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9月7日のニュース
・ムルデカ大会:ウルトラスが観戦ボイコットの中、マレーシアはフィリピンに辛勝
・ムルデカ大会:レバノンが前回優勝のタジキスタンに勝利し、マレーシアと決勝で対戦

第1節から波乱のスタートとなった2026W杯アジア3次予選。日本や中国、オーストラリアが入るC組では、東南アジア勢として唯一、3次予選に残ったインドネシアがアウェイでサウジアラビアと1-1で引き分けています。帰化選手による補強が大当たりのインドネシアは、さらにCBミーズ・ヒルハース(23歳、FCトゥエンテ所属)、RBエリアノ・ラインデルス(23歳、FCズヴォレ所属)が加わるという噂もあり、C組の台風の眼になりそうです。

またB組ではイスラエルとの戦闘状態により、マレーシアで合宿を行っていたパレスチナが韓国を相手にやはり敵地で0-0と引き分けています。そのパレスチナは、クウェートにロスタイムのゴールで追いつかれてやはり初戦を1−1で引き分けたヨルダンと、マレーシアで9月10日の第2節で対戦します。初戦に出場したノー・アル=ラワブデ、アリ・オルワン、レジク・バニハニの3選手がスランゴールFCでプレーするヨルダンと、やはり初戦に出場したオディ・ハロウブがクランタン・ダルル・ナイムFCでプレーするパレスチナの対戦は、マレーシアサッカーとも縁があり、国内サッカーファンの関心を集めそうです。

ムルデカ大会:ウルトラスが観戦ボイコットの中、マレーシアはフィリピンに辛勝

試合からは3日経ってしまいましたが、第43回となるムルデカ大会が9月4日に開幕し、フィリピンと対戦したマレーシアは2−1と逆転で勝利し、9月8日の決勝に駒を進めています。

マレーシアサッカー協会(FAM)の運営に不満を持つ最大のサポーターグループ「ウルトラス・マラヤ」が観戦ボイコットを呼びかけたことで、大会2日前になっても1,000枚程度しかチケットが売れていないことが報じられました。国際試合の前にはFAMも公式SNSで売上枚数を明らかにしていましたが、今大会については全く音沙汰なしだったことで、事態の深刻さがより明らかになりました。(下は見事なくらい誰もいなかったマレーシア戦ハーフタイムのゴール裏)

収容人数85,000人のブキ・ジャリル国立競技場は、1階部分はそれなりに観客がいたもののおそらくは全体で15,000人前後、という印象でした。なおマレーシア代表はキム・パンゴン前監督が今年7月に突然辞任し(その後は韓国1部リーグ蔚山HDの監督に就任)、この試合はコーチから昇格したパウ・マルティ監督代行にとっての初めての試合でしたが、そんな時こそサポーターの声援が必要だと思うのですが、ウルトラスにはそうした発想はなかったようでした。

パレスチナのハマスを承認しているマレーシアでは、イスラエルに関連するとされるアメリカ系企業をボイコットする運動も起こり、結果として国内で100店以上のケンタッキーフライドチキンの店舗を閉店させたマレーシア人の行動は、それがそこで働く多くのマレーシア人従業員の職を奪うといった思慮がないまま行われたのと、現場の選手や監督、コーチにはなんら罪がない今回のボイコット騒動は似ていると感じました。

監督代行といえば、この試合でマレーシアが対戦したフィリピンもノーマン・フェジデロ監督代行が指揮を取っていました。フィリピンは今年2月に就任したばかりのベルギー出身のトム・セイントフィート監督がやはり先月8月末に辞任しています。ガンビアやトーゴ、さらにマルタなどで代表監督を務めた経験があるセントフィート氏は、契約条件の中に含まれていた「より大きなチームで監督機会があれば契約を解除できる」という条項を使って、アフリカのマリ代表監督に就任しています。

いずれも監督代行が指揮を取るチーム同士のこの試合の先発XIは以下の通りです。

マレーシアの先発XIは、現在国内リーグ1位のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)から6名の他は、サバFCから1名、トレンガヌFCから1名、ペナンFCから1名、KLシティFCから1名、そしてタイ1部のブリーラム・ユナイテッドから1名となっています。ただし、サバのダニエル・ティン、トレンガヌのアキヤ・ラシドと、ペナンのシャマー・クティはいずれも今季はJDTからローンされている選手なので、実質はJDTからは9名が先発メンバーに名を連ねていることになります。

一方、フィリピンの先発XIには、神奈川県の桐光学園出身で、ガンバ大阪U23を経てJ2の水戸から今季はタイ1部で3連覇中のブリーラム・ユナイテッドに移籍したDFタビナス・ジェファーソンの名前があります。ちなみにマレーシア代表のキャプテン、ディオン・コールズも同じブリーラム・ユナイテッドの選手なので、同チーム対決となります。またこの先発XIにはKLシティFCでプレーするFWパトリック・ライヒェルト、ペラFCでプレーするDFイエスペル・ニホルムの名前も見える他、先発XIではDFアマニ・アギナルド、MFジャスティン・バース、控えではGKケヴィン・メンドーザ、DFクリスチャン・ロンティーニにもマレーシアリーグでのプレー経験があります。

