フットボールシンガポール

インタビュー|是永社長との縁でシンガポールに アルビレックス新指揮官が目指すものとは 重富計二監督

「タイトル獲得は目標だが、ゴールではない」

―まだチーム練習も始まったばかりですが、手ごたえはありますか?

今年は昨年ほどいろいろなことがスムーズには行かないかな、というのが第一印象としてあります。3年連続完全優勝の後を引き継ぐというのは、正直プレッシャーしかないです(苦笑)。でも、そのプレッシャーを踏まえて、自分ががどれだけ楽しめるかとポジティブに考えています。突き進んでいくだけですね。

―最年長選手として4年間プレーしたGK野澤洋輔の退団(アルビレックス新潟へ復帰)の影響は大きいでしょうか?

野澤の存在はとても大きかったですね。試合中のコーチングなどだけでなく、ピッチ外でも若手選手の兄貴分として積極的にチームをまとめてくれていましたから。今年もGKはオーバーエイジで福留健吾(アスルクラロ沼津から加入)が入ってくれたので、昨年までの野澤的な役割もしてくれればいいかなと思っていますが、彼も(シンガポールは)1年目なのでいろいろと手探り状態ですね。

―今季の目標を教えてください。

もちろんタイトルを獲ることはチームとしての目標ですが、選手たちにとってはそれがすべてではありません。昨年あれだけの成績を残しても、現時点でJクラブに移籍することができたのは野澤だけという現実があります。J2やJ3のクラブにトライアル参加した選手もいましたが、なかなかうまく話がまとまっていません。

このことは練習初日に選手たちにも伝えました。このチームで1年間プレーして、どうやって次にステップアップしていくか。それを考えて1日1日、1回1回のトレーニングをしていかないと「次」はないよと。そうした日々のトレーニングの積み重ねがタイトルという結果につながってくれれば最高ですが、それがゴールではありません。選手たちには「その先」を見据えて、日本や世界で通用する選手として成長していって欲しいと考えています。

 

選手の成長した姿を見るのが指導者の楽しみ

―サッカー指導者という仕事の魅力はなんですか。

サンフレッチェ広島のサッカースクールにいたときに指導した岡崎(和也)という選手が、僕と同じ2014年に選手としてチームに加わりました。小学生のときに教えていた子どもと、シンガポールで同じチームに入っていっしょに戦えるというのは「立派になったなあ」と感慨深かったですね。2016~17年にいた田中(脩史)も広島のトレセンで指導したことのある選手でした。自分が携わった子どもがプロ選手として羽ばたいてくれるというのは、指導者にとって大きなやりがいです。SNSで「就職しました」と連絡をくれる子もいます。たとえ子どもたちが将来サッカーを辞めても、社会人として立派に成長した姿を見られるのは嬉しいですね。

いまの選手たちがこれから1年間いっしょに戦い、そのあともアルビレックスの「ファミリー」として、いろいろな舞台で活躍するようになってくれるのを助けることが、指導者としての役割だと考えています。

 

重富計二(しげとみ・けいじ)
1979年島根県生まれ。高校卒業後にサッカースクールのアシスタントコーチとして指導者のキャリアを始める。その後、広島県トレセンU-12・U-15コーチ、サンフレッチェ広島サッカースクールコーチなどを経て、2014年にアルビレックス新潟シンガポールのアカデミーマネジャーに就任。2018年にトップチームのコーチとなり、3年連続となる国内全タイトル制覇に貢献。吉永一明前監督の退任をうけて、今季からトップチームの監督に昇格。

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