄誉を分かち合った。

ベトナムは、過去にFIFAが主催するU-20ワールドカップとフットサルワールドカップに出場しているが、男女通じてサッカーのA代表がワールドカップに出場するのは今大会が初めて。サッカーが国民的スポーツとなっているベトナムにとっては、まさに夢の舞台というわけだ。

Photo:Nhan Dan

ベトナム女子代表は、東南アジアの強豪として知られ、FIFA女子ランキングでは長年東南アジアトップを維持。東南アジア版五輪のSEA Gamesでは最多8度の金メダルに輝き、AFF女子サッカー選手権でも3度の優勝を数える。しかし、ワールドカップに出場するには、いつもあと一歩及ばず、予選敗退が続いていたが、今大会では出場枠が増えたことで、ついに手が届いた。

W杯初戦は女王アメリカとの試合。両国には長く悲惨だったベトナム戦争の歴史があるが、今を生きるベトナム人にアメリカに対する負の感情を持つ者は殆どいない。サイゴン陥落の4月30日には、毎年テレビでベトナム戦争の記録映像を流しているが、かつての敵国に対する恨みつらみよりも、大国相手に徹底抗戦で祖国を守り抜き、独立と自由を勝ち取った国民の精神を称え、団結を呼びかけるのが目的と言える。この強靭な精神力や団結というのは、ベトナム人が非常に好む言葉でもあり、選手や監督からも度々聞かれる。

ベトナムが国民の団結と愛国心を養うために国歌として採用したのが進軍歌。進軍歌が誕生したのは、フランス領インドシナ時代の1944年とされ、その翌年、ホー・チ・ミン主席がベトナム民主共和国を建国し、進軍歌を国歌として採用。その後もベトナムは植民地支配と戦乱の時代が続いたが、戦地に響く進軍歌は常に戦士たちを鼓舞してきた。ベトナム戦争が終結し、1976年に誕生したベトナム社会主義共和国でも進軍歌が改めて国歌として採用された。

現代においても、小学校から高校では毎週月曜朝の国旗掲揚式で進軍歌を合唱しており、国民が幼い時分から慣れ親しむ存在となっている。サッカーでは代表戦だけでなく、Vリーグの試合でも試合前に進軍歌が流される。

進軍歌というだけあって、内容は勇ましい軍歌。敵を恐れず進み続ける戦士たちの精神を綴ったものだ。一般的には1番のみが歌われるので、以下でその内容を紹介しよう。

Đoàn quân Việt Nam đi chung lòng cứu quốc
Bước chân dồn vang trên đường gập ghềnh xa
Cờ in máu chiến thắng mang hồn nước,
Súng ngoài xa chen khúc quân hành ca.
Đường vinh quang xây xác quân thù,
Thắng gian lao cùng nhau lập chiến khu.
Vì nhân dân chiến đấu không ngừng,
Tiến mau ra sa trường,
Tiến lên, cùng tiến lên.
Nước non Việt Nam ta vững bền.

ベトナム軍は進む、国を救う決心を胸に
長く荒れ果てた道程に足音が響く
勝利の血に染まれた旗に国の魂が宿り
進軍歌とともに銃声が遠く鳴り渡る
敵の屍の上に栄光な道を築き
逆境を乗り越え、共に抗戦拠点を構える
人民のために止むことなく戦え
戦場へ急げ!
進め!共に進め!
ベトナムの山河は永遠なり!

ベトナムの選手たちは、今回のアメリカとの対戦を純粋にチャレンジャーとして臨んだ。スター選手が多いアメリカ代表をアイドル視する選手も多く、記念撮影やユニフォームの交換をねだった選手も多かった。チームの平均身長では10cmも低いベトナムだったが、試合中は一歩も引かない身体を張った守備でアメリカの猛攻に耐え続けた。結果は防戦一方の0-3だったが、国民はゴールデンガールズの奮闘に大いに満足し、惜しみない拍手を送った。

ベトナムは7月27日に行われるグループリーグ第2節でポルトガルと対戦。目標とするワールドカップ初ゴールと史上初の勝ち点獲得を目指し、ゴールデンガールズは邁進する。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