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梅田邦夫駐ベトナム日本国大使“東京五輪””サッカーへの情熱”日越スポーツについてアツく語る

ベトナムでは、急速な経済成長と共にスポーツ界も大きな飛躍を遂げつつある。昨年初めのサッカーU-23 ベトナム代表フィーバーの過熱ぶりは多くの人々の記憶に刻まれ、国全体が一丸となった。リオ五輪では、ついに初のベトナム人金メダリストも誕生した。今回は、日越スポーツ交流に並々ならぬ情熱を注ぐ、梅田邦夫駐ベトナム日本国大使にベトナムフットボールダイジェスト運営者がインタビューを実施。来年に迫った東京五輪に向け、ますます加速する日越スポーツ交流について話を伺った。
※この記事はフリーペーパー「VINABOO」2019年季刊誌第1号に掲載されたインタビューを転載したものです。

 

日越外交関係樹立45 周年の スポーツ交流について

- 2018 年は日越外交関係樹立45 周年の節目の年とあり、両国間で様々な交流が行われました。その一環で行われたスポーツ交流も例年になく活発でしたが、この1 年を総括した印象をお聞かせください。

「2018 年の日越スポーツ交流事業を振り返ってみると、結果的にではありますが、圧倒的にサッカーが多かったという印象です。私自身、この地でサッカー交流を行わなければならないと強く自覚したのは、1 月のAFC U-23 選手権でのベトナム準優勝という結果を見てからなんです。それまでは、ベトナムがこんなに強いということを意識していなかったので、やれることは非常に限られていると思っていました。ところが、U-23 の結果を受けて、これは色々な可能性があると認識を改めたんです。そこで、J リーグや日本サッカー協会に働きかけて、こちらから仕掛けた部分もあります。」

「ただ、実際にはそれよりずっと以前から日本は、ベトナムでのサッカー交流を行っていました。トヨタのジュニアサッカー然り、川崎フロンターレの指導者派遣然り。サッカー交流で特に目立つのが育成年代向けの活動です。これは、これからも是非続けていかなければならないことだと思っています。」

「サッカー以外のスポーツの内訳は、柔道、空手、剣道、駅伝、卓球など。分類すると、日本の伝統的な競技が続いています。駅伝も日本発祥。卓球は、若い世代を中心に日本人選手が世界で活躍しています。こうした日本が得意とする競技の普及活動が活発化している印象です。2020年には、東京五輪も控えていますし、スポーツの国際交流にも熱が入っているのでしょう。色々な協会や団体、また地域の方々から幅広い協力を得ることができ、非常にありがたいことだと感謝しています。」

「今年のスポーツ交流事業の中で、特殊なものとしては、ハノイとホーチミンで毎年交互に開催されている「モッタイナイマラソン」があります。これは、ベトナム婦人新聞社の企画による交通事故防止のチャリティランで、もともとベトナム側が主体となった現地発祥のイベントです。もう一つは、ミズノによる子ども向け運動遊びプログラム「ヘキサスロン」の導入。ベトナムの課題の一つとして、以前から言われているのが、運動能力を高めるための体育カリキュラムが欠落していることがあります。そこに、ミズノが名乗りを上げて「ヘキサスロン」の初等教育導入を働きかけ、実際に、そういう方向に進みつつあります。実現すれば、ベトナム体育教育の発展に大きく貢献しますので、我々も是非後押ししていきたいです。」

- 国際交流におけるスポーツの役割とは、どのようなものだとお考えですか?

「先日、セルジオ(※サッカー解説者セルジオ越後)がハノイ市で講演会を行いました。その時に彼が自分自身の体験も踏まえて、語っていたことですが、国際交流におけるスポーツの最も重要な役割というのは、人と人、そして、国と国を繋ぐことです。セルジオや我々の場合は、サッカーを通じて、その国を知り、多くの人々を知りました。これはどのスポーツも同じです。」

「2 点目は、相互理解を深めること。国民的スポーツというのは、その国の文化や歴史を反映しているものです。どうしてベトナムでサッカーが人気なのか、彼らはどんな応援をするのか、それらを知ることで理解は間違いなく深まります。3 点目は、国や人間を成長させることです。どういうことかというと、スポーツをやっていると、必ずライバル関係というものが生まれます。国際間でいえば、ブラジルとアルゼンチン、日本と韓国。強烈な競争意識を持ちながらも、互いを高めあう存在になっています。」

- 2018 年の日越スポーツ交流で、特に印象深かった活動はありますか?

「福島県で開催されたU-17 日メコン・サッカー交流大会ですね。U-17 ベトナム代表のメンバーは、この日本滞在中、日メコン首脳会議に出席していた国家首脳たちから表彰されたんです。このことは彼らにとって、大きな励みになったと思います。そして、アジア大会出場のために、岡山県美作市でキャンプをしたサッカー女子代表チームの壮行会。女子代表は、前年のSEA Games で優勝したときも直前合宿を美作市で行っており、とても縁起がいいキャンプ地とのことでした。初戦はなでしこジャパンに大敗しましたが、ライバルのタイに勝って、決勝トーナメントに進出でき、国内でも称賛されました。そして、個人的にも関わることになった日越サッカー協会のパートナーシップ再締結。サッカー好きのフック首相が日メコン首脳会議で訪日するタイミングで、安倍首相も立会いの下、締結することができ、非常に良かったです。このパートナーシップをベースに今後、日越サッカー交流はさらに活発化していくことでしょう。」

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