【女子ACL】プレ大会女王浦和とのグループC首位決戦に臨む地元HCMC、注目選手を紹介
ホーチミン市トンニャット・スタジアムで開催中のAFC女子チャンピオンズリーグ2024-2025(女子ACL=AWCL)グループCは下馬評通り、AWCLプレ大会女王の浦和レッズレディースと、地元ホーチミン・シティ(HCMC)が2連勝で早々にグループステージ突破を決めた。
今大会圧倒的な強さを誇る浦和は優勝候補の筆頭。一方のHCMCもベトナム女子リーグ6連覇中で、最多13回の優勝を誇る強豪。直近2シーズンは戦力流出が続き、ベトナム代表の主力クラスが5人も退団しているが、それでも総合力と安定感は国内で群を抜いている。
初出場となるAWCLに向けてクラブ史上初となる外国人助っ人3人を補強するなど入念な準備もしており、その甲斐もあって、第1節で台中ブルーホエール(台湾)に3-1、第2節もオリッサ(インド)に3-1で勝利し、2連勝でグループステージ突破を果たした。
現在、浦和とHCMCが勝ち点6で並んでいるが、得失点差で上回る浦和が首位に立っている。首位通過すれば、ノックアウトステージの準々決勝をホーム開催できる利点があるが、仮にHCMCがこのまま2位通過となっても、各組2位のうち成績トップが確実なため、準々決勝は引き続きトンニャット・スタジアムで開催できる見通し。
浦和にとって同組最強のライバルがHCMCであるのは間違いないが、それでも両者にはかなりの実力差があるため、HCMCが逆転で首位通過する可能性は高くない。しかし、ベトナムの女子チームがアジアトップチームと対戦する機会は滅多にないため、自分たちの現在地を知る上でも貴重な試合となる。
今回は浦和とのグループC首位決定戦に先立ち、HCMCの注目選手をピックアップして紹介する。
FWフイン・ニュー(32歳)、背番号9
ベトナム代表のエースストライカーに長く君臨しており、昨年のW杯にも出場。2022-2023シーズンにHCMCからポルトガル1部ランクFCに移籍。ポルトガルの2シーズンで47試合に出場して10ゴール・4アシストを記録。海外でプレーしたベトナム人サッカー選手の中で、男女含めて最も成功した選手と評価されている。引き続き海外でのプレーを希望していたが、今大会のために古巣HCMCと短期契約を結んで復帰。復帰後初の公式戦となった今大会初戦の台中ブルーホエール戦では2ゴール、第2節オリッサ戦でも1ゴールを記録して勝利に貢献した。高さはないが、裏抜けの上手さと巧みなポジション取りでゴールを量産する点取り屋。両脚のキック精度も高いが、大会前に内転筋を負傷しており、痛みを押しての出場となるため、今大会はキレやフィニッシュにやや精彩を欠いている。代表通算109試合出場・68ゴール。ゴールデンボール受賞5回。国内リーグ得点女王5回。
MFチャン・ティ・トゥイ・チャン(36歳)、背番号88
元ベトナム代表で昨年のW杯後に代表引退を表明。ボランチからFWまで高いレベルでこなすユーティリティプレーヤー。フットサル出身で、かつてはフットサルベトナム代表にも選ばれていた。現在もサッカーのオフシーズンにはフットサル選手として活動中で、今年のベトナム女子フットサル選手権で得点女王に輝いている。フットサルで培った高い技術を持ち、一対一に強く、特にボール奪取力に優れている。貧しい家庭に生まれ育ち、今は亡き兄の夢を追い、癌で闘病中の母を笑顔にするため、大ベテランとなった現在もサッカーを続けている。献身的なプレーを信条としており、HCMCではバンディエラ的な存在で、フイン・ニューがポルトガルに渡って以降はキャプテンも務めている。代表通算60試合出場・7ゴール。
MFグエン・ティ・トゥエット・ガン(24歳)、背番号18
ベトナム代表の次代のスター候補。フイン・ニューの後継者と目されている敏捷性とテクニックに優れた2列目のアタッカー。ポルトガルに活躍の場を移したフイン・ニューの穴を埋め、今季のベトナム女子リーグでは大会MVPとなる活躍を見せてリーグ優勝の立役者となった。幼少期に父を亡くしており、他の多くのベトナム人サッカー選手と同様に貧しい家庭で生まれ育った。幼少期からサッカーに夢中だったが、家計が厳しく、地元チームも男子しか受け入れていなかったため、いつもピッチ脇で練習を見ては、ボールが外に出るたびに走ってボールを拾いピッチに戻していた。見かねたコーチが無料で練習に参加させ、ガンの才能を見出してHCMCのトライアウトに連れていき晴れて合格。以降はHCMC下部組織で着実に成長し、17歳の若さでベトナム代表に初招集されるなど順風満帆だったが、2022年の女子アジア杯後に靭帯損傷の重傷を負い、W杯のメンバー入りを逃した。現在は怪我も癒えて完全復活している。
DFチュオン・ティ・キエウ(29歳)、背番号19
ベトナム代表の守備の要。少数民族クメール族出身で、ベトナム人女性としては大柄な身長166cm。若手時代はフィジカルの強さが注目されていたが、現在は状況判断や読みにも磨きがかかり、国内トップクラスのストッパーと評価されている。闘志を前面に押し出したプレーも魅力で、副キャプテンとしてチームをまとめる。今大会では、新加入のアメリカ人DFバーネット・タラニ、DFチャン・ティ・キム・イエンと3バックを構成し、第1節の台中戦、第2節のオリッサ戦では相手の攻撃陣をほぼ無力化した。2019年の靭帯損傷後は、痛みをごまかしながらプレーを続けていたが、2022年に手術に踏み切り、昨年のW杯に間に合わせた。代表通算92試合出場・4ゴール。
こられローカル選手の主力に加えて、女子サッカー大国のアメリカからMFタチアナ・メイソン(25歳、背番号31)、FWメーガン・ルート(25歳、背番号24)、DFバーネット・タラニ(24歳、背番号20)の3人が助っ人として加入。
メーガンはカナダとアイスランドのクラブでプレー経験があるスピード豊かなストライカー。スポーツ一家に生まれたMFタチアナは、アメリカ大学リーグで豊富な実績を持ち、2021年には年間ベストイレブンにも選出された実力派。本来のポジションは攻撃的MFだが、状況により守備的な位置でもプレー。これまでにイスラエル、デンマーク、トルコのクラブでプレー経験がある。オハイオ大学で活躍したバーネットは俊足のセンターバックで広い範囲をカバーでき、ディフェンスラインに安定感をもたらす存在。助っ人3人は1か月余りの練習と韓国遠征を経て、チームに溶け込んでおり、3-4-3のシステムでセンターラインの軸として、うまく機能している。