フットボールフィリピン

編集長コラム|バコロドに向かう前にマニラの安宿でフィリピンプレミアリーグの惨状を憂う

photo by football philippines

日本を発って約2週間が経過、個人的な用事でマニラと香港を往復しましたが、基本的にはマニラに滞在して取材の日程を消化しています。今回のマニラ入りは、開幕が延びに延びまくったフィリピンプレミアリーグの開幕戦の視察と、AFCカップに出場しているフィリピン勢の取材などが目的です。

明日から3日間、AFCカップのグループステージH組第5節のカヤ・イロイロ(フィリピン)とラオ・トヨタ(ラオス)の試合の取材でネグロス島のバコロドに滞在するので、その前にマニラ界隈で収集したこれまでの情報をまとめておこうと思い、マニラの安宿で脆弱なWIFI環境と戦いながら少し書こうと思います。

『フットボールフィリピン』をご購読いただいている方々と、『タグマ!サッカーパック』にご加入の方々なら、フィリピンプレミアリーグの開幕に至るまでの経緯をご覧いただいていると思いますが、もう本当に「おい!お前ら!一国のトップカテゴリーの運営がこんなにグダグダで本当に良いと思ってんのか!」とメインスタンドのど真ん中でタガログ語で怒鳴ってやりたい気分にさせてくれています。タガログ語はまったく話せないですけどね。

フィリピンはAFC(アジアサッカー連盟)が推奨するホームタウン制の完全プロ化リーグの運営に失敗して、今シーズンから新しいリーグコミッティーを設けて、以前にマニラ首都圏で行なわれていたプロとアマチュアが混在するリーグ戦方式に回帰することになりました。いくつかのチームを呼び戻して「地方都市には申し訳ないけどマニラ首都圏で盛り上がりましょう」という趣旨のフィリピンプレミアリーグの旗を掲げました。

計画当初に多くのチームが手をあげたので、既存の6チームに彼らが加われば少なくても10チーム、もしかすると12チームくらいでリーグ戦をやるんじゃないかと、それはもう希望に満ち溢れていました。プロ・アマ混在のリーグになる以上チーム間のレベル差は広がるとしても、同じ対戦カードが年に5回も6回もあるような状況より断然マシだとみんな思っていましたから。

しかし、リーグの趣旨が変わると「去る」という選択に至るチームも現れます。まず、ミンダナオ島のダヴァオを本拠地として計画していたダヴァオ・アギラス・ベルマーレが去って行きました。2017年にできたばかりのチームですが資金力も政治力もあって、フィリピン代表クラスの選手たちを高待遇でかき集め、王者セレス・ネグロスと肩を並べそうな勢いのチームでした。

でも彼らはマニラ首都圏でのリーグ開催に「NO!」を突きつけました。彼らはJ1湘南ベルマーレと提携したばかりで、日本サッカー界とのパイプを持つ唯一のチームとなったのですが、活動休止の決定はベルマーレ側には相談もしなかったようです。

次に、と言うよりも、実際には昨シーズン限りで消滅したJPVマリキナですね。以前はJPヴォルテスという名前で活動していた日本人経営のチームですが、この2シーズンのフィリピンフットボールリーグへの参加で活動資金を使い果たし、昨シーズンの始め頃からは選手やスタッフへの未払いが常態化していました。マニラ界隈の情報によると、未払い金はまったく精算されておらず、活動休止の正式なアナウンスすらないまま姿を消しました。

この2つのチームがいなくなった時点で、既存のチームはセレス・ネグロス、カヤ・イロイロ、スタリオン・ラグーナ、グローバル・マカティの4つとなり、ここに「復帰組」が加わっていくことになります。

新リーグは手を上げたチームを歓迎したいところですが、リーグのクオリティーを保つにはそうもいかず、フィリピンサッカー連盟によるクラブライセンスの発給がひとつの参加基準となりました。この基準を巡って連盟側とリーグ側そして参加クラブとの間に巻き起こった大騒動が1月下旬頃から繰り広げられたのです。

この頃リーグ側は、新リーグ初年度の参加チーム数の目安を最大で8チームと表明しており、既存の4チームに加えてグリーン・アーチャーズ、メンディオーラ、フィリピン・エアフォース、エスパーニャ・ユナイテッドの4チームがクラブライセンスの申請を行ないました。そのうちエスパーニャ・ユナイテッドは早い段階で連盟側が申請を却下しましたが、残りの7チームへのクラブライセンス発給の目処が立ったことで、リーグ側は330日の開幕日程と7チームでの初年度のリーグ開催を発表するに至りました。

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