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3大会連続の東南アジア王者へ突き進むタイ。チャナティップら「海外組」不在も、貫禄の首位通過で決勝Tへ【AFFスズキカップ・GLレビュー】

新生タイ代表のグループリーグ4試合を振り返る

東南アジアでは現在、2年に一度の“祭典”が行われている。東南アジアのナショナルチーム王者を決めるAFFスズキカップ=東南アジア選手権だ。「タイガーカップ」として1996年に幕を開けた同大会は、隔年をベースに開催されて今大会で12回目を迎える。日本人には馴染みの薄い大会だろうが、現地ではエリアの王者を決める大会としてすでにステータスが確立されており、「東南アジアのW杯」とも言える存在だ。

東南アジアの盟主であるタイは、現在2連覇中で優勝回数も最多の5回を誇る。とはいえ、低迷期にあった2000年代初頭には5大会連続で優勝を逃しており、グループリーグ敗退も経験するなど常に絶対的な存在であったわけではない。だが、2010年代に入って国内リーグが急発展すると、若い才能たちの台頭によって鮮やかに王座を奪還。その躍進は東南アジアの枠を超える勢いを見せ、ロシアW杯ではアジア最終予選進出を果たした。

「東南アジアの王者」から「アジアの強豪」を目指す段階に入ったタイは今大会でも絶対的な本命、と言いたいところだが、大会前にそう見る者は少なかった。大会の開催期間は国際Aマッチデーに当たらないため、「海外組」を抱えるタイ代表はMFチャナティップ・ソングラシーン(北海道コンサドーレ札幌)、FWティーラシン・デーンダー(サンフレッチェ広島)、DFティーラトン・ブンマータン(ヴィッセル神戸)、GKカウィン・タマサッチャナン(OHルーヴェン/ベルギー)の主力4選手を招集できず。ベトナムを筆頭にライバルたちも力をつけるなか、飛車角落ちのタイがどこまで優位を保てるのか未知数だったのだ。

現在、大会はグループリーグを終え、本日(12月1日)から始まるベスト4による決勝トーナメントを待っている。結果から言えば、タイは貫禄を感じさせる戦いぶりで難敵揃いのグループBを1位通過した。ロシアW杯アジア最終予選の終盤にセルビア人の新指揮官ミロヴァン・ライェヴァツを迎えて再出発した新生タイ代表。真の意味での「アジアの強豪」を目指して進むタイにとってスズキカップの王座防衛はミッションと言えるが、本日に控えたマレーシアとの準決勝ファーストレグを前にグループリーグ4試合の戦いを振り返っておきたい。

 ※W杯アジア最終予選終盤からスズキカップ前までのタイ代表については「アジアサッカーキング」(20181017日発売)に詳しく書いているので、よろしければ以下のリンクからご覧ください。

【アジアの強豪への道のり】 タイ代表に課せられたミッション、いざ挑む高い壁

 

【第1戦】○7対0 東ティモール(2018年11月9日@タイ・バンコク)

<タイ代表スターティングメンバー>
GK23 シワラック・テースーンヌーン(ブリーラム・ユナイテッド)
DF4 チャルムポン・グーケーオ(ナコンラチャシマー)
DF13 フィリップ・ローラー(ラチャブリー)
DF20 マヌエル・ビアー(バンコク・ユナイテッド)
DF24 コラコット・ウィリヤーウドムシリ(ブリーラム・ユナイテッド)
MF8 ティティパン・プアンチャン(BGパトゥム・ユナイテッド)
⇒82分:7スマンヤー・プリサーイ(バンコク・ユナイテッド)
MF11 モンコン・トッサクライ(ポリス・テロー)
⇒74分:2チャナナン・ポンブッパー(スパンブリー)
MF14 ヌルン・スリヤーンケム(ポート)
MF17 タナブーン・ケーサラット(BGパトゥム・ユナイテッド)
MF29 サンラワット・デーミット(バンコク・ユナイテッド)
FW9 アディサック・クライソーン(ムアントン・ユナイテッド)
⇒87分:22スパチャイ・ジャイデッド(ブリーラム・ユナイテッド)

格下相手に大勝も、明確に見えた「守備の意識」

王者タイ、前回準優勝のインドネシア、タイに次ぐ4度の優勝歴を持つシンガポール、初のアジアカップ本戦出場を決めたフィリピン。優勝候補と言える4カ国が並んだグループBは「死の組」となった。その中にあって、日本人の築館範男監督が率いる東ティモールは唯一予選を戦って本戦出場を決めたチーム。タイとの実力差が小さくないことは戦前からはっきりとしていたが、結果は予想通りのものに。タイはティーラシンに代わってトップに入ったアディサックがダブルハットトリックの大爆発だった。

初戦に臨んだタイのスタメンを見ると、前任のキャティサック監督時代に同ポジションで継続的にスタメンに名を連ねていた選手は右アタッカーのモンコンのみ。「海外組」が不在とはいえ、「ライェヴァツ色」を強く感じる顔ぶれと言える。戦い方に関しても東南アジア内では圧倒的なポゼッション率でのパスサッカーを展開していたキャティサック時代の姿から大きく印象を変え、格下の東ティモールにもボールを持たせる時間を作るなど守備の意識が強く感じられた。

タイにとって東ティモール戦は試運転的な位置付けであったかもしれないが、ライェヴァツ監督の率いるチームは、ロシアW杯でアジア最終予選まで勢いよく駆け上がっていったタイ代表とは全く別のものになったことを改めて感じさせる初戦だった。

【試合ハイライト】

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