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7月25日のニュース
・AFCがクラブライセンス不正交付の疑いでサッカー協会とリーグを調査

・サッカー協会は各クラブに義務付けた育成チーム保持規定を緩和か
・前タジキスタン代表監督が空席のマレーシア代表監督に関心
・トレンガヌはケガの治療が長引く昨季のチーム得点王マムートを放出も

AFCがクラブライセンス不正交付の疑いでサッカー協会とリーグを調査

アジアサッカー連盟(AFC)はクラブライセンス交付に関する規定違反の疑いでマレーシアサッカー協会(FAM)と、国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)の調査を開始したと、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

AFCは先週、多発する未払い給料問題を理由にFAMとMFLが国内クラブライセンスを交付する資格を失う可能性があると発表していました。

このブログでも頻繁に取り上げているKLシティFCの給料未払い問題についても、給料未払いに加え、2023年2月からマレーシアの年金制度に該当する従業員積立基金(EPF)を滞納しているにもかかわらず、今季のスーパーリーグに参加するために必要な国内クラブライセンスが交付されていることが問題視されています。なお、FAMから委託を受けているMFLの第一審期間(FIB)は、今季開幕前にはEPFの滞納を理由にプルリス・ユナイテッドFCやクランタンFCへクラブライセンス不交付の決定を下した前例があります。

AFCがクラブライセンス交付に関する規定違反があると判断した場合、FAMとMFLは国内クラブライセンスを交付する権限を失うだけでなく、マレーシアリーグのクラブはACLエリートやACL2などAFC主催の大会への出場資格を失う可能性もあります。

AFCのウインザー・ジョン事務局長は、その条件を満たしていないにもかかわらずマレーシアリーグの複数のクラブがクラブライセンスを交付されているという疑いから、AFCのクラブライセンス部門が調査を開始したと話しています。

「AFCのクラブライセンス部門による調査は、FAM、MFLによるクラブライセンス交付の手順を慎重に捜査し、監視することから始まる。そして十分な情報が集まった後で、理事会が最終的な判断を下す。最も厳しい処分は、FAMとMFLからのクラブライセンス交付権限剥奪となる。」

2022年にはAFCのクラブライセンス部門がイランサッカー協会(イランFA)に対して処分を科し、AFCが納得するようなクラブライセンス交付の仕組みをイランFAが構築するまでこの処分は解除されませんでした。この結果、2020年シーズンのACL覇者ペルセポリス、過去2度のアジアタイトルを獲得しているエステグラールFC、そしてゴル・ゴハール・シールジャーンFCの3チームは2022年ACLへの出場資格を失っています。

またFAMのユソフ・マハディ副会長は、「我々のリーグがスムーズに運営できるようになるためにも、AFCによる調査を歓迎する。もし我々のリーグに欠点や弱点がある場合には、それを修正する必要があるため、FAMは喜んで調査を受ける」とFAMとMFLはAFCの調査に全面的に協力すると述べています。

サッカー協会は各クラブに義務付けた育成チーム保持規定を緩和か

給料未払い問題がトップチームだけでなく、U21やU19などの下部組織まで広がっている事態を重くみたマレーシアサッカー協会は、マレーシアスーパーリーグに参加する全てクラブに保有を義務付けているU21やU19チームについて、各州サッカー協会に運営させる方針の検討に入ったと、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

かつてU21チームのリーグ戦であるプレジデントカップやU19チームのリーグ戦ユースカップに出場するチームは、国内リーグに参加するトップチームと同様に各州のサッカー協会が運営していましたが、しかしFIFAの指導により、FAMとリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)が国内クラブの民営化方針を2018年に打ち出しました。この民営化では国内1部リーグの全クラブは、州サッカー協会が直接、運営する方式から、クラブ運営会社を設立して行う方式へと移行することが求められ、同時に各クラブにU23、U21、U19の各年代チームの保持が義務付けられたことから、その運営も州サッカー協会から各クラブへ移っていました。

それまでは州政府から州サッカー協会に運営資金が提供されていましたが、運営元がクラブ運営会社となったことから、州政府からの資金提供が途絶えただけでなく、新たに保持することになった下部組織の運営費用も膨らみました。また民営化直後に新型コロナ禍となり、多くの州政府がコロナ対策で臨時の出費が必要となったこともあり、サッカークラブ運営資金もコロナ対策に流用されるなどの事態も起こりました。さらにこの間はリーグ戦は開催されたもののほぼ1シーズンを通して無観客試合で行われたことにより入場料収入も得られず、マレーシアではこの時期から多くのクラブで給料未払い問題が表面化するようになっていました。

FAMのユソフ・マハディ副会長は、複数のクラブで下部組織のチームでも給料未払い問題が起こっていることは承知していると話し、問題解決のために複数の案を検討中だとしています。そしてその検討中の案の一つが、U21チームとU19チームを各州サッカー協会の運営に戻すことだとしています。