前置きが長くなりましたが、FIFAランキング134位のマレーシアと同147位のフィリピンとの対戦では、先制したのはフィリピンでした。開始からペースが上がらない試合は、27分にゴール前の混戦から左サイドに流れたボールをタビナス・ジェファーソンがシュートすると、そのボールがシュートコースに飛び込んだDFフェロズ・バハルディンに当たって角度が変わり、最初のシュートコースをカバーしていたGKシーハン・ハズミが反応できずそのままゴールイン。これがジェファーソン選手の代表戦16試合目にしての初ゴールとなり、フィリピンが1点をリードします。

この1点でマレーシアもギアを上げますが、フィリピンDF陣を破ることができず、このまま前半終了かと思われた43分にマレーシアは右コーナーキックを得ます。このキックをファーポストのマシュー・ディヴィーズが頭で落とし、それをフェロズ・バハルディンがペナルティーエリアの外へ流すと、それをシャマー・クティが豪快に蹴り込んで、マレーシアが同点に追いつきます。

後半に入ると両チームともやや引き気味な布陣となる中、73分にフィリピンDFマシュー・ボルディシモがアリフ・アイマンをペナルティーエリア内で倒してしまいます。この日はいくつもの疑惑の判定があり、マレーシアに「親切」だったインドネシアのユディ・ヌルチャヤ主審は迷わずPKと判定します。。これを途中出場のサファウィ・ラシドが落ち着いて決めます。そこからはフィリピンが攻勢に転じ、マレーシアは自陣に釘付けとなりますが、結局、サファウィ選手のゴールがが決勝点となり、マレーシアが逆転でフィリピンに勝利し、前回大会に続き決勝進出を決めています。

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この試合はスタジアムで観戦しました。いつもの試合であれば、試合後にはゴール裏へ向かってウルトラスからのエールを受ける流れですが、この日は観戦ボイコットでウルトラス不在ということもあり、選手が思い思いにスタンドに手を振ったり、出場がなかった選手がスプリントを繰り返してひと汗かくなど、いつもとは違う試合後の雰囲気でした。また試合中もメディアが煽り立てるほど静かというわけではなく、自然発生的な形で応援が起こり、統制されてはいないもののあちこちから声がかかり、スタンド全体はマレーシアを応援している雰囲気を感じました。

ウルトラスの声援は確かに代表チームを後押しする力になるでしょうが、それがな勝ったから勝てなかったと言われないよう、この日の試合はチームの全員が意地を見せ多様に私の目には映りました。そして試合後は、勝利に終わったことで安堵しているような和やかな空気も感じました。今日のフィリピンはそれでもなんとか勝利しましたが、日曜日の決勝レバノン戦では、ウルトラスの皆さんには不満もプライドも全て一旦収めていただき、まずはゴール裏へ足を運んで、2013年以来11年ぶりの優勝を目指す「マラヤの虎」に向かって全力で声援して欲しいです。

第43回ムルデカ大会
2024年9月4日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
マレーシア 2-1 フィリピン
⚽️マレーシア:シャマー・クティ(43分)、サファウィ・ラシド(73分PK)
⚽️フィリピン:タビナス・ジェファーソン(27分)
🟨マレーシア(0)、🟨フィリピン(4)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

ムルデカ大会:レバノンが前回優勝のタジキスタンに勝利し、マレーシアと決勝で対戦

同じ9月4日の第1試合は、FIFAランキング116位のレバノンが、同103位のタジキスタン相手に1−0で逃げ切り、9月9日の決勝進出を決めています。昨年のこの大会では決勝でマレーシアを2−0で破り優勝していたタジキスタンは、連覇の機会を逃しています。また、この両チームは今年1月AFCアジアカップのグループステージでは同じA組で、最終戦では勝った方がノックアウトステージ進出が決まるという中、タジキスタンが2−1でレバノンを破っており、この日の勝利は試合後にレバノンのミオドラグ・ラドゥロヴィッチ監督が口にしたように「リベンジ達成」といった意味合いもあったようです。

水曜日の午後4時30分キックオフということもあり、スタンドは明らかにガラガラで、公式発表では観衆が460名となっており、国際Aマッチとしては寂しいものでした。また心配された雨は降らなかったものの、その代わりの暑さに加え、ほとんど風が吹かないスタジアムで、私自身は汗びっしょりになりながら観戦しました。

試合はレバノンの組織だった守備の強さが目立ちました。前半はタジキスタンが両ウイングを使ってボールを進めようとするも、レバノンの両サイドバックがすぐに寄り付いて、前へのボールを出させません。中央に待ち構えるセンターバックとともに、タジキスタンにシュートの機会すら与えませんでした。

試合は13分にコーナーキックからジハド・アヨウブがヘディングシュートを決めてレバノンが先制すると、残る時間帯はその堅固な守備でタジキスタンFW陣にほぼチャンスを与えず完封勝利を収めています。

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決勝でレバノンと対戦するマレーシアは、その守備力に苦しまされそうです。そうでなくとも、今季ここまでマレーシアは10試合(3勝3分4敗)で得点16失点18と、1試合あたり得失点ともに2点を下回っています。となれば、先行逃げ切りの試合展開を目指し、硬い守備のレバノン相手にはコーナーキック、或いはフリーキックでゴールを挙げられるかどうかが勝敗を握る鍵になりそうです。

第43回ムルデカ大会
2024年9月4日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
レバノン 1-0 タジキスタン
⚽️レバノン:ジハド・アヨウブ(13分)
🟨レバノン(4)、🟨タジキスタン(2)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。
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