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汚職防止委員会がクアラルンプールFAを強制捜索

マレーシア語紙のブリタハリアンは、マレーシア政府機関の汚職防止委員会がクアラルンプールサッカー協会KLFAと、KLFAが運営するMリーグ1部スーパーリーグのKLシティの事務所に対して強制捜索を行ったと報じています。

この記事の中では、KLFAの理事らに対する職権濫用と背任の容疑による捜索だということで、KLFAの収支が合致しないことに加えて、アカデミーの建つ土地を企業に貸し出す際に正式な手続きを踏んでいないなど手続きに不透明な点があることを指摘されています。

さらに「今回の件には数百万リンギ(1リンギはおよそ30円)が関わっており、汚職防止委員会による強制捜索の結果、KLFAの不正行為が明らかになれば、マレーシアサッカー界における最大のスキャンダルとも言えるだろう。KLFAの一部理事がこの件について理事会での説明を求めたものの、理事会トップからは納得のいく説明が未だに得られていない。」と説明する関係者の話も紹介しています。

ことの発端はKLFAがスエード不動産社と所有するアカデミーの土地の貸与契約を結び、その見返りに数百万リンギがKLFAに支払われましたが、今季開幕前にKLシティで給料未払い問題が発覚すると、KLFAの理事会トップらが正式な手続きを踏まずにスエード不動産社との契約を破棄し、今度はシンマ不動産社と新たに貸与契約を結び、その見返りに300万リンギが支払われたというものです。

ブリタハリアンの取材に対して、KLFAのノクマン・ムスタファ事務局長は汚職防止委員会の捜索を受けたことを認め、捜索への全面協力を約束しています。また、KLFAのカリド・アブドル・サマド会長は、汚職防止委員会への告発は悪意を持って行われ、KLFAとKLシティの名を貶める意図を持った悪意のある告発だと述べています。

「KLFAと(KLFAが運営する)KLシティは、その予算が限られる中、昨季は32年ぶりにマレーシアカップに優勝し、今季はAFCカップの東南アジア地区予選を突破した。チームスポンサーのKL市役所からは250万リンギ、その他のスポンサーからの資金を合わせても500万リンギしか得られない中で、KLシティのチーム運営に必要な1200万リンギをどのように捻出したのかが問題にされるべきである。資金捻出に関わっていない人間がこの成功に腹を立て、嫉妬し、妬んだ結果が今回の悪意の告発につながっている。KLFAとKLシティの事務所を訪れた不正防止委員会の職員も、告発を受けたので捜索を行わねばならないこと、そして必要な書類を押収することを我々に説明するなど、メディアが報じているような「構成捜索」といった類のものではない。一部ではKLFAは4000万リンギを受け取りながら1200万リンギしか使っておらず、残りの2800万リンギの使途が不明という報道も出ているが、それ事実無根である。不正防止委員会への告発に関わった者、そしてそれに関する報道が出るように仕向けた者は、KLFAの潜在的なスポンサーを不安にさせて、資金繰りを苦しくさせようという、悪意のある行為である。」とカリド会長は説明しています。

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報道だけを見ると分かりにくいですが、実はサッカーと政治が密接に関係しているマレーシア特有の政治的な背景も絡んでいる問題です。KLFAのカリド会長は、前回の2018年の総選挙でマレーシア史上初となる政権交代が実現し、その際の与党連合を構成していた政党に所属している政治家でもあり、クアラルンプールを含めた連邦直轄地担当大臣を務めていました。慣例では連邦直轄地担当大臣がKLFA会長を兼任することから、カリド氏が会長に就任しました。
しかし、2020年にはこの与党連合が下院議会で過半数以上の支持を得られらなくなったことで、選挙を経ずしての政権交代となり、野党議員となったカリド氏は連邦直轄地担当大臣を失職したものの、慣例に従わずにKLFAの会長には留まりました。そしてカリド会長在職中に、それまでは目立った成績を残していなかったKLシティが32年ぶりにマレーシアカップ優勝、そしてクラブ史上初となるAFCカップ東南アジア地区予選優勝と次々と成功を収めたことで、それを快く思わない政敵からの狙い撃ちをカリド氏が受けた可能性が大いにあります。

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