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クラブ民営化を進める際にFAMは、草の根レベルでの育成や州内のコミュニティーリーグなどサッカー人気を維持するための役割は各州サッカー協会が担い、プロクラブは民営化し、プロ選手を育成する下部組織も運営するという棲み分けをしたはずでしたが、今回明らかになったのは、給料未払い問題の根本原因究明に取り組むのではなく、とりあえず各クラブの経済的負担を軽減する(そして州サッカー協会の負担を増やす)というなんとも近視眼的な対応です。前述のクラブライセンス交付の規定違反も含め、国のサッカーのトップであるFAMへの信用はかなり揺らいでいるいるように感じます。

前タジキスタン代表監督のペタル・セグルトが空席のマレーシア代表監督に関心

7月16日にキム・パンゴン前監督が突如辞任を表明したマレーシア代表は、当面はコーチのポー・マルティ・ヴィンセント監督代行が指揮を取ることが決まっていますが、新たな監督の座に前タジキスタン代表監督のペタル・セグルト氏が関心を示していると、サッカー専門サイトのマカンボラが伝えています。

代表チームの今後の予定は、9月に予定されているムルデカ大会、そして11月に開幕する東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権と続いており、ムルデカ大会はヴィンセント監督が代表の指揮を取ることは決まっています。

クロアチア出身のセグルト氏は57歳で、2022年3月から今年1月のアジアカップまでタジキスタン代表監督を務め、タジキスタン代表をアジアカップ初出場に導くと、そのままベスト8に進出させています。またこの結果により、タジキスタン代表はFIFAランキング99位と最高位を記録しています。

キム氏辞任のニュースは驚きだったと話したセグルト氏は、キム前代表監督とはピッチ内外で話をするような関係だったと述べ、FIFAランキングを154位から130位まで引き上げるなどキム前監督のマレーシア代表監督としての実績を高く評価しているとも述べています。さらにマレーシアのファンはとても友好的な印象があると述べ、機会があれば代表監督をしてみたいと話しています。

タジキスタン代表監督を契約満了で退任したセグルト氏は、ヨーロッパの複数のクラブから監督就任オファーを受けているが、自身の希望は代表チームの監督だとして、クラブ監督のオファーは受ける予定はないとも話しています。

マレーシアサッカー協会(FAM)からは連絡はないと話すセグルト氏は、FAMは自分の連絡先を意知っているはずだとして、もしオファーを受ければ積極的に検討したいとも述べています。

セグルト氏はタジキスタン代表の他、モルディブ代表でも監督を務めて経験があり、クラブレベルではPSMマカッサル(インドネシア)、SVリート、ヴィナーSC(いずれもオーストリア)などで監督経験があります。

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なお、セグルト氏はタジキスタン代表監督として、キム前代表監督率いるマレーシアと2度対戦し、いずれも勝利しています。1度目は2022年にタイで開催されたキングズカップで、このときはホストのタイをPK戦で破ったマレーシアと、トリニダード・トバゴを破ったタジキスタンが決勝で対戦し、レギュレーションタイムを0-0で終え、最後はPK戦3-0でタジキスタンが勝利しています。2度目は2023年のムルデカ大会で、再び決勝で相見えた両チームでしたが、この試合でもタジキスタンがホストのマレーシアを2-0で破り優勝しています。

トレンガヌはケガの治療が長引く昨季のチーム得点王マムートを放出

トレンガヌFCに在籍するクロアチア出身のFWイヴァン・マムートは、昨季はリーグ戦とカップ戦合わせてチームトップの17ゴールを挙げる活躍を見せましたが、今季はプレシーズンマッチで左アキレス腱を痛めると、治療のため母国に帰国していました。開幕から欠場が続いていたマムート選手がチームに再合流したのは先月6月3日でしたが、マレーシアへ戻って以降も試合出場がありません。

この状況についてトレンガヌFCのトミスラフ・シュタインブリュックナー監督は、これ以上マムート選手の回復を待てないとして、来月8月に開くトランスファーウィンドウで新たなFWの獲得に動く可能性があると、マレーシアの通信社ブルナマの取材に答えています。

「イヴァンは軽いトレーニングを始めてはいるが、まだ痛みがあるようで、トレーニングの強度を上げることに躊躇している。いつになったらプレーできるのかがわからない現状では、来月開くトランスファーウィンドウ期間中にセンターフォワードなど前線の選手を探さなければならないだろう。」と話したシュタインブリュックナー監督は、リーグ戦や国内カップ戦に加えて、東南アジアクラブ選手権「ショッピーカップ」にも出場することから、マムート選手に代わる新戦力獲得について既に経営陣とも話し合いを行ったことも明らかにしています。

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