ベトナムサッカー躍進の立役者たちの知られざる秘話 第2回 オランダの名将ヒディングの右腕は孝行息子。
日本人監督にオファーを断られたベトナムサッカー連盟(VFF)は、韓国の代理人イ・ドンジュン氏から、パク・ハンソ氏とゴン・オギョン氏の2人を紹介された。
パク氏は当時58歳。2002年の日韓ワールドカップで韓国代表のコーチを務め、オランダの名将フース・ヒディングの右腕としてベスト4入りに貢献した実績を持っていた。パク氏はその後、U-23韓国代表を率いて同年に韓国・釜山で開催されたアジア競技大会(ASIAD)で銅メダルを獲得。
一方、ゴン氏は当時43歳の青年監督で、U-17、U-20、U-23韓国代表でコーチを務めた経験があった。
履歴書を吟味したドアン・グエン・ドゥック氏(HAGL会長、当時のVFF副会長)は、2人の中からパク氏を選択した。
「パク氏は、代表とクラブのどちらもトップレベルのチームを指導した経験がある。豊富な実績と経験があり、ベトナムでの仕事を全うしてくれるだろう。年齢的にも、地に足をつけて、一つの仕事に全身全霊で打ち込んでくれるはずだ。」
ドゥック氏はそう話すと、我々に韓国に向かうよう指示した。
「彼こそベトナム代表監督に相応しい」
翌日には我々はソウルにいた。代理人のイ氏が空港まで迎えに来て、その足で江原FCを訪問して、HAGLから期限付き移籍中のMFルオン・スアン・チュオンを激励した。道中でイ氏が、パク氏の状況について教えてくれた。
「私たちはパク氏とコンタクトを取り、何度も話し合いを重ねました。パク氏はVFFからのオファーに強い関心を示していますが、90歳を超える母親がおり、トップレベルのチームでの指導から引退し、故郷に戻って母親の世話をしながら地元チームの指導をしています。とても親孝行な人物で、妻子のことも非常に大切にしています。まぁ、実際に会えばわかると思います。」
その日の午後、我々はパク氏が暮らすマンションを訪問した。パク氏は奥さんと一緒に待っていて、我々を近所のコーヒービーンに招いてくれた。店に入ると、パク氏は落ち着ける席を慎重に選んで、妻のためにカウンターでドリンクを注文し、そして、我々との面談を開始した。我々がVFFからの条件を説明すると、パク氏はメモを取りながら注意深く聞いていた。
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