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スランゴール州政府が新スタジアム建設を発表もJDTオーナーはその建設費見積に疑問

マレーシアスーパーリーグのスランゴールFCは、リーグ優勝7回、マレーシアカップ優勝33回を誇る国内トップクラブの1つですが、近年はジョホール・ダルル・タジム(JDT)の後塵を拝しており、2010年を最後にリーグ優勝から遠ざかっています。そのスランゴールFCが本拠地にしていたのが、スランゴール州シャー・アラムにあるシャー・アラムスタジアムでした。

1994年開場のこのスタジアムは8万人を超える観客が収容可能なスタジアムですが、老朽化が激しくなり、安全上などの問題から、国内リーグとカップ戦を運営するマレーシアンフットボール(MFL)は2020年3月にこのシャー・アラムスタジアムのリーグ戦での使用を禁止しています。このため、スランゴールFCは過去3シーズンはMBPJスタジアムに本拠地を移していました。

改修を行っても2億5000万マレーシアリンギ(およそ75億円)がかかるとされる現在のシャー・アラムスタジアムは既に解体が決まっていましたが、所有者のスランゴール州政府は、解体後の跡地の開発計画となる「シャー・アラム・スポーツコンプレックスプロジェクト」(KSSAプロジェクト)とその中核となる「新」シャー・アラムスタジアムの計画案を発表しています。(以下は新シャー・アラムスタジアムのイメージ映像。映像はスランゴール州政府系企業MBIスランゴール社の公式ツイッターより)

全体で東京ドームおよそ16個分に相当する188エーカー(およそ76ヘクタール)となるKSSAプロジェクトの内、新シャー・アラムスタジアムはその60%を占め、残る40%は公園や商業施設となる予定です。収容観客数が3万5000人から4万5000人とされる新シャー・アラムスタジアムは、バイエルン・ミュンヘンの本拠地、アリアンツアレーナでも使用されている、可視光透過率が高く屋内でも屋外のような明るさが出せる高機能フッ素樹脂ETFEフィルムを使用した屋根や、スタジアム内の湿度管理機能、さらに座席の下を涼しい空気が循環して客席の温度を一定に保つ機能の他、日本の札幌ドームのように引き込み式の天然芝ピッチ機能もあり、サッカー以外のイベントの際にはピッチを収納できるようになっています。

この計画が発表されると、直ぐさまに反応したのがジョホール・ダルル・タジム(JDT)のオーナー、トゥンク・イスマイル殿下でした。このKSSAプロジェクト全体の予想費用は、周辺の環境整備なども含めておよそ7億9000万マレーシアリンギ(およそ240億円)となることが発表されていますが、イスマイル殿下はJDTの本拠地であるスルタン・イブラヒムスタジアムの建設費用が4億マレーシアリンギ(およそ120億円)であったことを明らかにした上で、スルタン・イブラヒムスタジアムよりも広大で、高機能を備えた新シャー・アラムスタジアムを含めたKSSAプロジェクトの費用は20億マレーシアリンギ(およそ607億円)は降らないだろうというコメントを自身のインスタグラムに投稿しています。

隣国シンガポールでは2014年に同様の施設であるシンガポール・スポーツ・ハブが開場しており、敷地面積では35ヘクタールとKSSAプロジェクトの半分以下ながら、その建設費用は43億マレーシアリンギ(およそ1300億円)がかかっていることから、スランゴール州政府による建設費用の試算には、スランゴールFCサポーターだけでなく、スランゴール州住民から疑問の声も上がっています。

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